その他

2014.06.30

成人アトピー性皮膚炎  上出良一先生

2014年6月29日 東京慈恵会医科大学 中央講堂
演題「産業医に必要な皮膚科疾患の基礎知識-成人アトピー性皮膚炎-」
演者:皮膚のクリニック人形町 上出良一先生
内容及び補足「
日本皮膚科学会は「アトピー性皮膚炎の定義、診断基準」で、アトピー性皮膚炎とは、『増悪、寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ』としている。
アトピー素因とは:
(1)家族歴、既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちのいずれか、あるいは複数の疾患)、
(2)IgE抗体を産生し易い素因
のことである。

アトピー性皮膚炎の年齢別受診患者数は、先進国が多いといわれていて、その中でもスウェーデンが18%と最も多く、次いで日本が多いといわれている。

日本においては、乳児期に多く、1歳半で一度低下し、再度上昇し、学生時代に徐々に低下して行く傾向にある。

就職する時期にまた上昇し、以前のように小児期のみの疾患ではなく、大人にも見られる疾患ということもできる状況になっている。

一人の人の経過を見てみると、受験時や就職する際に悪化していることがわかる。精神的なストレスが、病状の悪化にかなり寄与していることがわかる。

アトピー性皮膚炎の皮膚病変は、
ジュクジュクしている急性湿疹
カサカサしているドライスキン
ゴワゴワしている苔癬化、慢性湿疹
ブツブツ状態の痒疹
などいろいろな皮膚の状態を取る。


アトピー性皮膚炎の治療を困難にしているのは、インターネットなどから氾濫する不確かな情報に患者さん自身が惑わされているからである。
病態を理解し、必要な治療をしっかり受けていただくことが、より良い皮膚の状況を保つために必要である。
2006年にSmithらにより、フィラグリンをコードする遺伝子(FLG)の変異が尋常性魚鱗癬の原因であることが明らかにされているが、この尋常性魚鱗癬とアトピー性皮膚炎の合併が多いことはよく知られていたが、FLG遺伝子の異常が検討され、アイルランド人のアトピー性皮膚炎患者の56%にFLG変異が認められ、2009年のメタアナリシスによると、ヨーロッパ人の健常者では7.5%にFLG変異が認められるのに対し、アトピー性皮膚炎患者では21.6%と高率であった。
日本人においてはヨーロッパ人において認められない、日本人特異的な2つのFLG変異が見いだされ、8つの変異が同定された。日本人のアトピー性皮膚炎の27%にFLG変異が認められている。

通常の皮膚においては、角層が外界に対するバリア機能の9割を担っている。この角層がバリアとして機能するためには、
①角質細胞の細胞質がフィラグリンやケラチン、およびそれらの分解産物などにより満たされていること、
②角質細胞のセルエンベロープと呼ばれる細胞膜が丈夫であること、
③角層の細胞間隙が脂質により十分に埋められていること、
が必要である。この三条件が満たされていることにより、内側からの水分蒸発が阻止され、外側からのダニやアレルギー源などの侵入を防いでいる。
フィラグリンは角質細胞の細胞質内を満たす主要な蛋白であり、角層においては、フラグリン分解産物が保湿因子としても働くことから、フィラグリンはバリア機能の形成や水分保持に重要な役割を果たしている。

FLG変異がありフィラグリンが形成されないと、角層バリア機能不全が生じる。通常では侵入してこないアレルゲンが、容易に角層に入り込み,抗原提示細胞により貪食され、提示された抗原により感作が成立し、アトピー性皮膚炎へと進展していく。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3266780/
従って、アトピー性皮膚炎の治療は、皮膚のバリア機能を保つことが重要なこととなってくる。
小児期からの徹底したスキンケア
適正な外用療法の徹底指導・普及(ステロイド外用療法に対する誤った認識の是正)
皮膚病変が嗜癖的掻破により慢性化した成人患者には、心身医学的な介入も行う
触診と数値による病勢判断(腰背部の皮膚の触診が病勢を良く反映している。Thymus and Activation-regulated chemokine:TARCの変動が病勢に応じて変化する)
巷にあふれている脱ステロイド伝説やアトピービジネスを無視してもらう
患者会、教育入院、セミナー、カフェなどを利用し、多彩な手段による対面でのリテラシー向上を図る
マスコミ、インターネットでの適正な情報発信
患者の自己管理
が大事である。
特に外用指導:塗る技法がきちんと指導されていないことが今までの、ステロイド治療の問題点の一つを形成していたと考えられる。
何を:ステロイド、タクロリムス、保湿剤
どれだけ:全身は1.6m2、ステロイドは20g必要。朝夕2回塗るには、20g×2回×7日=280g/週必要となる。
塗る量の目安1FTU:finger tip unit≒0.5g≒手のひら2枚分

何時:朝夕2回⇒1週間ほどでよくなれば夕のみ⇒1日おきの夕のみ
どのように:手のひらに広げ、なじませるように(決して摺り込まない:皮膚にダメージを与えることになる)
いつまで:しっとりとした皮膚になるまで続ける

アトピー性皮膚炎の悪化サイクル
バリア機構の破壊があり、刺激物が侵入し、かゆみが生じ、掻くことにより炎症が生じ、よりかゆみが持続し、掻くことによりストレス解消と認識するようになってしまい、嗜癖的掻破が行われることになる。

痒みとは、『掻きたい衝動を引き起こす不快な感覚』と定義されており、生物学的意義としては、病原体、昆虫、植物などの外部からの有害物質に対する生体防御シグナルであると考えられている。痒み誘発物質として有名なヒスタミンの拮抗薬(H1R拮抗薬)、抗ヒスタミンは、アトピー性皮膚炎においては効果が弱く、ヒスタミンの関与は低いと考えらえている。

痒みは、その伝達経路から、末梢性の痒みと中枢性の痒みに分類される。
末梢性の痒みは、表皮真皮境界部に分布するC線維神経終末が機械的、科学的、物理的刺激など外部から刺激を受けて興奮したシグナルを、脊髄、脊髄視床路、視床を経由して大脳皮質感覚野に投射され認識される。
一方中枢性の痒みは、オピオイドペプチドが中枢神経系に存在するオピオイドレセプターに結合することによって制御されている。

アトピー性皮膚炎患者では、通常では痒みを感じないような衣服が皮膚に軽く刷れる程度の些細な機械的刺激によっても痒みが生じる痒みの過敏状態(アロネーシス)や、本来痛みを生じて痒みを制御するような刺激も痒みとして感じる(ハイパーネーシス)が認められる。
健常人においては痒みに対して行う掻破行動は、初め気持ちよく感じるものの、ある時点からは痛みを生じるため、掻破を中止するが、アトピー性皮膚炎患者では、痒みの変調があるため、痒みが増強し、さらなる掻破行動が誘発されることになる。そのため、痒み⇒掻破⇒二次的皮膚病変と悪循環が形成され難治化することになる。
その原因には、
① 表皮内への神経線維の侵入、 

② ヒスタミンH4受容体の関与
③ ヒスタミン以外のケミカルメディエータ―の関与(サブスタンスP、カルシトニン遺伝子関連ペプチドが遊離され神経原生炎症が惹起され、血管透過性の亢進、血管拡張、肥満細胞やケラチノサイトの活性化による炎症の増幅)
④ オピオイドペプチド―オピオイドレセプター系の関与
が考えられている。

http://www.microscopy.or.jp/magazine/46_4/pdf/46-4-233.pdf
参:
アトピー性皮膚炎は二つのタイプがあるといわれており、外因性アトピー性皮膚炎(アレルギー性アトピー性皮膚炎)と内因性アトピー性皮膚炎(非アレルギー性アトピー性皮膚炎)に分けることができる。免疫学的には内因性アトピー性皮膚炎患者ではINF-γ陽性のTh2細胞誘因性ケモカインであるCCL17/TARC濃度が低い。

皮膚の重症度

外用薬の強度別一覧

http://www.allergy.go.jp/Allergy/guideline/03/index.html#06
http://www.dermatol.or.jp/upfile/1372913553_1.pdf
http://www.nihonatopy.join-us.jp/index.html
http://atopinavi.jp/

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