脳神経系

2014.02.13

老年医学からみた認知症の課題と展望 羽生春夫教授

2014年2月6日 ロイヤルパークホテル
演題「老年医学からみた認知症の課題と展望」
演者:東京医科大学高齢総合医学講座主任教授 羽生春夫先生
内容と補足「女性及び男性の平均寿命は、それぞれ、86.39歳と79.64歳だが、健康に過ごせている年齢である健康寿命はそれぞれ、73.62歳と70.42歳であり、その差は約13年と10年もある。最後の10年の短縮が今後の課題である。
健康寿命を損なう原因として①脳血管障害、②認知症、③骨折・関節疾患があげられる。
2012年において462万人が認知症であり、その7割近くがアルツハイマー病である(MRI検査などで診断)。報告によっても異なるが、大体その1/3ぐらいが脳血管障害背認知症との合併である。
認知症の病態は、現在アミロイド・カスケード仮説で説明されている。
アミロイド前駆タンパクからβアミロイドが作られ、その蓄積から老人斑ができ、この蓄積されたβアミロイドが神経障害を起こし、神経原線維性変化をお越し神経細胞死にいたるというアミロイド・カスケード仮説が唱えられている。
また、二次的に蓄積したタウタンパクが、βアミロイドが活性化したGSK-3βによってリン酸化をうけ、微小管結合能が喪失し、その結果微小管の崩壊、神経細胞死が起こるし、高度にリン酸化された多雨タンパク質が重合すると神経細胞内でpaired helical filaments(PHF)を形成し、その蓄積が神経原線維変化を生じることもわかってきた。

アルツハイマー病の障害部位は、海馬→側頭頭頂葉→前頭葉の順で進んでいき、末期に至るものが主流である。

MRなどの画像検査にて、各部分の脳体積変化を見てみると、controlに比べアルツハイマー病の人では、全体の脳体積は18%減少しているが、海馬の体積は45%も減少している。

参:
MR画像により、アルツハイマー病診断の支援ソフトが開発されてきている。評価の方法としてVSRAD、とZ-scoreがある。
VSRADとはVoxel-Based Specific RegionalAnalysis System for Alzheimer’s Diseaseの略で全茎を含む早期アルツハイマー型認知症診断支援ソフトで、海馬傍回の体積萎縮度を正常能と比較し数値で評価するもので、2.0を超えると90%以上の確率でAD(Alzheimer’s Disease)が疑われることになる。
Z-scoreは脳の画像統計解析ソフトを使って、被験者の脳画像と標準脳の画像を比較しボクセル単位でt検定を行い、得られたt地を標準正規分布に従うZ値に変換後、三次元能増の投影図として表示する。この操作は脳の委縮の影響を受けにくくする操作である。この方法を利用して、各患者の脳血流データを正常者のデータベースと各ピクセル(部位)において比較し、以下の計算式で求めたものである。
Z-score=(正常群平均ピルクセル値-症例ピクセル値)/(正常群標準偏差)
と成書を拾い読みして文章にすると上記のようになり、訳が分からなくなるので、コンピュータが打ち出した解析レポートの一番上の欄を見て、そういうものだと思いましょう。

ADを三種類のサブタイプに分け、生前のMRIを比較検討した報告がある。
典型例:71%、平研年齢73歳、記憶障害78%
海馬温存型:11%、平均年齢63歳、記憶障害42%、進行が速い
辺縁系優位型:19%、平均年齢79歳、記憶障害94%
とそれぞれにおいて臨床的な違いがあることがわかってきた。

認知症のあるなしで体重の変化を見た研究がある。認知症がない人たちでは、年に0.22㎏(図-0.48)、0.29㎏(図-0.65)減少した。認知症患者においては、診断前は年に0.31㎏(図-0.68)の減少であったものが、診断後には、0.53㎏(図-1.17)、0.61㎏(図-1.34)とより顕著になっていた。カロリー摂取の減少も関与しているが、筋肉量減少の関与(Sarcopenia)も存在している。
 
認知症の重症度を評価する方法としてFAST( Functional Assessment Staging)がある。程度は1~7段階に分かれており、Stage4からは日常生活に支障をきたしてくるが、それと並行して、転倒・骨折、肺炎の危険度が上昇してくるし、これらのイベントが起こった際には、認知障害もさらに悪化してくる。このことは、一般的な高齢者でも同じであり、認知症患者を診るというよりは、認知障害を持つ高齢者を見るという視点が大事である。

そればかりでなく、認知症が進行してくると死亡危険度も上昇してくる。
Spainで1994年から13年間の観察研究では、死亡の相対危険度は軽度の認知症で2.23、中等度で3.10、高度で4.98と上昇してくる。

糖尿病や高血圧といったリスクの集積によってもアルツハイマー病の危険度は上昇してくる。

脳血管障害(CVD)を伴う認知症は、従来血管性認知症(VaD)として対応されてきていたが、近年ADとCVD両者においても高血圧が増悪因子・危険因子であることが認識され、病態的にも多くの症例にADとCVDの病理所見が混在することが確認され、『AD with CVD』という概念が広く受け入れられるようになってきた。

高血圧のタイプによっても認知機能低下の発症頻度が異なることがわかってきた。
夜間血圧が低下するdipper型<夜間血圧が低下しないnon-dipper型<覚醒前に血圧が過剰に上昇するriser型の順で発症頻度は上昇してくる。

高血圧の管理がなされると、認知症の予防につながるという報告もあり、薬剤間の違いも報告されるようになってきた。

生活習慣病とADの関係は血管内皮機能との関係を含めかなり注目されており、内皮機能の改善を介して、認知症発症抑制が期待されている。

脂質代謝においては、臨床研究結果がさまざまであり、まだ確定的な見方はされていないが、コレステロールと中性脂肪では異なる結果が想定される。


また、オメガ3系脂肪酸といわれるEPAやDHAの脳循環改善作用や神経保護作用、抗酸化作用、アミロイドβに対する作用が認知症発症予防に果たす役割が期待されている。

糖尿病と認知症の関係が近年注目されており、以下のように考えられている。

特に血糖値の管理の悪いHbA1cが7%以上の患者で認知症の発症頻度が上昇している。

近年HbA1cよりも、血糖値の日内変動のほうがより重要であることが示される報告が増えてきている。

厳格な血糖管理を目指すあまり低血糖発作をきたし、かえって悪化するという報告も増えている。

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