川村所長の勉強会参加記録
2015.02.02
血管の硬さを日常診療で調べる意義 齋木厚人 先生
2015年1月27日 TKP横浜駅西口カンファレンスセンター
演題「血管の硬さを日常診療で調べる意義 ~CAVIと他の血管機能検査の違いを含め~」
演者:東邦大学医療センター佐倉病院 糖尿病・内分泌・代謝センター講師 齋木厚人 先生
内容及び補足「
柔らかい血管:動脈波形はゆっくり伝わり、血管口径の変化が大きい
硬い血管:動脈波形は早く伝わり、血管口径の変化が小さい
動脈硬化度を検出する検査として
PWV(Pulse Wave Velocity)脈波伝播速度 血圧の補正無し:大動脈(血圧で変化)
PWV(Pulse Wave Velocity)脈波伝播速度 血圧の補正あり:大動脈(血圧で変化小)
baPWV(brachial-ankle PWV)頸動脈-大腿動脈間脈波伝播速度:主に下肢(血圧で変化)
Stiffness β:頸動脈(血圧での変化なし、局所的)
Augmentation Index:脈波増大係数(橈骨動脈で反射波の影響を測定)
などがある。
血圧の影響を受けない検査としてStiffness βがあるが、局所的であるので、長さのある血管にこの考え方を利用した測定方法がCAVI(Cardio Ankle Vascular Index)である。
理論上の計算式は以下のようになる。
Stifness β=InPs/Pd×D/⊿D
Ps:収縮期血圧、Pd:拡張期血圧、D:血管口径、⊿D:口径変位
Bramwell Hill’s equation:容積変化率V/⊿V=D/⊿Dを利用して、
PWV2=⊿P/2ρ×D/⊿D→ D/⊿D=2ρ/⊿P× PWV2
ρ:血液密度
これを上のStifnessβの式に代入すると
CAVI=InPs/Pd×2ρ/⊿P× PWV2
となる。
このCAVIの測定値は、日内変動がなく、食前後での変化がない。つまり、血圧や血糖値に伴う変化がない。
タバコで数値が上昇し、運動により低下することもわかっている。
血圧での変化はないが降圧薬の種類によって数値が異なることが示されている。
交感神経のα受容体を遮断して血管を広げるDoxazosinカンデサルタンで低下する。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jat/18/1/18_3582/_pdf
CAVIは男女差があり、年齢とともに徐々に上昇してくる。
CAVIと動脈硬化の各種因子との相関関係は
単相関においては収縮期血圧も有意であったが、多変量解析の結果は、年齢、FMD(flow mediated dilatation:血流依存性血管拡反応)と血清Thrombomodulin濃度であった。
FMDは上腕または前腕を5分間駆血し、駆血解除後の最大拡張期の血管径を安静時の血管径と比較して血管の拡張率を超音波で測定する方法
http://www.saraya-fmd.com/gozonji/
http://www.readcube.com/articles/10.1111%2Fj.1742-1241.2011.02741.x?r3_referer=wol&tracking_action=preview_click&show_checkout=1
薬剤のいくつかがCAVIの測定値に影響を与えることがわかっている。
αGI阻害薬、グリメピリド、ピオグリタゾン、インクレチン製剤(DPP-Ⅳ阻害薬は影響しない)、速効型インスリンから超速効型インスリンへの変更、超速効型インスリン混合製剤の注射回数の増加
などである。
CAVIを上昇させる因子としては、
年齢、男性、動脈硬化、動脈硬化危険因子の集積、喫煙、睡眠時無呼吸症候群、交感神経亢進、血管炎
があり、
低下させる要因としては、減量、禁煙、運動、血糖コントロール、血圧コントロール、脂質コントロール、CPAPによるSASの管理、交感神経の抑制
がある。
その他のCAVIと関連のある新しい知見を紹介する。
網膜の血管口径の変化を測定し、いくつかの動脈硬化危険因子との関係を見てみた。
口径変化の半分以上拡張している時間/一回周期時間をblowout time:BOTとなずけた。
このBOTは心エコー計測上のLVEFやCAVIとの相関があった。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jat/19/11/19_13631/_pdf
CAVIが心血管系因子の予測因子として役立つかどうかの研究があり、CAVIの値が低下した群では、改善しなかった群よりも心血管イベントが減少した。
http://www.nature.com/hr/journal/v37/n11/full/hr2014116a.html?WT.ec_id=HR-201411