消化器系

2015.05.25

ピロリ総除菌可能時代における胃がん検診 井上和彦先生

2015年5月23日 パシフィコ横浜会議センター
演題「ピロリ総除菌可能時代における胃がん検診と消化器診療」
演者:川崎医科大学総合診療科副部長 総合臨床医学准教授 井上和彦 先生
内容及び補足「
胃がん検診の評価は、1998年久道班の報告、2005年の祖父江班の報告があったが、昨年斎藤班の報告がなされ、内視鏡による有効性が認められた。

しかし、いくつかの問題点があり、今後の運用が問われるところである。
現在、内視鏡によって胃がん検診を行っている自治体で一番大きな問題点は、提唱している撮影箇所すべてを撮影・提出してもらうことを徹底することである。
平成24年1月28日の朝日新聞に掲載された死亡につながる危険因子で、喫煙死が年13万人と報告されたが、その中で7位にピロリ菌感染症が挙げられていた。

(健康日本21(第二次)8ページ Ikeda N, et al.: PLoS Med, 9: e1001160, 2012)
ピロリ菌の感染により生じる胃粘膜の変化と代表的な疾患としては、下記の図のようになる。

Uemuraらにより1526例の内視鏡が施行された日本人患者に対して、ピロリ菌が感染しているか、いないかの二群に分け、胃癌の発生率を追跡した研究がNew England Journal of Medicineに掲載された。ピロリ菌陰性群からは胃がんはみられず、陽性者から0.4%/年泥岩が発見された。

ピロリ菌陰性者からの胃がん発生について検討してみた。
1996年から2010年に経験した胃癌症例3161例を調べてみると21例のみがピロリ菌未感染者であり、胃がん患者の0.66%に過ぎないというデータであった。

種々の危険因子の検討の結果、胃癌リスク要因として、確実なものはピロリ菌感染と喫煙であり、ほぼ確実なものは食塩であり、ピロリ菌感染は、胃がん発症の必要条件といえる。

人間ドック内視鏡検査によって胃がんの発見率は0.3%で203例であった。
胃炎のClosed typeは17例で未分化型が12例と多く、Open typeは165例と頻度も多く、分化型が8割を占めていた。

参:胃炎の木村・竹本分類
胃体部小彎における萎縮境界が明瞭なものを閉鎖型(Closed type)、不明瞭なものを開放型(Open type)とし、境界の高さによって細分したものである。

C-0 ;萎縮なし
C-1‒;幽門(胃の出口)付近の萎縮、
C-2 ;C-1 から胃の小弯(胃の屋根側)を胃の筒と考えた時、下1/3 程度広がった萎縮‒
C-3 ;C-1 から胃の小弯(胃の屋根側)を胃の筒と考えた時、下2/3 程度広がった萎縮‒
O-1 ;萎縮が小弯(胃の屋根側)から胃壁に達したもの
O-2 ;萎縮が小弯(胃の屋根側)から胃襞に達し、さらに胃壁内で広がっているもの
O-3 ;萎縮が大弯(胃の床側)にまで到達したもの

http://ir.twmu.ac.jp/dspace/bitstream/10470/1752/1/4111000001.pdf

胃粘膜の萎縮度別に胃がん発見数を見てみると、胃炎の軽いC0・C1を基準に考えると、C2・C3は13.4倍、O1・O2は27.2倍、O3・Opでは60.6倍になる。

つまり、胃がん発生にピロリ菌感染は必要条件であり、進展した胃粘膜萎縮は高危険群ということになる。
ピロリ菌感染症の診断方法はいくつかあり、それぞれの特徴を理解して行う必要がある。

ピロリ菌感染がなく、あっても胃の粘膜萎縮が軽度であれば胃がんのリスクが低いので、それを内視鏡検査を行わずに、スクリーニングできる方法があると有用である。
胃の粘膜の萎縮が進行すると、胃底腺領域が減少し、ペプシンーゲン(PG)Ⅰの産生が低下し、PGⅠ/Ⅱの比が低下してくる。

PGⅠ<70ng/mLとPGⅠ/Ⅱ<3.0で胃粘膜萎縮を評価してみると、Sensitivity 79.2%、Specificity 90.2%となり、良好な指標といえる。

そこで血液検査による胃の’健康度’評価として、胃がんリスクABC分類を開始した。

ピロリ菌の感染の有無と胃粘膜萎縮により分類するのである。この分類により起こりやすい疾患群も推定できることになる。

このように分類した中で胃がんの検出率を見てみるとA群では0%、B群では0.21%、C群では1.87%と有意な差を認めた。

人間ドックの内視鏡所見とPGⅠ、PGⅡ、PGⅠ/Ⅱを見てみると、胃粘膜の炎症が強いとPGⅡの濃度が上昇していることがわかる。

PGⅡの分泌が胃炎の状態を反映していると考えられており、PGⅡ濃度を30ng/mlでB-1群とB-2群に分類して評価しなおしてみるとB-1群で2.23倍、B-2群で18.02倍とC群に匹敵する危険度であった。

したがって2015年度から真庭地域における胃がん検診フローチャートはB-1群とB-2群を分けたものとなった。

胃がん検診後の精査・治療が大切であり、自治体と医師会が協力し、落ちこぼれのない対応が必要である。しかも除菌成功例でも胃がんリスクは存在するため、除菌後も定期的な検査が必要である。

除菌の成否に影響を及ぼす因子として
① 服薬アドヒアランス
② 薬剤耐性
③ 充分な酸分泌抑制
④ その他:喫煙、LG21などのヘリコバクターピロリ活動性に抑制的に働くもの
がある。
2013年にHelicobactor Reserchに報告した際のデータでは、一時除菌成功率は70-80%、不成功者のうち、二次除菌成功率は90%程度であった。
特に、現在除菌に関して問題となっているのは、年々クラリスロマイシン耐性菌が増えてきていることであり、その結果除菌成功率が低下してきていることである。

3次除菌をクラビットで行った群では成功率は低かったが、現時点ではあまり使用されていないグレースビットを使用した群では有効率が高かった。

LG21乳酸菌にピロリ菌に対して、以下の効果があることが分かった。
① 一次除菌の前に継続接種することにより、成功率の10%程度の上乗せ効果が期待できる。
② LG21乳酸菌含有ヨーグルト単独接種で、ピロリ感染胃炎の症状の改善が期待される。

ピロリ菌除菌のメリットは胃粘膜の炎症の改善や萎縮の改善があり、消化性潰瘍の再発予防、開放型消化性潰瘍の治癒促進、胃マルトマリンパ腫の改善、≦形成性ポリープの縮小・消失、胃がん発生リスク低下(1/2~1/3に低下)の他にも、ITP、慢性じんましん、小児鉄欠乏性貧血の改善などが見込まれる。

胃がん患者で除菌による、がんの治療後に生じる2次がんの発現リスクが1/3に減少することが示されたことにより、早期がん治療で部分胃切除者や、内視鏡的治療を受けた症例においての、ピロリ菌除菌治療は必須となった。

除菌後の胃がん発見経過を見てみると、決してゼロにはなっておらず、胃粘膜の萎縮や炎症の程度によるが、年一回程度の内視鏡検査による経過観察は必須である。

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