その他
2020.10.19
COVID-19への対応と感染対策 萩原恵里先生
2020年10月1日
演題「COVID-19への対応と感染対策」
演者:神奈川県立呼吸器病センター呼吸器内科部長 萩原恵里先生
場所: ホテル プラム
内容及び補足「
2020年2月にクルーズ船の乗客を受け入れてから、新型コロナウイルス感染症患者の治療を行ってきた。
4月からは神奈川県が整備した緊急医療体制「神奈川モデル」の重点医療機関として、酸素投与などが必要な中等症と診断された患者を中心に入院の受け入れを行ってきた。
COVID-19治療において大切なことはゾーニングであり、当院では建物の構造上、新型コロナウイルス感染患者とそれ以外の人の動線を分けることが簡単にできた。
感染拡大予防対策で大事なことは、完全防護服の着脱特に脱ぎ方が大切である。
これらの感染予防対策を徹底したことにより、看護師二名の感染はあったが、院内クラスターの発生は予防できた。
参:
病原体:これまでに人に感染するコロナウイルスは4種類知られており、感冒の10~15%を占める病原体として知られていた。猫や犬、豚などの動物に感染するコロナウイルスも存在する。2002年中国広東省に端を発した重症急性呼吸器症候群(SARS)は、蝙蝠のコロナウイルスがハクビシンを介して人に感染し、ヒト-ヒト感染を起こすことで8000人を超える感染者を出した。2012年にアラビア半島で中東呼吸器症候群(MERS)が報告され、ヒトコブラクダからヒトに感染することが判明した。
2019年12月から中国湖北省武漢市で発生した原因不明の肺炎の原因が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)であることが判明した。SARSやMERSの病原体と同じβコロナウイルスに由来される動物由来コロナウイルスと判明したが宿主動物はまだわかっていない。
SARS-CoV-2による感染症をCOVID-19と呼ぶことになった。
SARS-CoV-2のSタンパク質は、肺、腸、腎臓、血管内皮細胞表面にあるACE2を介して標的細胞に結合し細胞に侵入する。
感染経路:飛沫感染が主体と考えられ、換気の悪い環境では、咳やクシャミなどが無くても感染すると考えられる。また、ウイルスを含む飛沫などによって汚染された表面からの接触感染もあると考えられる。有症者が感染伝播の主体であるが、発症前の潜伏期にある感染者を含む無症状病原体保有者からの感染リスクもある。
エアロゾル感染:現時点では厳密な定義が無いが、密閉された空間において短距離で、感染者から発生したエアロゾルを介して感染したと考えられる報告や患者病室などの空間から培養可能なウイルスが検出された報告がある。再生産数が2.5程度と麻疹など他のエアロゾル感染する疾患と比較して低いことなどから、現在の中高における主な感染経路はエアロゾル感染ではないと評価されているが、医療機関においては、エアロゾルを発生する処置が行われる場合には、空気予防策が推奨される。
潜伏期間・感染可能期間:潜伏期間は1~14日間で、暴露から5日程度で発症することが多い。発症前から感染性があり、発症から間もない時期の感染性が高いことが市中感染の原因となっており、SERSやMERSと異なる特徴である。
SARS-CoV-2は上気道と下気道で増殖していると考えられ、重症例ではウイルス量が多く、排泄期間も長い傾向にある。発症から3~4週間、病原体遺伝子が検出されることは稀ではないが、感染可能期間は発症2日前から発症後7~10日間程度と考えられている。尚血液、尿、便から感染性のあるSARS-CoV-2を気検出することは稀である。
国内発生状況
2020年8月5日現時点 PCR検査陽性者 41129例(検査897340例中)、死亡者 1022例
症例数:29601例(患者25802例、無症状病原体保有者3764例、感染死亡者の死体35例)
性別:男性16901例、女性12697例、不明2名、その他1例
年齢:中央値39歳(0-105歳)
10歳未満 508例1.7% 10代947例3.2%、20代8153例27.5%、30代5226例17.7%、40代4079例13.8%、50代3836例13.0%、60代2556例8.6%、70代2218例7.5%、80代1468例5.0%、90代以上610例2.1%
ICUの入室率や人工呼吸器の導入率を見ると60歳代以上で急激に増えている。
50歳代までは重症化は少なく、60歳台から年齢が高くなるに従って致死率も高くなる。
症状:発熱21397例72.3%、咳11518例38.9%、咳以外の急性呼吸器症状2389例8.1%、重篤な肺炎1228例4.1%であった。
COVID-19症例のレジストリCOVIREGI-JP 2600例の解析によると入院までの中央値は7日であり、最終的に酸素投与を要しない軽症例が62%、酸素投与を要した中等症が30%、人工呼吸管理やECMOによる集中治療を要した重症例が9%であり、このうち7.5%が死亡し、入院期間の中央値は15日であった。
画像所見:胸部CT検査では、症状が無くても異常を認めることがあり、
武漢市における81例の患者CT所見のまとめでは、79%に両側の陰影を認め、54%は肺野末梢に分布していた。すべての肺野に異常陰影を認めうるが、右下葉に多い傾向を認めた。
発症から1~3週間の経過でスリガラス陰影から浸潤影に変化する。第14秒実頃にピークとなることが多く、CT画像所見と肺酸素化能はしばしば乖離する。
重症化のリスク因子:
COVIREGI-JPのデータでは、うっ血性心不全、末梢動脈疾患、閉塞性肺疾患(COPD)、軽度糖尿病は登録された入院患者に占める割合と比べて、中等症、重症の中で占める割合の方が多いから、重症化のリスク因子である可能性が高い。
重症化のマーカーとして有用な可能性があるものとして、Dダイマーの上昇、CRPの上昇、LDHの上昇、フェリチンの上昇、リンパ球の低下、クレアチニンの上昇、トロポニンの上昇、KL-6の上昇が挙げられるが、全体的な臨床像を重視して活用する必要がある。
妊娠時にCOVID-19に感染した際の重症化との関連ははっきりしていないが、母体時の重症化以外に、流産のリスクや産後の子供への感染だけでなく、子宮内感染が起こりうることが報告されている。
米国における15~44歳までの女性患者9万人のデータから、以下のことが報告されている。
妊娠中の女性約8200人は、妊娠していない女性約83000人と比べて、1.5倍集中治療室へ入室し、1.7倍人工呼吸管理を要したが、死亡率には差を認めなかった。
合併症:
呼吸不全:呼吸困難の発症直後に現れることがある。
心血管系:肺塞栓症や急性期脳卒中などの血栓塞栓症の合併症が約16%に報告され、より高い致死率との関連が指摘されている。
炎症性合併症:重症患者では、サイトカイン放出症候群に類似した、持続的な発熱、炎症マーカーの上昇などを伴う病態を呈することがある。炎症性合併症として、ギランバレー症候群(発症後5~10日)、川崎病に類似した臨床的特徴を持つ多系統炎症性症候群も欧米を中心に小児で報告されている。
皮膚症状:スペインの375例の症例に特徴的な皮膚症状の報告では、爪先や指先などの末端部での小水疱または膿疱を伴う凍瘡様紅斑(19%)、その他の小水疱性皮疹(9%)、膨疹(19%)、斑点状丘疹(47%)、皮疹または壊死(6%)に分類できると報告されている。
Br J Dermatol 2020; 183:3–4.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/bjd.19163
症状の遷延(後遺症):
イタリアにおける143人の患者調査では、COVID-19から回復した後(発症後平均2ヶ月後)も87%の患者が何らかの症状を訴えており、特に倦怠感や呼吸苦の頻度が多かった。
関節痛、共通、咳、嗅覚障害、眼や口の乾燥、鼻炎、結膜充血、味覚障害、頭痛、痰、食欲不振、咽頭痛、めまい、筋肉痛、下痢など様々な症状が記載されている。32%の患者で1~2の症状があり、55%の患者で3つ以上の症状がみられた。
アメリカの電話調査の報告では、270人の患者のうち175人65%が検査日から中央値7日で普段の健康状態に復帰し、95人35%が検査から2~3週間経過後も普段の健康状態には戻っていないと回答した、18~34歳では26%、35~49歳では32%、50歳以上では47%が検査後14~21日経過後も普段の健康状態に戻っていないと回答した。基礎疾患の有無も復帰率に影響しており、数が増えるにつれ改善率が乏しかった。
家族内感染:
韓国内において2020年1月20日から5月13日までに報告された10962例のうち5706例の発端症例を対象に接触者追跡調査が実施された結果を見てみる。調査対象となった接触者は、家族内が10592例、家族外が48481例であり、平均9.9日間の健康観察が実施され、家族内感染率は1248/10592=11.8%であったのに対し、家族以外の接触者感染率は921/48481=1.9%にとどまった。
年齢別にみてみると20歳代7.0%、30歳代11.6%、40歳代11.8%、50歳代14.7%、60歳代17.0%、70歳代18.0%、80歳代14.4%である一方0-9歳で3/57=5.3%と低かった。家族以外では、40歳以上の発端者からの感染率が優位に高く0-9歳で2/180=1.1%、10歳代で2/226=0.9%と低かった。
症例定義:
2020年2月1日から指定感染症としての届け出が開始された。
疑い患者の要件として2020年5月13日以下のように改定された。
濃厚接触者の定義も2020年4月21日下記のように改定された。
帰国者・接触者相談センター等に相談する目安は2020年5月13日以下のように改定された。
診断法:
現時点で行われている診断のための検査は三種類に分けられる。
- 遺伝子増幅検査:PCR法、LAMP法
SARS-CoV-2に特異的なRNA遺伝子配列をRT-PCR法などにより増幅し検出する。感度は高いが検査時間が数時間かかり、専用の機器と熟練した人材が必要であり、コストが高い。
- 抗原検査
SARS-CoV-2ウイルスの抗原を検出する検査 定性検査と定量検査がある。
15-30分で結果を得ることができる。症状発症後2~9日目以内のものについては本キットで陰性となった場合は追加のPCR検査などを必要としないが、一定のウイルス量が必要であることから無症状者に対する使用は適さない。
陰性の場合であっても、臨床経過から感染が疑われる場合や症状発症日及び発症後10日以降のものの場合は、確定診断のため、医師の判断においてPCR検査などを行う必要がある。
- 血清診断:
国立感染症研究所による患者結成を用いた結果では、IgM抗体の検出は発症12日以内の診断には有用性が低いと考えられ、ペア血清によるIgG抗体の評価が必要である。現在開発が進められている。
SARS-CoV-2のELISA法による特異的IgM・IgG抗体は発症から約4日後に増加し始め、3週間以内にほとんどの患者で陽性化する。
IgM・IgA抗体の検出期間の中央値は5日、IgGは14日である。したがってペア血清で検査すれば、診断精度をさらに高めることができる。IgM抗体は7週目までに消失するが、IgG抗体は7週間以上持続する。ELISA法のCOVID-19患者における感度/特異度は、IgM抗体77.3%/100%、IgG抗体83.3%/95.0%である。
発症から5.5日目まではPCR検査のほうがIgM検査よりも陽性率が高かったが、5.5日以降はIgM抗体のほうが検出率のほうが高くなる。
重症度分類
酸素飽和度と臨床症状から軽症、中等症、重症に分けられる。
軽症:特別な医療によらなくても、経過観察のみで自然に軽快することが多い。診察時継承と判断されても、発症2週目までに急速に病状が進行することがある。病状悪化はほとんどの場合、低酸素血症の進行として現れる。
高齢者、基礎疾患(糖尿病、心不全、COPD、高血圧、がん)、免疫抑制状態、妊婦などのリスク因子がある場合、病状が進行する可能性を想定して入院とする。
自宅療養や宿泊療養とする場合、体調不良となったらどのように医療機関を受診したらよいかあらかじめ患者に説明しておく。
軽症患者は発症前から感染性があるため、人との接触はできるだけ避けること。同居家族がいる場合には生活区間を分けること、マスク着用や手洗いの励行を指導する。
中等症:入院して加療を行う。目的は対症療法とともに、さらなる増悪を防止、また早期に対応するためである。入院加療に際しては、隔離された患者の不安に対処することも重要である。
中等症1 呼吸不全なし
安静にし、十分な栄養摂取が重要。脱水に注意し水分を過不足なく摂取するよう留意する。
バイタルサイン及び酸素飽和度を㏠回程度測定する。低酸素血症を呈する状態に進行しても呼吸困難を訴えないこともある。
重症化因子:高齢者、基礎疾患(糖尿病、心不全、COPD、高血圧、がん)、免疫抑制状態、妊婦、喫煙
一般血液、尿検査、生化学検査、血清検査、凝固関連、血液培養などを必要に応じて行う。
リンパ球数の低下、CRP、フェリチン、Dダイマー、LDH、KL-6などの上昇は重症化あるいは予後不良因子として去られている。
血清KL-6値は、肺傷害の程度、および炎症の程度と関連し、また、肺の肝機能を反映することから、肺病変進行のマーカーとなりうる。
血液検査や肺炎の画像所見から細菌感染の併発が疑われる場合は、喀痰検査ののち、エンピリックに抗生薬を開始する。発熱、呼吸器症状や基礎疾患に対する対照的な治療を行い、抗ウイルス薬の投与を考慮する。
中等症2 呼吸不全あり
呼吸不全のため酸素投与が必要となる。呼吸不全の原因を推測するため、酸素投与全に動脈血ガス検査を行い、必要に応じて人工呼吸器やECMOの医療体制の整っている施設への店員を考慮する。
肺浸潤影が拡大進行するなど急速に増悪する場合がある。このような場合、ステロイド薬を早期に使用すべきであり、レムデシビルの使用も考慮する。適応外使用であるがトシリズマブが使用されることもある。
通常の場合、O2 5L/minまでの経鼻カニューレあるいはO2 5L/minまで酸素マスクにより、SpO2≧93%を維持する。経鼻カニューレ使用時はエアロゾル発生抑制のため、サージカルマスクを着用させる。
酸素マスクによるO2投与でもSpO2≧93%を維持できなくなった場合、ステロイド薬やレムデシビルなどの効果をみつつ人工呼吸への移行を考慮する。
細菌性肺炎、ARDS、敗血症、心筋障害、不整脈、急性腎障害、血栓塞栓症、胃・十二指腸潰瘍、虚血性腸炎の併発に留意する。
重症:
COVID-19肺炎は比較的軽症のL型と重症のH型に分類される。
いずれも高めのPEEPを要するが、呼吸療法や鎮静の対応が異なる。
L型の時:ARDSとして換気設定すると肺損傷を生じる。低酸素血症はFiO2の上昇で対応し、必要最低限のPEEPを設定する。こうCO2血症は一回換気量を増やすことで対応。リクルーメンとは必要ない。挿管後は深鎮静にし、PEEPを8~10cmH2Oとする。伏臥位換気は上記に反応しない場合に実施する。
H型の時:重症ARDSとして治療し、PEEPは10~14cmH2Oを使う。伏臥位換気が有効であるが、人工呼吸抵抗性ではECMOも考慮する。
一部L型からH型へ移行するが、移行したことの判定が難しい。
院内感染対策:
COVID-19の感染経路は、主に喀痰や鼻水などの退役およびそれらで汚染された環境に触った手で目や鼻、口などの粘膜に触れたり、くしゃみや喀痰などの飛沫が目や鼻、口などの粘膜に付着したり呼吸器に入ることによって感染する。したがって患者の診療ケアにおいては、標準予防策に加えて、接触予防策と飛沫予防策を適切に行う必要がある。
SARS-CoV-2はエンベロープを持つRNAウイルスであり、熱・乾燥・エタノール・次亜塩素酸ナトリウムに消毒効果が期待できる。
退院基準:
入院患者の退院基準は有症状者と無症状病原保有者で分けられる。
有症状者の場合:
発症日から10日間経過し、かつ症状軽快後72時間経過した場合、退院可能とする。
症状軽快後24時間経過した後、PCR検査または抗原定量検査で24時間以上間隔をあけ、2回の陰性を確認できれば、退院可能とする。
無症状病原体保有の場合:
検体採取日から10日間経過した場合退院可能とする。
検体採取日から6日間経過後、PCR検査または抗原定量検査で24時間以上間隔をあけ、2回の陰性を確認できれば、退院可能とする。
ウイルス性敗血症とショック:
重症・重体COVID-19患者の多くは、明らかな低血圧を示さない場合でも、四肢の冷感や末梢の脈拍微弱など、典型的なショックの所見を認めることがある。これらの患者は、微小循環障害による重度の代謝性アシドーシスを伴っていることが多く、重症肺障害だけでなく、肝臓と腎臓の機能障害を認める場合もある。消化管出血、心機能不全、ストレス関連副腎不全、最近・真菌感染などのほかのショックと鑑別する必要があり、ウイルス性敗血症が考えられる。
軽症:肺胞マクロファージはSARS-CoV-2を封じ込め、自然免疫と獲得免疫の両方が効率的に作用して、ウイルス複製は抑制され、迅速に回復する。
重症例:肺胞上皮細胞と血管内皮細胞が破綻し、SARS-CoV-2は肺胞上皮細胞だけでなく、肺毛細血管内皮細胞も攻撃する。このため肺胞空内に大量の血漿成分が浸出し、肺胞マクロファージと肺胞上皮細胞は様々な炎症性サイトカインやケモカインを産生する。すると単球と好中球が感染部位に遊走し、炎症のサイクルが制御できなくなる。リンパ球数の減少と機能不全のために、獲得免疫は効果的に発動しない。ウイルス感染が制御できないので、より多数のマクロファージが浸潤し、肺障害はさらに悪化する。その一方で、SARS-CoV-2は播種して他臓器を直接攻撃し、サイトカインストーム、微小循環障害を併発して、ウイルス性敗血症を引き起こす。
COVID-19に対する抗ウイルス療法:
ワクチン、モノクローナル抗体、オリゴヌクレオチド薬、ペプチド、インターフェロン低分子薬などの候補がある。
- ファビピラビル(アビガン)
インフルエンザ治療薬として承認されたグアニン類似体であるファビピラビルは、インフルエンザ、エボラ出血熱、黄熱病、チクングニア熱、ノロウイルス、エンテロウイルスなどのRNAウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼを効果的に阻害する。無治療の軽症・中等症のCOVID-19に対して、臨床症状の回復率やウイルス量の減少が早かったとの報告がある。
- シクレソニド(オルベスコ)
おそらくSARS-CoV-2のNSP15に作用してウイルス複製を抑制する。吸入したシクレソニドは主に肺組織に残って吸収されないため、肺におけるウイルスの複製と炎症を軽減する一方で、コルチコステロイドの全身投与と比べると変易抑制効果は小さいと予想される。この効果はコロナウイルスに限定される。
- レムデシビル
HIVの逆転写酵素阻害薬であるテノホビルアラフェナミドに似た化学構造を持つアデニン誘導体のプロドラッグである。In vitro及び動物研究でSARS-CoV-2、SARS-CoV、MERS-CoVに対して活性が認められ、耐性変異の出現は確認されていない。
中国におけるRCTで、臨床的またはウイルス学的改善までの時間、28日後死亡率に有意差は認めなかったとする報告と、人工呼吸やECMO治療中の進行期COVID-19患者における人道的使用例で有効であったとの報告がある。
- リン酸クロロキン
中国の他施設臨床試験では有意なウイルス量減少効果は示せなかった。
- その他
COVID-19回復患者血清を呼吸不全のCOVID-19患者発症三週間後に投与した報告では、ウイルス検査は陰性化したが脂肪率の改善はなく、早期投与が必要と考えられている。
ワクチンは現在多数の国・施設において研究され、ロシアや中国では一部において使用されている。
参考文献:
新型コロナウイルス感染症 COVID-19診療の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/000670444.pdf
新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)臨床マニュアル Ver 3.0 姫路赤十字病院総合内科
http://himeji.jrc.or.jp/category/diagnosis/naika/kanzo/pdf/COVID-19manual%20Ver-3.0.pdf