クリニックからのお知らせ
2023.09.10
腎臓病食事療法の極意2 岩崎滋樹先生
2023年9月23日
演題「腎臓病食事療法の極意2 ―行方を左右するエネルギー摂取量―」
演者:白楽腎クリニック院長 横浜市立市民病院腎臓内科 昭和大学腎臓内科学客員教授 岩崎 滋樹 先生
場所: ホテルプラム
内容及び補足「
腎臓の悪くなり方を知れば対策を立てられる。わが国で最も多い慢性腎疾患は、IgA腎症である。
参:1993年に日本とフランスからIgA腎症の世簿に関する報告が相次いで発表された。この時点では20年間の予後として38%が末期腎不全に陥る、腎政権時の高血圧、腎機能低下、高タンパク尿、患者の高年齢などが世簿判定因子として報告された。
IgA腎症診療指針―第2版―において、我が国のIgA腎症患者の予後は、眼参議有無細胞増殖と基質増加、糸球体の硬化、半月体の形成、ボウマン嚢との癒着、尿細管・間質病変、血管病変の程度から、
- 予後良好群:透析療法にいたる可能性がほとんどないもの
- 予後比較的良好群:透析療法にいたる可能性が低いもの
- 予後比較的不良群:5年以上20年以内に透析に移行する可能性があるもの
- 予後不良群:5年以内に透析療法に移行する可能性があるもの
IgA腎症の予後を血清クレアチニン血の逆数と経過年数をプロットすると下図のようになっており、経年変化から予後良好群、予後比較的良好群、予後比較的不良群、予後不良群に分けて考えられている。
IgA腎症診療指針―第3版―
https://cdn.jsn.or.jp/jsn_new/iryou/free/kousei/pdf/53_2_123-135.pdf
しかし、個人の腎機能の変化を見てみるとまるきり違った経過となる。
4群に分けられていた個々の症例の変化は、腎機能がほとんど変わらない時期があり、そのあとに急激に悪化する時期が来る。分けられていた4群の違いは、安定している腎機能の時期が長いか短いかの差であることが下図からわかる。
この変化の理由を考えてみよう。蛋白質が代謝された老廃物は腎臓から排泄される。通常の糸球体数があれば、1日4時間ほど働けば、老廃物を排泄できる。腎疾患の進行により糸球体数が減少しても、働く時間を延長すれば、身体に老廃物は蓄積されない。働く時間が延長しても老廃物が排泄できなくなって初めてクレアチニン値が上昇してくるのである。
機能している糸球体の数を人に当てはめてみると、10個の老廃物を10人で処理しているときには1人当たり1個で済むが、Crが2に該当する5人で処理する場合には、1人当たり2個になり4時間の残業ですむ。Crが3に該当する3人で処理する場合には1人当たり3個になり8時間の残業となるが何とか対応できるが、Crが5に該当する2人になると一人当たり5個になり16時間の残業となり、生活が破綻する為、急激に悪化することになる。
腎臓の仕事である蛋白質の老廃物の処理の仕事は、低蛋白食にすることで老廃物の量が半分になると、Cr2の5人で5個になるので、1人当たり1個になり、Cr3の3人でも2個弱となり、Cr5の2人になると1人当たりの仕事量は2.5になり、6時間残業で対応できる状況を作り出すことが可能である。
三大栄養素のなかの炭水化物と脂質は、代謝されると水と二酸化炭素となり、二酸化炭素は肺から排泄されるので、呼吸器疾患がない場合には問題となることは少ない。
蛋白質からは窒素化合物が合成され、これは腎臓から排泄するしかない。従って腎機能が悪化してきた場合には、窒素化合物の合成量を減らすためにタンパク制限が必要となるのである。
35人の1型糖尿病患者においてタンパク質及びリンの摂取量を減らした際の少なくとも12か月以上の腎疾患の進行を見てみると、正常にタンパク質やリンを摂取した症例(B)に比べ、タンパク質やリンを制限した症例(A)ではGFRの低下が緩やかである。
N Engl J Med 1991; 324:78–84.
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJM199101103240202
通常食と等カロリータンパク質制限食で、18か月間で比較した際に、通常食では33例中9例(27%)が末期腎不全になり、制限食をした群では31例中2例(6%)と有意に少なく、急激な腎機能悪化を防ぐことができた。
N Engl J Med 1989; 321:1773–7.
https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJM198912283212601
それ以外の方法で、腎機能を悪くしないためにはどうすればよいか?
腎臓の悪化の要因を減らすことも効果的であると考えられる。
腎機能は、原疾患の進展悪化・加齢により悪化していくが、感染や下痢などの脱水による偶然的悪化因子により経過が修飾される。この経過をさらに修飾する因子として、食べ過ぎやエネルギー不足などの患者要因である食事と、合併している
高血圧、糖尿病、高尿酸血症、貧血などの疾患の治療・コントロール状態といった医師が関与できる要因がある。
食べ過ぎは高血圧、糖尿病、高尿酸血症を悪化させるのでよくないが、摂取カロリーの低下はかえって腎機能を悪化させる要因となる。
慢性腎不全の治療としては7つの分野に分けて考えられるが、上の四つは透析で対応可能であるが、舌の血圧、カルシウム、貧血の対応に関しては薬物治療を行う必要がある。
患者説明用に治療内容の重要度と患者側と医師側に分けて整理してみると以下の表のようになる。
体重が増えている症例においてはタンパク摂取量が多く、体重の減少は一部の例外を除いて、筋肉細胞が減少し、老廃物が多く出ることになる。太っている人でも、ゆっくり痩せる必要がある。
食事療法でタンパク制限食が必要な症例においては、タンパク制限で減少したエネルギーを糖質や脂肪で補充する必要がある。
適正な摂取エネルギー量は体重の変化で見ることができる。
「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、基礎代謝量に身体活動レベルを考慮して算出されたステイエネルギー必要量が、性別、年齢別に示されている。
適正なエネルギー摂取量は人によりさまざまであり、年齢や性ベル、運動量により異なる。
ヒトのタンパク必要量は意外と少ない。
日本人お食事摂取基準2020年版においては、下図のように示されている。
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586557.pdf
ヒトの体重の約15~20%が蛋白質であり、体重が60㎏だとすると9㎏程度が蛋白質ということになる。一般的な人の場合、1日に180g分解され、180g合成されて、タンパク質の均衡を保っている。
毎食75gのタンパクを3食食べ、180gのタンパクが排泄される変化を図示すると下図のようになる。
① 消化によってアミノ酸になる
② 腸管から吸収されたアミノ酸は門脈を経て肝臓に運ばれる
③ 肝臓のアミノ酸は血液を介して全身の組織に運搬される
④ 各組織は必要な体タンパク質をアミノ酸から合成する
⑤ 体タンパク質を作り変えるために蛋白質をアミノ酸に分解する
⑥ アミノ酸から得られた窒素を利用し、タンパク質以外の非タンパク質性窒素化合物を作る
⑦ アミノ酸をアミノ基と非窒素部分(炭素骨格部分)に分解する
⑧ アミノ基の大部分は最終的に尿素として排泄する
⑨ 炭素骨格部分は糖・脂肪酸の代謝経路に入りエネルギー源として利用される
⑩ アミノ基と炭素骨格からアミノ酸が合成され再利用される
(スポーツ栄養士あじのブログhttps://aji3.com/about-protein-and-amino-acid-metabolism/)
蛋白質摂取量が同じでも、三食均等に摂取する場合と夕食に偏って摂取する場合では、筋肉合成量に違いが出てくる。20g以上のタンパク質を摂取しても、筋肉合成はそれほど上昇しない(運動した後は筋肉合成量は上昇する)。三食均等に蛋白質を取った方が効果的である。
https://academic.oup.com/jn/article/144/6/876/4589937
人類史を見てみると、食事は生き残るための食事→生きるための食事→楽しむための食事と変わってきているといえる。
参:人類の食事の変遷
600万年前:植物の葉、芽、根、果物、昆虫、動物の死骸=主要な栄養素は炭水化物
250万年前にホモ属に属する人類の誕生東アフリカで誕生。
その頃に地球の環境は氷河期に移行し、ジャングルが縮小して平原に変化した地には草食動物やそれをエサとする大型の肉食動物が生息するようになり、人類はそうで減で狩りをするようになり、漁により魚介類も食べるようになる。=低糖質・高蛋白質・高脂質職へのシフト
1万年前ぐらいに農業革命が起こり、農業の開始により糖質の多い穀物を収穫できるようになり動物性の食べ物が減少=高糖質・低タンパク質・低脂質食へと変化
明治以前の日本人は蛋白質50g/日・肉食なしで山野を駆け回っていた。
ドイツミュンヘン大学の栄養学者カール・フォン・フォイト教授がドイツ人の食生活調査から得たデータを基づいて作った理論から明治政府が当時の小柄な日本人に応用し栄養所要量を「蛋白質96g、脂肪45g、糖質415g、2450kcal」と定めたが、この時点での日本人の食生活は「蛋白質56g、脂肪6g、糖質394g、1850kcal」であったが、http://sukoyaka-labo.com/health/4207/
明治末期には、米を主食として、野菜、イモ類、穀物を取り、他の品目はごく限られた量しか消費されていなかった。魚介類も漁村以外では、近年の1/10しか消費されておらず、蛋白源は大豆・味噌が重要な食品であった。
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/0280.html
食事摂取面の比較をしてみると、大正時代に比べると、昭和初年は穀物類、イモ類の消費量の減少と、果実、牛乳、乳製品、肉類、魚介類、油・油脂、砂糖の増加があった。1960年代には各種食品が増加し、1970年代に入り、動物性食品が全体的に急増、果物も野菜も増加し、基準的な栄養素摂取レベルに達した。
http://www.hosp.mie-u.ac.jp/epidemiology/_src/1434/AokiVol3_pc.pdf
こういった栄養学的な変遷はあったが、日本人の栄養失調は戦中・戦後の食事事情の悪化あるものの、江戸時代や明治期の人が体格的には低身長ではあったものの、非健康であったとか、低栄養であった、体力・持久力不足であったかというとそういったことはなく、身体を動かしていない現代の方が、逆に悪化しているといえる。
最低限の蛋白摂取量が維持され、摂取総カロリーが維持されていれば、筋肉量や筋力の低下は来ないといえる。
平成29年の国民健康・栄養調査結果を年齢別に蛋白質摂取源を見てみると、若年者では肉類が多いが、高齢者では魚介類が多い。蛋白摂取量も80歳未満では70gを超えているし、80歳以上でも65gとそれなりに摂っている。
栄養素等摂取量の状況 エネルギー、たんぱく質、脂質及び炭水化物摂取量の平均値 (20歳以上、性・年齢階級別) 第1部
参:令和元年国民栄養粗当摂取状況調査の結果を見てみると推奨量以上にタンパク質は摂取されており、70歳以上ではタンパク摂取量が減少しているが、摂取量が不足しているわけではない。
現代の食事は、タンパク質バブル時代と言える。
『肉、魚、卵など美味しいから食べる』という考え方は理解できるが、『体に良いと物を摂取する』と言って多く食べることは問題があると考える。
上記に示したように20~40代よりも高齢者がより多くのタンパク質を多くとっているが、それだけのタンパク質の量が本当に必要なのか?
筋肉量を維持するためには、タンパク質の摂取量だけでなく、タンパク質を作る際に有効な良質なタンパク質をとる必要がある。
参:今までの栄養学の栄養素に関する記載内容にも問題がある。
摂取した食物がすべて吸収されることにする、もしくはある程度の吸収係数で補正後すべて吸収されたことにして計算されている。
食事の摂取時間、感覚、食事の順番、食べるスピード、年齢、各種ホルモン、腸管運動速度などは一切考慮されていない。
アトウォーターは、蛋白質、脂肪および炭水化物の燃焼熱の値を燃焼熱の値を文献から収集し、自らも測定し、食物を摂取した際の消化吸収率を(intake-faecal excretion)/intakeで計算し、尿中損失は尿中エネルギー対窒素の比から計算し、炭水化物、蛋白質は4 kcal/g、脂質は9 kcal/g、アルコール7kcal/gとした。
その後、アメリカ合衆国農務省のアナベル・メリルとバーニス・ワットによって異なる食物源からの蛋白質、脂肪および炭水化物の総エネルギー値が異なること、異なる食品の成分の見かけの消化率が異なる事実を補正した修正アトウォーター係数が提唱されたが、腸内の混合物中の食品間の相互作用などは考慮に入れられていない。
蛋白質:コングルチン(青花ルピナス由来)5.48 kcal/g、ホルデイン(大麦由来)5.92、kcal/g、牛乳5.5kcal/g
脂肪:母乳脂肪9.37kcal/g、牛乳脂肪は9.19kcal/g
炭水化物:単糖約3.75kcal/g、二糖類3.95kcal/g、多糖類4.15〜4.20kcal/g
低蛋白食事療法の原則
- 体重をあまり考えない
- 体重を変えずに蛋白質摂取量を減らす(肥満の人でない場合)
蛋白摂取制限量の基本的な位置づけ
70g:人並み
50g:明治以前の日本人の常食
40g:努力が必要、一定の効果がみられる
30g:強い決心が必要、しかし透析に至るまでの期間をかなり稼げる
食事を摂取した後に産生される熱が摂取した食べ物により異なる。
参:食事誘導体熱産生(diet-induced thermogenesis:DIT)は食事摂取に伴い、 “ 食品自体の温度”に由来する熱量以上に体温が上昇する現象。二つの構成要素からなる。一つは、味覚、嗅覚などの口腔内感覚神経系を介するエネルギー代謝による上昇。もう一つは食品の消化吸収と同化の過程による上昇である。
前者の一つの機序として、匂いや味などの“非エネルギー性食品成分”が“感覚神経刺激”を介して、褐色脂肪組織(BAT)での脂肪燃焼を刺激しDITの発現亢進に深く関与していることがPETやMRIなどのエネルギー代謝像の解析から明らかになってきた。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jln/23/1/23_7/_pdf/-char/ja
タンパク質はアミノ酸に分解し、そのあと一部分は老廃物として排泄されるし、タンパク質として利用するためには、再度タンパク質を合成しなければならない。
栄養素としてタンパク質はエネルギー効率があまり良くなく、エネルギー源としては適していない。
力士は太るために伝統的に1日2食にしている。飢餓状態では吸収率は上昇するので、16時間に及ぶ空腹・飢餓状態の後に運動を行い、その後の大量の食事と睡眠は吸収率をより上昇させ、筋肉の合成、体重の増加には理にかなっていると言える。
豊臣秀吉の中国大返し:本能寺の変の際に、備中高松城水攻めの攻略中、毛利軍と和睦し、6月6日に引き返し、6月13日山崎の戦で明智光秀軍を撃破した。この際に移動した距離は230㎞と言われ、約7日間で走り抜けたことになる。この当時の食事内容で、これだけの持久力が可能であったのであろうか?
1876~1905(明治9~38)年にかけて日本に滞在していたドイツの内科医であるエルウィン・フォン・ベルツは、日光までの110㎞を人力車に乗った際14.5時間で移動した。その際車夫の持久力に興味を示し、菜食者と肉食者のどちらが持久運動に優れているかを調べるために、22歳と25歳の俥夫を選び人力車を引かせる「人力車の俥夫の走力実験」を行った。
最初は、白米、イモ、大麦、粟などといった日本古来からの食べ物で、脂肪と蛋白質は少ないが、デンプンの量はかなり多いものであった。この条件下で80㎏のベルツが乗った人力車を毎日40km三週間にわたって引かせ、3週間後に2人の体重を測った。1人は体重の増減が無く、もう1人は半ポンド増えていた。そして次に、2人に牛肉を与え、デンプンの量を減らして引かせてみたところ、3日後には、非常に疲れが出て肉食では走れないから肉の量を減らしてくれるように頼まれ、穀類食の量が増えたところ再び元気になり実験後の体重は、1人は不変であり、1人は半ポンド減少していた。
また、ベルツは東京から日光まで110kmの路程を人力車で旅行したが、午後6時に東京を出発し、午前8時に日光に到着した。14時間の同定で馬を6度変えたが、同じ日に東京から日光までの人力車の俥夫はたった一人で引き、110KMを10時間で到着した。彼が主に摂取していた食べ物は植物性のものであった。
また、ベルツは著書の中でアメリカの大学で行われた『肉食と耐久力』に関する実験結果を紹介している。
「腕を支える力」について、肉常食者は15人のうち2人しか15分以上腕をのばしたままの姿勢に耐えられなかったが、肉を食べない人の場合は32人中23人がこれに耐えられた。さらに時間を30分に延長すると、肉小食者は1人も耐えられず、肉を食べない人は15人も成功し、その内9人は1時間以上継続可能であり、1人は3時間を突破していた。
スクワットに関しても、肉常食者は300回以上できたものは非常に少なく、実験終了後録に歩くことが出来なかったが、肉を食べないものは、1800回もやることができ、実験終了後も疲れを見せないどころか、2400回を超えるものが数人おり、1人は5000回まで達していた。肉食をしない人たちは特別な運動の訓練もスポーツも何一つ体験したことのない一般人であったという。
https://www.daitouryu.com/syokuyou/contents/hajime/hajime10.html
筋肉質なゴリラは肉食ではなく植物食である。
最近のスポーツ医学では、筋肉の瞬発力や持久力を出すためにカーボ・ローディングという考え方、実践が主流となっている。
カーボ・ローディング(Carbohydrate Loading):スポーツなどの場面で、運動エネルギーとなるグリコーゲンを通常より多く体に貯蔵するための運動量の調節および栄養摂取法
脂肪は重さあたりにすると約2倍のエネルギー量を貯蔵できるが、即効的な利用に乏しく、多くのスポーツではエネルギー源として望ましくない。グリコーゲンはエネルギーとしての分解が容易で即効性があり、スポーツにおいては大変有効なエネルギー源であるが、貯蔵できるのは主に肝臓と骨格筋で、一般人ではわずかな量である。通常よりグリコーゲンを多く保持すると運動に必要なエネルギーの枯渇を起こしにくく、運動できる回数や運動時間を増大させることができる。マラソンや自転車ロードレース、スキーのクロスカントリーなどの高い持久運動を継続するスポーツでは、エネルギーを大量に消費する、ためグリコーゲンの貯蔵量は成績に大きな影響を及ぼす。
マラソンなどで、大会の数日前からトレーニングの強度を落とし、休日日も設けるなどして、十分に体力を回復させると大会で疲れが出にくくなり、練習を続けた場合に比べると驚くほど効成績になる場合がある。これは、休息によって、日ごろのトレーニングで傷んだ筋繊維が修復されるとともに、体内で枯渇気味になっていたグリコーゲンが十分に蓄積されるため、身体が本来の能力を発揮できるようになるからである。
体内に蓄積したグリコーゲンをほとんど消費し枯渇した場合、通常1日程度では十分に回復できず、3日程度は必要になるので、この間は著しいパワー・持久力不足となる。
塩分を控える
日本人の塩分摂取量の推移を見てみると、2012年の男性11.3g/日、女性9.6g/日、2015年男性11.0g/日、女性9.2g/日である。厚生労働省は男性で7.5g/日未満、女性で6.5g/日未満を推奨し、高血圧学会では6.0g/日未満、WHOでは5.0g/日未満、AHAは3.8g/日未満を推奨している。
疫学調査からモデル図が提案されている。(Aは20mEq/24h以下のナトリウム摂取量の集団で高血圧発症率がゼロに近い集団。Bは遺伝・環境要因により20~50%まで高血圧発症率が変化する集団。腎臓のナトリウム処理能力は高く450mEq/d(食塩で26g/d)までのナトリウム摂取量では約80%の人は高血圧にならない。正常血圧者による450~1500mEq/dまでの食塩負荷実験では、血圧は直線的に序章した集団。Cは70mEq/d以下のナトリウム摂取量では、ほとんど高血圧がない集団。50~100mEq/dのナトリウム摂取量では、故食塩感受性患者でも高血圧は発症しないと考えられる集団。)
現在のところ食塩にして3~6gの間に閾値があると考えられている。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1988/91/1/91_1_15/_pdf
Arch Intern Med. 1986 Jan;146(1):179-85
参:ケニアのマサイ族には『塩』を表す言葉がなく、塩分として摂取することはない。牛やヤギのミルクから塩分は摂取されていて、1日約2gの塩分摂取量であるとのこと。アマゾンのヤノアミと呼ばれる狩猟民族は1日1g以下の塩分摂取量と言われている。これらのことを考えると1日1~3gとれば十分生きていけるといえる。
https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_1110.html
CKDの人は、一般人比べナトリウムの排泄量が減り、高血圧になりやすくなっているだけでなく、一般人と比べ、しょっぱさを感じにくくなっており、塩分の摂取量が多くなりやすい。
1週間の減塩で、しょっぱさの感じ方が改善されるという報告もある。
塩分を感じる味蕾は10~14日で入れ替わるといわれている。
減塩の生活指導で一番問題となるのが、『塩分摂取量は普通』と思っている人が多いこと。
あるアンケート調査によると、塩分摂取量の多い人の半分しか、『自分は多いかも』と思っていない。こういった人への減塩指導は困難であるため、過食を減らすように指導をするだけで、ある程度の減塩が実践できる。逆に痩せている人は、過食ではないので、減塩指導が困難である。
塩分の摂取量は日本においては地域差が著明で、北高南低である。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/eiyogakuzashi1941/38/3/38_3_155/_pdf/-char/ja