川村所長のプライベート日記
2014.12.08
Yomi Dr. 23回目『尿酸値を下げる薬で痛風発作に』
Yomi Dr.24 回目『インフルワクチンが効かない理由、「白血球=警官」で考えると…』
が現在掲載されています。
ご興味がある方はご一読ください。
Yomi Dr. 23回目『尿酸値を下げる薬で痛風発作に』
は以下の文面でした。
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医者になって1年目の頃、医学部時代からの同級生が「川村さん、まいったよ。痛風の発作を起こしてしまい、痛いのをこらえながらやっとサンダルで歩けるような状況なんですよ」と言ってきました。
よく聞いてみると、飲み会が続いたこともあって尿酸値が9を超えていたので、「早く尿酸値を基準値まで下げないと痛風の発作になる」と思い、尿酸を下げる薬であるザイロリックを1日300ミリグラム飲み始めた翌日の朝に発作を起こしたとのことでした。
痛風は、関節の膜に付いた尿酸結晶が、関節の中に落ちて痛みを引き起こします。
ストレス、激しい運動、暴飲暴食が引き金になることが多いのですが、薬によって急激に尿酸濃度を低下させることによっても、結晶がはがれて落ち、発作が起きてしまうことがあるのです。同級生の場合はこのためにつらい思いをすることになったのです。
自分たちが学生のころの医学の教科書には、痛風の薬物治療について、そうした注意点は書いていませんでした。同級生も医師になってからは、まだ高尿酸血症の患者さんを担当したことがなく、痛風の発作に対する恐怖心が強いため、そういった情報を得る前に薬を飲んだために起こった悲劇でした。
痛風という病気は医学の父といわれているヒポクラテスが紀元前5世紀に悪くなる部位により母趾(ぼし)痛風(podagra)、手の痛風(cheiragra)、膝痛風(gonagra)、と記載しており、古代ローマ時代から知られていましたが、日本ではほとんど知られておらず、明治時代に日本に医学を広めたドイツ医師エルヴィン・フォン・ベルツも「日本には痛風がない」と記録しています。
それ以降の日本では痛風の記載がみられるようになり、終戦後より痛風患者が増加してきました。平成23年の厚生労働省の統計によると、推計患者数は11万4千人、予備軍である高尿酸血症はその約50~60倍と考えられています。
米が主食で、魚中心の食生活の時には、お酒をかなり飲んでいても痛風患者さんがいなかったことを考えると、肉食が痛風患者さんの増加にかなり影響していると考えられます。
肉食恐竜であるティラノサウルスの化石も尿酸塩で障害を受けた跡があったという話も、この考えを裏付ける情報の一つと思います。
尿酸はプリン体というものが体で代謝されてできるものなので、プリン体を多く含むものをたくさん取れば、血液の尿酸値が上がって危険な状態となります。
「ビールを含むアルコールが悪い」、「ビールに含まれる尿酸値はそれほど高くないので、ビールのつまみが悪い」などと世間では言われています。
確かに、お酒のつまみとして食べるもののうち、プリン体を多く含む肉、内臓もの、魚(特に干し魚)などの食べ物を多く食べることは危険です(http://www.tufu.or.jp/pdf/purine_food.pdf)。
アルコールも多く飲むと発作が出やすくなるので、プリン体が少ないアルコールを飲む方が良いでしょう(http://www.tufu.or.jp/gout/gout4/73.html)。
疲れているときや、寒い時などは、いつもよりもトイレが近くなることがあると思います。この時は気をつけてください。トイレが近いということは、血液の水分量が減るので、普段よりも、尿酸の値が上昇しやすくなるし、酔いやすくなっています。トイレが近い時は、アルコールの量を控えましょう。いつもよりも、お水を多くとるのも一つの対応策です。
参考: