川村所長の勉強会参加記録

2025.03.28

ウガイに関する考察

ウガイに関する考察

第45回 横浜市西区医師会学術講演会総会:グレンツゲビート研究会

2025年2月22日 西区医師会館

風邪に対するウガイの効果の論文を探していると、以下のものがあった。

Scotlandで2014年11月2015年3月の間で風邪を引いた後48時間以内に食塩水の鼻洗浄とウガイを組み合わせた治療32例と市販薬34例で、14日間経過を見た臨床研究である。

鼻洗浄とウガイ群は、対象群に比して、罹病期間1.9日減少(6.8vs8.7日)、家庭内感染35%減少、市販薬使用36%減少、mid-turbinate swab collectionのウイルスの排出量≧0.5log10/day減少などの有効性を認めた。

被験者たちの感想としては、87%が治療としては許容でき、93%症状改善に効果的であるとの評価であったが、71%の人が、風邪の予防策としてはやらないとコメントとした。

Sci Rep. 2019 Jan 31;9(1):1015.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30705369/

 

2009年に豚新型インフルエンザ(H1N1)が流行した際、フジテレビの朝の番組『ココ調』でウガイについて特集を組むことになった。彼らは、100人の日本人にアンケート調査を行ったところ、ウガイの習慣がある人は79人、帰宅時に行っている人が74人、寝る前は52人、朝起きた後が38人で、うがいの平均時間は13.2秒であった。

実際、世界において、ウガイは、どのように考えられ、行われているかを検討するため、2009年5月初旬時点で新型豚インフルエンザの感染が報告されていた35カ国の大使館にFaxを送り、ウガイに関するアンケート調査を行った。

その結果を下図に示す。

ウガイの習慣のある国は5か国のみであった。

 

風邪を引いたときの喉のケア(15カ国):スイス、メキシコ、タイ、イタリア、コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、キューバ、ポルトガル、アメリカ、アイルランド、イギリス、デンマーク、ブラジル、オーストリア

口臭予防(12カ国):コロンビア、フランス、カナダ、ドイツ、スペイン、韓国、ノルウェー、オーストラリア、ニュージーランド、スウェーデン、フィンランド、ペルー

うがいの概念がない(4カ国):オランダ、アルゼンチン、ポーランド、ベルギー

であり、風邪予防として行っている国は4か国で、日本、中国、パナマ、イスラエルであった。

 

ウガイのエビデンスを調べてみると、京都大学名誉教授である川村孝先生が、世界でウガイに関する論文発表がないということで以下の調査を行った。

2002年から2003年にかけてボランティア387名を募り、くじ引きでウガイなし群、水ウガイ群、ヨードウガイ群の3群に分け、2か月間継続、その間の風邪の発症を調査した(冬期の60日間ウガイ15秒2回を一日3回行う)。

この研究では3群間比較でP=0.055であったが、水ウガイは、それ以外の群より有効であり、イソジンウガイは、ウガイしない群とそれほど差がないことが示されているように思える。

Am J Pre Med 29 302-307 2005

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16242593/

 

それ以外の論文を探してみた。

2011年12月1日から2012年2月28日にかけ緑茶(384例:ペットボトルで支給)のウガイと水のウガイ(363例)を90日間、1日3回(登校時、昼休み後、帰宅後) 15歳から20歳未満の757例の高校生で、インフルエンザ発症予防効果を検討した論文があった。結果は緑茶と水ウガイの差は実証できなかった。

大阪大学感染症総合教育研究拠点特任准教授 井出 和希先生

Published: May 16, 2014 https://doi.org/10.1371/journal.pone.0096373

 

また別の報告では、17歳以上の600例の学生を(±ビタミンD:1000IU /週±うがい:30秒1日2回)の4群に分け2010年と2011年の9月‐10月の上気道感染症の発症を検討している。

30秒のうがいを1日2回行っても上気道感染症発症の予防効果はなかった。

しかし、ビタミンDの1000IU/weeklyの投与は上気道感染予防に有効であった。

Emma C. Goodall et al. Published: 19 May 2014  BMC Infect Dis 273 (2014)

https://bmcinfectdis.biomedcentral.com/articles/10.1186/1471-2334-14-273

 

これらの論文においてウガイの方法についての言及はない。

一般的なウガイのやり方を見てみると、いくつかの方法が提示されているが、おおむね同じような内容で以下のように表示されている。

https://www.asahi.com/relife/article/13230038

ウガイで洗うべき場所を考えてみると、口の中、咽頭壁、扁桃腺といった場所を洗う必要があるといえる。

上記のうがいの仕方では、喉の奥の側面にある扁桃腺の洗浄は不十分であるといえる。

扁桃腺に対して効果的なウガイの仕方をいかに示す。

  • 喉の側面を洗うために斜め上向きにうがいをする
  • 粘液にトラップされている病原体をより有効に洗い落とすために、いろいろな周波数でうがいをする
  • 左右二回ずつ行う
  • 歌を歌う

新型コロナウイルス対策として厚生労働省は、咳エチケット、マスク着用、手洗い、換気を推奨しているが、ウガイは推奨していない。

https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kenkou-iryousoudan.html#h2_

その理由として、新型コロナウイルスの感染経路としてエアロゾル感染があるためと思われる。

実際に愛知県一宮市の保育園保護者から、ウガイの飛沫による新型コロナウイルス感染の危険性についての問い合わせがあり、2020年8月5日に一宮市は市立保育園に対して「ウガイ中止」の通達を出した。

この通達の後、多くの保護者から「ウガイは感染防止のためにするもの」であり、中止するのは問題あるのでは、との問い合わせがあった。

そこで、うがいをする場所の間隔をあけること、

ウガイを待つ場所も間隔をあけること、

ウガイをした液を吐く目印を付けるなどの対応を指導した。

 

こういった報道があった後、フジテレビのめざましテレビのスタッフから『しぶきが飛ばないうがいの方法はないか』との問い合わせがあった。

そこで、フジテレビ本社に行き、いくつかの実験を行った。

高速撮影をしてウガイの際のしぶきの飛び方をチェックすると、横は肩幅まで、前方には20㎝程度飛んでいることが画像で確認された。

 

ウガイの際に口に残っている液体をボックスに廃棄すると、高さ30㎝の容器の壁を超えて57㎝も前方に廃液が飛んでいることが確認された。

 

この両方の対応策として以下の方法のウガイを勧めた。

  

 

この方法で行えば、ウガイの際の飛沫の散布を予防でき、ウガイ液の廃棄の際に駅の飛散を防げる。

2020年8月26日フジテレビのめざましテレビ(8:00からの放送)で放送された。

 

まとめ

うがいを予防として行っている国は少ない

 (日本、中国、パナマ、イスラエル)

うがいという言葉がない国もある

 (オランダ、アルゼンチン、ポーランド、ベルギー)

うがいは感染症予防効果があるイソジンうがいは有効でないかも

緑茶と水うがいでは差がない

効果的なうがいは斜め上向きで

 (都はるみさんサビ目線)

歌を歌いながらうがいをするとより効果的

しぶきを飛ばさないうがいの仕方は、コップを口につけて行えば簡単にできる

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