川村所長の勉強会参加記録
2014.02.24
新規抗凝固薬の実臨床 小浦貴裕先生
2014年2月19日 ホテルキャメロットジャパン
演題「データから読み解く新規抗凝固薬の実臨床での可能性」
演者:横浜市立市民病院循環器内科医長 小浦貴裕先生
内容と補足「日本人の死亡原因の第三位が脳卒中で、70歳以上の人の平均入院日数は男性で85日、女性で125日である。その75%以上が脳梗塞であり、脳梗塞の27%が心源性脳塞栓症である。そのうちの半分以上がmodified Rankin Scaleで4-6の重症例である。
心原性脳塞栓症のほとんどが心房細動によるものである。
脳卒中患者さんの心房細動の合併頻度は、14.7%(40歳未満)、34.8%(40-49歳)、56.1%(50-59歳)、71.9%(60-69歳)、73.8(70-79歳)、77%(80歳以上)と年齢とともに増加してくる。
心房細動の罹患率は男女とも年齢とともに上昇してくる。
脳卒中治療ガイドラインに、非弁膜症性心房細動(NVAF)患者の脳卒中リスクの超過と抗血栓療法の選択基準としてCHADS2スコアが推奨されている。
CHADS2スコアの上昇とともに脳梗塞の年間発症率が増加している。
今までは抗凝固療法としてワルファリンの治療方法しかなく、ワルファリン量を判定する際にINRが指標として使われていた。60歳以下であれば2~3が推奨され、高齢者においては1.6~2.6が推奨されるようになった。
ワルファリン投与によるベネフィットはCHADS2スコアの点数により異なる。
この表でわかるようにCHADS2スコアの0点、1点のベネフィットが乏しい人が現実には多数いる。
ワルファリンの効果は下記の図のように、凝固カスケードの数か所に作用している。止血に関与するⅦ因子に影響していることにより、いったん出血した際に止血が困難な状態となる。
その上、ワルファリンには、モニタリングが必要なこと、治療域が狭いこと、細かい容量調節が必要なこと、投与量が人により大幅に異なること、効果が出てくるまでに時間がかかること、効果がなくなるのにも時間がかかること、併用薬の注意が必要なことなど、数々の問題点があり、新規抗凝固薬(NOAC)が開発発売されるにいたった。以下にそれぞれの薬剤の比較一覧表を示す。
臨床研究のデザインが異なるので一概にこの表での比較は困難であるが、臨床効果としては、下図のように、ワルファリンと同等であったり、より効果的であったりしている。大出血の頻度は、リバロキサバン以外は減少している。
表にはないが、リバロキサバンの副作用としての消化管出血はワルファリン0.76%とに比較し0.86とやや増加傾向にある点は注意が必要である。
そのほかにも、抗凝固療法をしている際に、腎機能が悪くなると出血の副作用が増加するし、高齢者ほど出血のイベントは増加するので、注意が必要である。