川村所長の勉強会参加記録

2014.03.13

いつ使うの、誰に使うの、利尿剤配合薬 宮川政昭先生

2014年3月3日 横浜ロイヤルパークホテル
演題「いつ使うの、誰に使うの、利尿剤配合薬-今でしょ!といえる訳、いえない理由-」
演者:宮川内科小児科医院 院長 宮川政昭先生
内容「
*送れて参加したため、前半部分は、講演の中で宮川先生が使用したグラフや図などを使って自分で作った導入部分です。*

血圧が上昇するに従い脳梗塞や心血管死亡率が上昇する。


この高血圧の頻度は年齢とともに増加してくる。その状況は年代とともに変化してくる。その変化の原因の多くは食生活などの生活習慣の変化である。

血圧値を下げるために減塩指導が良く行われている。塩分の過剰が高血圧の原因と考えられているが本当にそうであるのか?
各国の塩分摂取量と血圧の関係を見た研究がある。

(川崎晃一:食塩摂取と高血圧。循環器講座6。高血圧の病態と治療、丸善、東京、7-36ページ、1985)
日本人の変分摂取量の変化を示す。(7年13.2、8年13.0)

塩分の摂取量が多いとその後の血圧の上昇も大きいと考えられている。

(Br Med J 297:319-328, 1988)
しかし、塩分をいっぱいとっても血圧の上昇しやすい人、ほとんど変化がない人がいるのも事実であり、減塩食を実践しても、血圧が顕著に下がる人と、ごくわずかな低下しか示さない人がいる。この現象は塩分感受性の違いと考えられている。
塩分感受性の定義としては、7日間の9mmol(0.5g)ナトリウム摂取量から7日間の249mmol(14.6g)ナトリウム摂取量になった時、平均動脈血圧が10%以上上昇している場合が一般的に使用されている(Dahl LK et Arch Intern Med 94:525-531,1954)。
老人、黒人(黒人は約80%、白人は30%)、肥満者、低レニン高血圧患者、交感神経活性の高い人、女性、腎疾患患者、インスリン抵抗性の強い人、アルブミン尿陽性患者、腎機能低下患者、脂質異常症に塩分感受性の人が多いと考えらえている。
塩分感受性の人の臨床的特徴を次の表で示す。

最近、東京大学腎臓内分泌内科教授の藤田敏郎先生が塩分感受性高血圧の機序を解明と報じられた。その実験を簡単にいかに示す。
塩分抵抗性正常血圧ラットRと塩分感受性高血圧ラットSに対して同じ量の過剰塩分を与え、異なる変化を示す物質を検索した。Rラットでは腎臓におけるRac1とMRの働きがともに抑えられているのに対し、SラットではRac1、MRともに活性化されていた(奇異性反応)。そこでSラットにRac1の働きを抑えるRac1阻害薬を投与したところ、MRの働きが抑えられるとともに、高血圧と腎障害の明らかな改善が見られました。

MR:鉱質コルチコイド受容体
鉱質コルチコイドの一つであるアルドステロンが腎臓におけるナトリウムの吸収を促進する。
Rac1:MRを活性化するたんぱく質

*以下は講演の内容を中心に記載していく*
血圧の変化のパターンとして、起床前後に上昇するmoring-surge-type早朝時の上昇してくるriser-type、夜間の血圧低下がみられないnon-dipper-type、日中高く夜間低下するdipper-type、夜間化上に血圧が低下するextreme-dipper-typeに分けることも可能である。それぞれの血圧の変動で合併しやすい病態も異なっている。

久山町のデータで見てみると高血圧や脂質異常症の変化よりも耐糖能異常者の上昇が急激である。(宮川先生は久山町の最新のデータを図示されたのですが、見つけられなかったので人間ドック学会の2012年のデータを示す。)

糖代謝異常に高血圧を合併している頻度は、糖の代謝異常の状態によって頃なり、正常では32.8%、境界型では47%、糖尿病では62%になる。高血圧患者における糖尿病の合併頻度も2-3倍になるといわれている。

血圧をと年齢変化、いろいろな臓器障害の合併の三つの軸で考えていく必要がある。
血圧値の管理の際家庭血圧を考慮に入れた適切な管理が必要であり、血圧の日常変動を意識する必要がある。特に臓器の合併症が起きやすい夜間高血圧や早朝高血圧といった患者特性を考えた治療が必要である。
その際に必要となってくるのが医師の適切な薬剤選択が重要となってくる。
血圧の管理(antihypertensive therapy)を目標とするのではなく、その先に生じてくる血管の障害(vascular therapy) を予防するという観点から治療戦略を組む必要がある。
そこで8Sを提唱している。(誤訳があるかもしれません)
① Speedy 迅速に
② Strict 厳格に
③ Smooth 変動が少なく
④ Suppression しっかり血圧を下げ
⑤ Shift non-dipperからdipperへの変化
⑥ Saving できるだけ費用をかけずに
⑦ Simple できるだけ少ない薬剤で
⑧ Safety 安全に
⑥と⑦を考慮すると配合剤というものがクローズアップされてくる。
レニンアンギオテンシン系亢進での圧上昇、食塩感受性者の塩分摂取量増加(Na利尿低下)による水分量の上昇、交感神経系亢進、インスリン抵抗性の悪化などにより、血圧が上昇する。

高血圧の程度の軸と合併症のリスクの軸で降圧薬とその併用を考えるべきである。

食塩の過剰に対しては少量の利尿薬の併用がRA系亢進状態に対していようしているARBに相乗的に作用する。少量の利尿薬併用が食塩感受性を解除するためである。
利尿剤の効果と副作用の現れ方には、差があり、少量の利尿剤は副作用が出にくく、高圧効果がそれなりに認められるので併用薬としては有効である。

そのほかに、血清カリウムに対する影響や、インスリン感受性に対する影響などお互いの薬剤の持つデメリットを相殺するように働く点も合理的である。


利尿薬による頻尿は、継続投与により体に過剰に溜まっていた水分がなくなってくると改善すると考えられる。実際朝利尿薬を使っていて、尿の回数が減少してきた後に、夜投与することによっても、排尿回数が増えない人が多く、早朝高血圧の人に対しても、ARBと利尿薬の合剤を夜投与しても、頻尿という副作用を認めないことも少なくない。
合剤でよく使用されるサイアザイド系利尿薬の副作用としては低K血症、尿酸値上昇、インスリン感受性低下、光線過敏症、脂質代謝異常、耐糖能異常、勃起不全、利尿効果化上による血液濃縮などがある。
光線過敏症や薬疹はうなじに出やすいので、日常診療において、うなじを観察するようにしている。

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