関節系

2014.10.06

最近の関節リウマチ診療 みなと赤十字病院 萩山裕之先生

2014年9月25日 ホテルモントレ横浜
演題「最近の関節リウマチ診療 ~診断・治療~」
演者:横浜市立みなと赤十字病院膠原病リウマチ内科 萩山裕之先生
内容及び補足「
関節リウマチは関節の滑膜が侵され、増殖する疾患で、『朝のこわばり:morning stiffness』=朝起きて手が腫れぼったかったり、握ることが困難であったりするこわばりが特徴的で、一時間以上続くとこの疾患である可能性が高くなる。
そのうち関節痛が生じるようになり、手や足の近位関節が侵され、変形が生じてくる。

有病率は人口の0.3~0.8%とされており、70万人程度の人が罹患していると考えられており、70%程度が女性である。30~60歳代で発病する人が多いと考えられている。
http://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rm400/library/guideline.html
http://www.ryumachi-jp.com/guideline.html
リウマチ治療の目標は、
① 関節の痛みや張ればなくなり、検査値以上がなくなる臨床的寛解
② 関節破壊の進行がない構造的寛解
③ 身体機能の障害が進行しない機能的寛解
を目指すことである。

68個の関節を15年間にわたり関節の破壊具合を調査した結果を見ると急速に進行するタイプ、徐々に進行するタイプ、あまり進行しないタイプがあり、70%の患者であまり進行しないことがわかった。

関節は骨と関節軟骨、関節液を作り出す滑膜からできている。
関節リウマチの患者さんでは、免疫担当細胞が滑膜を異物とみなして排除しようとして、炎症性サイトカインを分泌し、炎症が引き起こされ、滑膜の肥厚が生じ、関節腫脹する。その際に、タンパク分解酵素の分泌や、破骨細胞の活性化が起こり、関節軟骨や、骨が破壊される。関節軟骨が消失すると、クッションがなくなり、痛みが増強する。その後、骨の破壊の進行、筋肉の萎縮も生じ、関節の変形も生じてくる。

関節リウマチで侵される関節の頻度を以下に示す。

肩:65%、肘:38%、手首:78%、手の指:91%、股関節:17%、膝:64%、足首:50%、足の指:43%
http://pra.e-humira.jp/know/ra/symptom.html
2010ACR/EULARの関節リウマチの診断基準を示す。
小関節:MCP、PIP、第1指のIP、第2-5指のMTP、手首
大関節:肩、肘、膝、股、足首
血清RF、CCP抗体低値陽性は正常上限から正常上限の3倍まで、高値陽性は正常上限の3倍をける場合。
6点以上でリウマチの確定診断となる

鑑別すべき疾患として、
判断が困難なものとしては、
① ウイルス感染に伴う関節炎(パルボウイルス、風疹ウイルスなど)
② 全身性結合組織病(シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病、皮膚筋炎・多発性筋炎、強皮症)
③ リウマチ性多発筋痛症
④ 乾癬性関節炎
悩ましいものとしては、
① 変形性関節症
② 関節周囲の疾患(腱鞘炎、腱付着部炎、肩関節周囲炎、滑液包炎など)
③ 結晶誘発性関節炎(痛風、偽痛風など)
④ 血清反応陰性脊椎関節炎(反応性関節炎、掌蹠膿疱症性骨関節炎、強直性脊椎炎、炎症 性腸疾患関連関節炎)
⑤ 全身性結合組織病(ベーチェット病、血管炎症候群、成人スチル病、結節性紅斑)
⑥ その他のリウマチ性疾患(回帰リウマチ、サルコイドーシス、RS3PEなど)
⑦ その他の疾患(更年期障害、線維筋痛症)
それほど鑑別が困難ではないが、念頭に置いておくべき疾患として
① 感染に伴う関節炎(細菌性関節炎、結核性関節炎など)
② 全身性結合組織病(リウマチ熱、再発性多発軟骨炎など)
③ 悪性腫瘍(腫瘍随伴症候群)
④ その他の疾患(アミロイドーシス、感染性心内膜炎、複合性局所疼痛症候群など)
が挙げられる。

現在日本における基本的な治療の考え方は、
できるだけ軽症例のうちから早期に診断し、診断後できるだけ早期に治療を開始すること。
病状が悪い人に対するステロイド治療は、6ヶ月以内とし、出来るだけ早期に減量すること、となっている。
リウマチの治療薬としては、非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAID)、副腎皮質補門(ステロイド)、が以前から使われていたが、炎症の原因である免疫異常に働きかけ、病気の進行を抑える治療薬:Disease-modifying antirheumatic drugs (DMARDs)が、現在主として使われている。
これらの薬剤は、免疫系に働きかけるので、早くても1か月半、物によっては半年ぐらいしてから効果がみられる薬剤である。現在日本で発売されているものとしては以下のものがある。
現在日本で使用されているものとしては以下のものがある。

http://www.riumachi.jp/patient/patient01/kansetu/html/chiryo2.html
近年もっともよくつかわれている薬剤は、メトトレキサート(リウマトレックス)という葉酸の活性化を阻害する薬剤である。
葉酸   →   ジヒドロ葉酸   →   テトラヒドロ葉酸
葉酸レダクターゼ  ジヒドロ葉酸レダクターゼ(←阻害:メトトレキサート)
この葉酸が活性化されなくなるとDNA合成原料の核酸の合成がうまくいかなくなり、免疫担当細胞の細胞分裂が抑制されることによって、関節リウマチの病気の程度を弱めたり、進行を抑制すると考えられていて、この効果が発現するのに1~2ヶ月が必要である。
通常は1週間で6㎎を内服してもらうのであるが、初日から12時間間隔で2㎎を3回に分けてのみ、その後休薬して、1週間ごとに飲む方法と、1日1回または2回で6㎎を飲み、その後は休薬する方法がとられている。
副作用を低減するために、葉酸製剤であるフォリアミン5㎎をリウマトレックス最終投与後24~48時間後に投与することが行われている。

慎重投与とされている状態として以下のものがある。
① 高齢者
② 感染症を合併、あるいは反復する者
③ 白血球(<4000)・血小板()<100000)が少ないものや骨髄障害のあるもの
④ 低アルブミン血症(<3.0㎎/dl)
⑤ 肝障害患者(B型肝炎・C型肝炎患者・キャリア、アルコール常飲者)
⑥ 腎障害患者(GFR<60ml/min)
⑦ 呼吸器障害患者(COPD、MAC、間質性肺炎など)
http://www.ryumachi-jp.com/info/guideline_MTX.pdf

治療の流れとしては、下図のような流れをEularは推奨している。

http://ard.bmj.com/content/73/3/492.full
生物学的製剤が使用されるようになってきて、関節リウマチの症状や予後が目覚ましく改善してきている。
しかし、免疫系に働きかける薬剤であるため、感染症の発生が副作用として見られることがあり、きめの細かい経過観察と注意が必要である。
感染症が発生しても炎症症状が弱く出ることもあり、微熱や体調の変化がある際には、しっかりとした検査も必要である。特に陳旧性肺結核やB型肝炎既往感染の再燃の報告がいくつかなされているので、これらの感染既往者には、定期的なチェックが必要である。
生物学的製剤としては、以下のものが現在使用可能である。



http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/imed3/lab_2/page4/biologics.html
生物学的製剤使用における重症感染症のリスク因子は
① ステロイド内服中
② 65歳以上
③ 生活機能障害が強い(クラス3:要介助以上)
④ 肺障害の合併・既往
⑤ 糖尿病

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