呼吸器系

2014.03.31

COPDの併存症とその対策及び最新治療 桑平一郎教授

2014年3月28日 横浜ベイホテル東急
演題「COPDの併存症とその対策及び最新治療」
演者:東海大学医学部内科学系呼吸器内科学教授 桑平一郎先生
内容「気管は分岐して気管支→細気管支→終末細気管支→呼吸細気管支→肺胞管→肺胞と移行する。

この変化を電子顕微鏡でとらえたものがある。呼吸細気管支の壁に肺胞がくっついている像がみられ、どこから肺胞管でなくなるかがはっきりわからないような構造になっている。逆の見方をすると呼吸細気管支から肺胞管の部分においては周囲を肺胞が取り巻いており、健全な肺胞が存在することにより呼吸細気管支や肺胞管が周囲に引っ張られ、吸気の際に虚脱しないように働いているといえる。買ってきたばかりのスポンジのような状況にある。これをひっぱっることによりプツプツと切れた状態が肺気腫の状態である。

COPD患者の肺胞領域光顕像を健常者と比較してみてみると
気腫性変化が(0)正常(3)軽度(6)中等度(9)高度と高度になるに従い排ガスかすかになっていく。
 
COPD患者の末梢気道光顕像を見てみると、気道壁は炎症細胞の浸潤で肥厚し,上皮細胞直下の線維化や平滑筋が目立つ。これらの変化により気道内腔は狭窄する。

CT画像では下記の黒い部分として映ってくる。

COPDの定義は『タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患である。呼吸機能検査で正常に復すことのない気流閉塞を示す。気流閉塞は末梢気道病変と気腫性病変がさまざまな割合で複合的に作用することにより起こり、通常は進行性である。臨床的には徐々に生じる労作時の呼吸困難や慢性の咳、痰を特徴とするが、これらの症状に乏しいこともある。』であり、気流閉塞は末梢気道病変と気腫性病変がさまざまな割合で複合的に作用している。

慢性気管支炎は『持続性あるいは反復性の痰を伴う咳が少なくとも連続して過去2年以上、毎年3カ月以上続くもの』と定義されているのであり、病態として気腫性変化があるかどうかは関係なく、咳と痰が続いている病態を表現しているので、COPDを気腫型と慢性気管支炎型に分けて考えることは混乱をきたすもとであるので、避けてほしい。

COPDの病態は、肺胞構造が破壊されているため、肺胞の弾力性がなくなり、細気管支や肺胞管を引っ張る力がなくなり、呼気の初めの段階で気道が閉塞することである。

息を吐こうとするけれども、吐ききれない状態である。吐ききる前に再度息を吸うことにより、機能的残気量(FRC)が減少し、深吸気量(IC)が減少することである。
参:
正常なスパイログラム:

FEV1 =努力肺活量手技の最初の1秒間の努力呼気量;FEF25-75% =FVCの25−75%の呼気中の努力呼気流量;FVC =努力肺活量(最大量の吸気を行った後に強制的に呼出する空気の最大量)。
正常な肺気量:

TLC = 全肺気量;VT = 1回換気量;ERV = 予備呼気量;IRV = 予備吸気量;FRC = 機能的残気量;IC = 深吸気量;VC = 肺活量;RV = 残気量;FRC = RV + ERV;IC = VT + IRV;VC = VT + IRV + ERV。

運動に伴い上記肺気量のIRVが上昇しERVが低下してくるが、COPD患者では、吐ききる前に息を吸うのでERVが増加してくるため、IRVのスタートラインが上昇するため、必要な量の吸気ができず、息が苦しくなって、運動を中止することになる。この時の動脈血液中の酸素飽和度は、決して低値を示しておらず、正常値化または正常値よりも良い場合もある。つまり、低酸素になったために運動を中止しているのではなく、吸気ができなくなるために運動を中止することになるのである。

このような状況下で気道に対して生じているストレスを考えてみよう
空気といえども細気管支が周期的に閉じることによりずれ応力が生じる。その字ずれ応力が持続して生じることにより機能的、組織的な変化が肺胞―細気管支間に生じると考えられる。

COPDの全身的影響も重要となってくる。近年いろいろなことがわかってきて、COPDが全身に影響を与えるものとして、以下のものがあげられている。
全身性炎症:炎症性サイトカインの上昇、CRPの上昇
栄養障害:脂肪量、除脂肪量の減少
骨格筋機能障害:筋量・筋力の低下
心・血管疾患:心筋梗塞、狭心症、脳血管障害
骨粗鬆症:脊椎圧迫骨折
抑うつ
糖尿病
睡眠障害
貧血
実際COPD患者の死亡原因はNEJMの2007年に掲載されたデータでは、35%が呼吸器疾患、27%心血管疾患、21%が癌でなくなっており、他疾患の管理も大切である。
閉塞性の肺機能障害は肺がんのリスクであることが1987年において発表されている

喫煙が頸動脈壁の肥厚や頸動脈動脈硬化層と関連があることが岩本らにより示されている

動脈の狭窄部があると、そこで血小板が活性化され、血小板凝集塊を形成し、その凝集塊に白血球がくっついて血小板白血球複合体を形成し、血栓形成が生じやすくなる。

糖代謝と肺機能の異常の関連について2003年に報告がある。糖代謝の悪化とともにFEV1が悪化しているデータである。Quartile 1はFBSが88 mg/dl以下、Quartile 2はFBSが89-94 mg/dl、Quartile 3はFBSが95-101 mg/dl、Quartile 4はFBSが102-305 mg/dl、の人たちである。

この変化は、FVCとの比較でも同様であり、FEV1とFVCの比においても同様であった。

各種疾患におけるCOPD合併症の割合は欧米ではCOPD患者の20~30%が心血管イベントで死亡している。2008年のあるデータでは肝疾患患者の18%、糖尿病患者の12%、心血管疾患患者の11%、脳血管障害患者の11%、高血圧患者の10%、消化器疾患患者の10%にCOPDの合併を認めている。
参:
京都大学の室先生のデータでも生活習慣病患者の2割近くにCOPDの合併を認めている。

各種生活習慣病を持っている人でも高齢になるに従い気流制限がある人の頻度は上昇してくる。この表は日本大学データマネージメントシステムを用いて1999年から2008年に呼吸機能検査を実施した40歳以上の27111人のデータから、脂質異常症6946例、糖尿病6558例、高血圧4668例、アテローム性動脈硬化症1262例を抽出して検討したものである。

東京健生病院の外来初診時にスパイロメトリーを実施できた279名のうち、COPD以外の多疾患で244名受診されており、慢性の喀痰、席、息切れなどの症状があったのは194名、新たにCOPDと診断された症例は68例で、他疾患患者の約3割にCOPDの併存していたことになる

この度COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第4版が改訂された。その理由はCOPD治療の吸入薬が多数開発され、その治療効果が確たるものであったためである。
吸入治療薬の一覧としては、以下のように分類される。
長時間作用型抗コリン薬(LAMA)
スピリーバ、シーブリ、ウメクリジニウム、アクリジニウム
長時間作用型β2刺激薬(LABA)
セレベント、オンブレス、オーキシス、オロダテロール、ビランテロール
配合剤
ウルティブロ、チオトロピウム+オロダテロール、ウメクリジニウム+ビランテロール、アクリジニウム+ホルモテロール、
シムビコート、レルベア、フルティフォーム
単剤を併用して使っている患者さんを合剤に変更してみて、良くなった症例もいるが、素の機序は、まだよくわかっていないが、試してみる価値はある。

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