呼吸器系
2015.11.05
横浜市の結核対策について 市川美貴 先生
2015年9月30日 横浜市健康福祉センター
演題「横浜市の結核対策について」
演者: 横浜市健康福祉局健康安全課 市川 美貴 先生
内容及び補足「
横浜市の結核罹患率患者数の推移は全国平均とほぼ同じで徐々に低下してきている。新規患者数も漸減してきている。
横浜市の区別ごとに見てみると寿町がある中区が群を抜いて多いが、皆さんの努力の結果患者数は年々減少してきている。
年齢別に新規登録結核患者罹患率を見てみると、20歳代の結核未感染の世代である若年者に小さなピークがあり、集団感染を引き起こす危険を内在している。また、内因的な要因での再燃や再発、免疫力低下などによる易感染性で70歳以上の人たちの罹患率も高値となっている。
医療従事者の新登録肺結核患者を平成26年で見てみると、全国集計では看護師が最も多く罹患している。横浜市でも11人でそのうち看護師は5名発症している。
早期に発見するためには定期健康診断が必須であり、各職場において、毎年行い、実施後、必ず最寄りの区福祉保健センターに報告してもらうことになっている。
定期健康診断の対象者は以下のようになっている。
感染を拡大させないためには、接触者健康診断が重要である。
保健所が行う接触者健康診断は、『結核発病者と接触者した人に健診を行い、発病前の潜在性結核感染症の早期発見、新たな発病者の早期発見、および感染源や感染経路を探求する』ことが目的となっており、胸部X線検査、インターフェロンγ遊離試験(IGRA検査:T-SPOT、GFTがあり、横浜市ではT-SPOTを採用)を、小児ではツ反を併用して行っている。
妊娠・出産、育児休暇で定期検診を長期受診できなかった医療従事者の方で、子供の4か月健診で活気がない、首が座らない、追視しないなどの発達障害が疑われを勧められ精査医療機関紹介となり結核性髄膜炎、属中結核、肺結核(学会分類:bⅢ3)と診断され、周囲の一人が肺結核、11人が潜在性結核感染症と診断された症例がある。
平成26年の結核新登録患者10615人のうち0~4歳が17人、5~9歳までが15人うち結核性髄膜炎患者はそれぞれ2人、3人いる。早期発見、早期治療が重要である。
参:
潜在性結核感染症:結核菌に感染しているけれど、発病はしていない状態。
結核菌に感染しても、生涯で発病するのは10人に1~2人です。
結核を発病しやすい状態
1. ステロイドやTNF-α阻害薬などの抵抗力の弱くなる薬剤を使用している人
2. 末期腎不全の人、人工透析をしている人
3. 糖尿病のことロールの悪い人
4. HIV感染症、AIDSの人
5. 胸部レントゲンで結核の治った影があり結核の治療を受けていない人
6. 手術で胃や腸を切除した人
7. タバコを吸う人
8. 悪性腫瘍のある人
9. 塵肺の人
治療:イソニアジドを6~9ヶ月毎日内服すれば結核の発病を50~70%抑えることができるといわれている。
参:
よくわかる潜在性結核感染症
潜在性結核感染症治療指針
保健所の役割としては以下のものがある。
1. 患者の療養支援
(ア) 患者の服薬支援(DOTS)
(イ) 公費負担申請の案内
(ウ) 服薬終了後の経過観察
2. 接触者健診
(ア) 胸部X線検査
(イ) インターフェロンγ遊離試験(T-SPOT)
3. ハイリスク健診
(ア) 日本語学校、ホームレス、高齢者など
4. 横浜市感染症審議会
(ア) 結核分科会
DOTS(Directly Observed Treatment, Short-Course:直接服薬確認治療)とは、治療薬を確実に患者さんに服用してもらうために、WHOが打ち出した戦略。 1989年にWHO(世界保健機関)の結核対策課長に就任した古知新(こち・あらた)博士が、国際社会が結核問題を軽視していることを批判し、強力な治療方式であるDOTSを開発し、普及させた。 それまで途上国では採用できなかった高価な薬剤を確実に患者さんに服用させるシステムで、主として、医療従事者が直接患者に薬を手渡し目の前で服用を見届けるという方法で成果をあげている。
結核に関する届出
結核に関する制度
結核患者の移送事業について
「結核医療の基準」 の見直し―2014年 – 日本結核病学会
結核の接触者健康診断の手引き 改定第5版 2014年3月
結核院内(施設内)感染対策の手引き 平成 26 年版