呼吸器系

2015.11.05

結核診断・治療の最新情報 金子 猛 先生

2015年9月30日 横浜市健康福祉センター
演題「結核診断・治療の最新情報 ~診断の落とし穴から最新の検査・治療まで~」
演者: 横浜市立大学医学部呼吸器病教室 教授 金子 猛 先生
内容及び補足「
2014年の結核罹患率は世界的に見て、日本は中蔓延国に該当する状況である。

http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/191102/1/9789241565059_eng.pdf?ua=1
先進国の中においては結核の多い国である。

世界の死亡原因における結核は1990年7位であったが、2020年の予測でも7位であり続けており、年間900万人発症し、130万人の死者が出ていることになる。

2014年5月に出されたWHOファクトシートでは、2000年に比較し結核の死亡は減少しており、死亡原因のトップ10からは姿を消しているが、

 
低所得国では第8位の死亡原因であり、低位中所得国における死亡原因の第9位であり、依然として重要な疾患である。


http://www.japan-who.or.jp/act/factsheet/310.pdf
結核登録患者の年次別統計を見てみると、減少しているが昭和57年頃から減少率が鈍化し、平成9年に逆転増加現象が見られ、平成11年には結核緊急事態宣言が出されている。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou03/dl/12sankou.pdf

横浜市における結核罹患率は中区が多い。
都道府県別結核病床率を見てみると、全国平均が人口10万当たり5.7なのに対して神奈川県は1.8ともっとも少ない。

file:///C:/Users/PCUser/Downloads/18_2013.pdf
神奈川県立循環器呼吸器病センターに60床、国立病院機構神奈川病院に50床、川崎市立井田病院に40床、そして横浜市立大学附属病院に16床ある。

結核を発病しやすい状態にある人たちは以下の群である。
1. ステロイドやTNF-α阻害薬などの抵抗力の弱くなる薬剤を使用している人
2. 末期腎不全の人、人工透析をしている人
3. 糖尿病のことロールの悪い人
4. HIV感染症、AIDSの人
5. 胸部レントゲンで結核の治った影があり結核の治療を受けていない人
6. 手術で胃や腸を切除した人
7. タバコを吸う人
8. 悪性腫瘍のある人
9. 塵肺の人

潜在性結核感染症:Latent Tuberculosis Infection (LTBI)は、自覚症状や結核菌感染症を示唆する画像所見を伴わない結核感染症といえる。
日本における医療従事者特に看護職の結核発病リスクは同年代の女性に対して罹患率は3~4倍高い。
日本結核病学会予防委員会は2010年3月に「医療施設内結核感染対策について」を策定し、従来、医療従事者の入職時にツ反二段階法を行うベースラインの検査をQFTの結果をベースライン検査とするよう勧告を行った。
スクリーニングでQFT陽性であったものについては、二年以内の感染が疑われるものに対してはLTBI治療を推奨している。
その理由は、①感染から時間が経過した場合には発病リスクが低くなること、②新入職のような若年の世代における結核既感染率低いことから陽性的中率は必ずしも高くないことである。
感染率を1%、IGRAの感度を90%、特異度を98%とした場合での陽性率は30%強である。
ベースラインとして実施したQFT(第二世代)検査で陽性であった医療従事者61名に対してLTBI治療を行わずに286人年追跡した結果で発病者は一人もいなかった(結核 2012;87:697-699)事実から、最近の感染でない限りは治療が必要でないと考えられている。

結核菌は、長さ1~4ミクロン、幅0.3~0.6ミクロンの棒状の菌で表面はロウ状の物質の丈夫な膜でおおわれており、いくつもの菌がくっつきあって房のようになっている。

1mlの中に1万単位の菌が存在すると顕微鏡で見つけることができ、「塗抹陽性」となる。
数千個程度では見えず、培養の後陽性となる(培養陽性)が、菌が倍になるのに15時間(大腸菌は20分位)もかかり培養検査結果を見るためには4~8週間かかることになる。
結核菌の感染経路は飛沫核感染であり、通常の会話の5分間分の肺の奥から吐き出されるシブキが、一回の咳で放出され、紫外線で殺されなかった結核菌が近傍にいる人の肺に吸い込まれて感染が引き起こされることになる。

肺に入って結核菌が増殖を始めると、軽い炎症が起き、肺のリンパ節の腫脹も認められることがある。免疫があったり、抵抗力が強い人は、結核菌の増殖を抑え込み発病することなく経過する。
発病すると、咳、痰、血痰、発熱、共通、疲労感、食欲不振、寝汗などの症状が出現する。
臓器としては、肺以外(肺外結核7%程度)には、脊椎(脊椎カリエス)、腎臓(腎結核)が多く、その他の臓器を巻き込むこともよくある。血液中に菌が入り込む粟粒結核や髄膜へ侵入し結核性髄膜炎を生じると死亡率が急激に上昇する。

診断、臨床としては、結核菌検査として塗抹培養法、抗酸菌同定法、核酸増幅法があり、免疫学的検査として、ツベルクリン反応、インターフェロンγ遊離試験(IGRA)があり、画像検査と合わせて診断される。
http://www.kekkaku.gr.jp/books-basic/pdf/2.pdf

IGRA検査の特徴
・ツベルクリン反応はBCGによる影響を受けるが、QTFやT-SPOTはBCGの影響を受けない。
・QTFやT-SPOTの検査は過去の感染と最近感染の区別は不可能。
・感染後QTFやT-SPOTが陽性となるまでの期間は明らかでないが、通常は「初発感染者と最終接触2か月後」に検査を実施する。
・感染後数年、十数年と時間が経過するとQTFやT-SPOTの陽性率は低下する。
・潜在性結核感染症や活動性結核患者の化学療法後には、かなりの患者でQTFやT-SPOTは陰転化する。
・QFTは12歳未満の小児は成人よりも低めに出るし、5歳以下の小児には判定基準を適応しない。


http://www.asakayama.or.jp/news/topics/files/2013/05/%E6%A4%9C%E6%9F%BB%E5%AE%A4%EF%BE%86%EF%BD%AD%EF%BD%B0%EF%BD%BDNo195.pdf

http://www.kensin-kensa.com/archives/cat31/ifn-qft-3gt-spot/

QFTとT-SPOTの感度と特異度は下記のような報告がある。

IGRAは免疫応答を見ているので、免疫抑制者においての検証が必要である。
Leidlが128名のHIV陽性患者に対して行った検査結果では以下のように感度は低下したが、T-SPOTにおいては活動性結核患者と非活動性結核患者においての差が大きかった。
HIV患者においてCD4細胞数とQTF検査におけるINF-γ量、ツ反の硬結とは相関がみられてが、T-SPOT.TB検査の結果では相関がみられなかった。

RicheldiらはIGRA検査が困難とされる対象群(肝移植候補者:120名、HIV患者:116名、血液疾患患者:95名)における検査脳を調べたところ、QTF-3Gで27/369(7.3%)、T-SPOTで13/369(3.5%)で検査不能であり、QTF-3G検査の判定不可事例の中には、ツ反やT-SPOT.TB検査で陰性とはならなかったものもあり、感染事例があることを示唆していると考察されている。
Bergamminiらは活動性結核、あるいはLTBIが疑われる子供496名(0-19歳、平均11歳)にたいして、IGRA検査を行い判定負荷の比率を検討した結果QTF-3Gは16.4%(4歳未満では27.7%)、T-SPOT.TBでは2.8%(4歳未満では2.8%)であると報告し、QFT-3G検査結果は、年齢を考慮する必要があることを示した。
http://www.chiringi.or.jp/camt/wp-content/uploads/2013/06/49f52386b762d98a71b7aba19e7f1816.pdf

結核患者およびLTBI患者診療において注意するべき点を列挙する。
1. 胸部レントゲン所見のみで細菌性肺炎と肺結核の鑑別は困難であるので、特に高齢者の肺炎では常に結核を疑い診療をする必要がある。
2. 咳や痰のない患者においては、胃液検査が有用であり、当院での1~2割程度は、胃液で診断されている。
3. 咽頭・喉頭結核患者の場合には喀痰培養検査は通常陰性であり、発熱や脱力感などの全身症状が乏しく、病像の進行が緩徐であるが、腫瘤を形成する傾向があるため、胸部レントゲンばかりでなく、CTやMRI、ガリウムシンチなどで、リンパ節腫脹を検出し病理学的診断が必要となることが少なくないので、慢性咳嗽患者や頸部腫瘤患者の場合には、複合的な検査を行う必要がある。特に医療従事者においては強く疑うべきである。
4. LVFX投与例においては、症状は改善するが、レントゲン上の影が完全には消失しないので、そういった患者の場合には、肺結核を積極的に疑い、CTなどの精査を行うべきである。
1998年の報告で47例の検討において、CTで病変が認められた26例中18例しか単純レントゲンでは指摘できておらず、CTで両側に病変を認めた16例中6例しか単純レントゲンでは指摘できていなかった。つまり疾患診断で1/3の見落としが、病変の広がりでは2/3の見落としがあった可能性があり、結核感染を疑った場合には、CT検査を行う必要性があるといえる。

現在結核は感染症法において二塁感染症に指定されている感染症であり、社会への蔓延防止、薬剤耐性結核の増加防止の観点から、中途半端な治療は決して行うべきでなく、結核治療の必要な患者すべてに適切かつ確実に行わなければいけない。日本結核病学会治療委員会は、「結核医療の基準」 の見直し―2014年 -を発表した。

以前の基準の主な変更点や追加点は以下のとおりである。
①初回標準治療におけるエタンブトール(EB)〔またはストレプトマイシン(SM)〕の使用期間についての記載
②治療期間を 3 カ月延長することを勧める要件に HIV感染等を追加
③間欠療法の位置付けの変更,週 2 回の削除,週 3 回についても推奨度の引き下げ
④治療の中断があった場合,治療変更があった場合の考え方を追加
⑤ DOTSについて,地域 DOTSの追加
⑥腎不全がある場合,血液透析中の用法・用量の記載(1986年の委員会見解7)の更新)
⑦レボフロキサシン(LVFX)の位置付けの変更
⑧ LVFX以外に使用可能なフルオロキノロン剤の変更
⑨抗結核薬にデラマニド(DLM)の追加

治療における基本的な考え方としては、菌数が多い初期には少なくとも3剤以上を使用し(可能な限り4剤)、最短でも6ヶ月継続して投与する。なおLTBIの治療においては、未発病であって、体内の結核菌は少ないことから一剤による治療が行われるべきである。

よくわかる潜在性結核感染症
潜在性結核感染症治療指針
結核の接触者健康診断の手引き 改定第5版 2014年3月
結核院内(施設内)感染対策の手引き 平成 26 年版

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