その他

2024.09.02

COVID-19の最近治験 國島広之教授

2024年8月6日 

演題「COVID-19の最新知見」東日本-能登半島地震における感染症対策を含め

演者:聖マリアンナ医科大学 感染症学講座 主任教授 國島 広之 先生

場所: TKP新横浜カンファレンスセンター

内容及び補足「

COVID-19の臨床症状は、まず微咽頭などの上気道に感染すると考えられている。無症状患者は約半数と考えられている。軽症症例では、咽頭痛、微中・鼻閉といった上気道症状に加え、倦怠感、発熱、筋肉痛といった症状が生じることが多ク、その症状は一週間以内に軽快することが多い。

発症10日前後に肺炎を合併し、中等症や重症例に進展する場合もある。

新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き第10.1版

https://www.mhlw.go.jp/content/001248424.pdf

 

米国退役軍人症の電子健康データベースを使って、2022年10月1日から2023年1月31日までの間にSARS-CoV-2またはインフルエンザで2日~10日入院した143例で死亡リスクを検討した。

年齢、COVID-19のワクチンの接種状況、コロナウイルスの初回感染・再感染、コロナウイルスの治療薬の使用の有無で検討されている。

若年者では有意な差を認めていないが、それ以外の群では季節性インフルエンザの入院よりもCOVID-19感染の死亡率が有意に高かった(HR 1.61)。

JAMA. 2023 May 16;329(19):1697-1699.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10080400/

 

日本で2023年1月1日~12月31日の159万人の死亡のうちCOVID-19関連死亡数(死亡診断書Ⅰ+Ⅱ)は49676名であり、2022年の死亡統計の胃がん42319人や膵がん37677人とほぼ同じ数である。

https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/00001.html

参:令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況 死亡数・死亡率(人口10万対),死因簡単分類別

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai23/dl/h6.pdf

 

米国退役軍人症の国民医療データベースを使用し、SARS-CoV-2の初期感染と再感染でのリスクの変化を、未感染n=5334729、1回感染n=4435888、2回感染n=40947例で検討した。

再感染で、死亡はHR=2.17、入院はHR=3.32とリスクをさらに増加させた。

リスクの増加は、ワクチンの未接種、1回接種、2回接種でも認めた。臓器障害、メンタルヘルス、後遺症の増加は急性期で最も顕著で、6ヶ月まで持続した。

Nat Med 2022 28 2398-2405

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9671810/

https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kansen/corona_portal/henikabu/screening.files/genomu0505111.pdf

SARS-CoV-2ウイルスは増殖や感染を繰り返す中で少しずつ変異しており、約2週間で一カ所程度の速度で変異していると考えられる。

https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kansen/corona_portal/henikabu/screening.files/genomu_20240822_01.pdf

WHOによる変異株は、20242年6月28日時点では、以下のように分類されている。

米国DCの2024年4月28日~8月17日までの2週間毎の変異の報告を見てみると下図のようになる。

日本ではKP-3が大部分を占めているが、米国においては種々のものが混在している。

現在流行しているKP.3やLB.1、KP.2.3バリアントはJN.1よりも高い免疫逃避性を示し、相対有効生殖数(Re)はより一層高値を示している

Lancet Infect Dis. 2024 Aug;24(8):e482-e483.

https://www.thelancet.com/cms/10.1016/S1473-3099(24)00415-8/attachment/55459482-45fd-456b-a13e-7e43a967a006/mmc1.pdf

 

実際にXBB.1.5に対する単価ワクチンを接種した際に、中和抗体価の上昇はXBB.1.5は27.0倍、EG.5.1は27.6倍に上昇し、HV.1、HK.3、JD.1.1やJN.1は13.3から27.4倍であった。

Cell Host & Microbe Feb 19 2024

https://www.cell.com/cell-host-microbe/fulltext/S1931-3128(24)00018-0?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS1931312824000180%3Fshowall%3Dtrue

 

2価ワクチン4回目接種時で、1かより高い感染防止効果(約1/5)と入院抑制効果(約1/10)が見られた。

Lancet Infect Dis 2023; 23: 1343–48 Published Online August 2, 2023

https://doi.org/10.1016/S1473-3099(23)00373-0

 

フィリピンでのワクチン接種による家庭接触研究では、ワクチン接種により家族内感染の相対リスク低下(RRR)は79%であった。

Clinical Infectious Diseases, Volume 76, Issue 7, 1 April 2023, Pages 1180–1187,

https://academic.oup.com/cid/article/76/7/1180/6847509

 

Study 2067およびStudy 2069で943人の参加者においてSARS-CoV-2の家庭内感染を検討した。ウイルス量が10倍に増加すると感染の確率が40%増加し、インデックス参加者と寝室を共有すると感染の確率が199%増加した。

Open Forum Infect Dis. 2023 May 23;10(7):ofad271.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10319621/

 

2020年3月から2021年11月の間に研究に参加した病院でSARS-CoV-2感染のPCR検査を受け陽性が判明した951例のうち637例(67%)がワクチンを接種していた。罹患後の長期症状は疲労感22%、頭痛20%、手足の脱力感13%、持続性の筋肉痛10%などが見られた。

ワクチン2回接種により、ワクチン未接種者に比べ、疲労感62%、頭痛50%、手足の脱力感62%、持続性筋肉痛は66%減少していた。

NPJ Vaccines. 2022 Aug 26;7(1):101.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9411827/

 

週ごとのSARS-CoV-2感染による入院者数は下図のように夏と冬に流行を繰り返している。

https://ourworldindata.org/covid-hospitalizations

https://covid.cdc.gov/covid-data-tracker/#covidnet-hospitalization-network

そのため、Scotlandでは、ワクチン接種を春にも接種を行うよう指導している。

https://publichealthscotland.scot/media/25871/covid-19-spring-vaccine-leaflet-for-12-years-and-over-feb2024-english.pdf

 

現在日本での新型コロナワクチン接種回数は、令和6年4月1日に公表された情報は下表のようになっている。

https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/vaccine.html

 

感染してから、コロナウイルス量は下図のように変化する。

感染しても約半数が無症状だと言われている。

 

コロナウイルスの遺伝子変異とともにウイルス量の経時的変化が見られた。

ワクチンを接種することによりRNA量の低下は感染初期においてはさほどないが5日目以降では感染性ウイルス量(Infectious Viral Loads)が減少する。

Nat rev Microbiol 2023 21 147-161

https://www.nature.com/articles/s41579-022-00822-w

 

2021年6月1日~2022年1月17日の間にSARS-CoV-2陽性者は63002例で、オミクロン株が70%以上であった。数のように、様々な症状が出現したが、オミクロン株の感染は、デルタ株に比べ、下気道感染が少なく、入院率が低く、病気の期間が短く、感染力が強いという結果であった。

Lancet 2022 399 1618-1624

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(22)00327-0/fulltext

 

オミクロン株はアルファ型と比較して、子供の症状負担が高く、成人の症状負担は低くなっていて、味覚・嗅覚の喪失は減少していた。それは以前のワクチン接種の影響と考えられるが、ブースターを接種による追加効果は認めあれなかった。

  

Int J Infect Dis. 2023 Mar; 128: 140–147.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9780022/

 

世界で6500万人がLong Covidに罹患している(Nature Rev. Microbiol. 21, 133–146 2023)と推定されていて、米国だけでも、Long Covidの経済的コストは5年間で3兆ドルと見積もられている。

複数の研究により、血液と組織の両方で炎症マーカーが同定されていることや、通常成人では休眠状態にあるエプステイン・バーウイルスがLong Covidの症例では再活性化している報告やSARS-CoV-2が凝固タンパク質を変化させ、組織機能に影響を与える微細な血栓を生成している可能性も指摘されている。免疫系に影響を与え、自己免疫性疾患を経験する症例や、ミトコンドリアの機能に影響を与え、疲労感や運動後の倦怠感に影響を与えているとする研究報告もある。実際感染者においてウイルスの断片が6ヶ月以上体内にとどまっているとする報告もある。

Lisa McCorkell Nature 2023 Oct 622(7983):457-460

https://www.nature.com/articles/d41586-023-03225-w

 

 

欧州全体ではパンデミックの3年間で3600万人(30人に一人)がLong Covidを発症した。

WHO Statement 2023年6月27日

https://www.who.int/europe/news/item/27-06-2023-statement—36-million-people-across-the-european-region-may-have-developed-long-covid-over-the-first-3-years-of-the-pandemic

 

英国では2023年3月5日までの4週間で、英国の一般家庭にすむ推定190万人の2.9%にLong Covidの症状がみられ(69%が1年前、41%が2年前)、79%が日常生活に支障、20%が日常の活動が大幅に制限されていた。35-69歳、女性、より恵まれない地域に住む人々、社会的養護施設で働く人々、16歳以上で仕事をしていない人や仕事を探していない人でその割合は高かった。

https://www.ons.gov.uk

https://www.ons.gov.uk/peoplepopulationandcommunity/healthandsocialcare/conditionsanddiseases/bulletins/prevalenceofongoingsymptomsfollowingcoronaviruscovid19infectionintheuk/30march2023

 

米国国勢調査2022年の6月1日から13日および2023年6月7日から19日の調査では、米国成人人口のLong Covid有病率は7.5%から6.0%に減少したが、その後は安定化したが、26.4%の症例で重大な活動制限が見られた。

Nicole D Ford MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2023 Aug 11;72(32)866-870

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10415000/

 

東京都のインターネット調査n=10429では、感染後2ヶ月以上後遺症を疑う症状が25.8%に認めた。

疲労感・倦怠感が51.6%と最も多く、次いで席が35.1%であった。

後遺症のうち85%が日常生活への支障を認め、そのうち半数超が仕事や学業を休んでいた。

東京iCDCリスコミチームによる都民アンケート調査結果2023年3月30日

https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kansen/icdc/tominishiki.files/2023081401.pdf

 

米国の退役軍人保険局のデータでCOVID-19感染し、最初の30日間生存し、入院しなかった症例4990835例の追跡期間中値126日の検討では、6ヶ月後の1000人あたりの超過死亡は8.39人/1000人であった。

急性後遺症は、感染後30日から追跡終了まで確認された。

インシデント診断a、インシデント薬の使用、インシデント検査異常を下図に示す。最初のリングは、COVID-19の急性後遺症のハザード比を示し、バーが高いほどハザード比が大きいことを示している。次のリングは6ヶ月後のCOVID-19患者1000人あたりの超過負担を表している。3番目のリングは対照群のベースラインインシデント率を表している。(赤の濃淡が深いほどインシデント率が高い)

COVID-19感染後6ヶ月で、最初の30日間で入院に至らなかった最も一般的な過剰負担は呼吸器疾患であり、呼吸器症状の徴候と症状(過剰負担28.51)、呼吸不全、機能不全(3.37)、下気道疾患(4.67)、気管支拡張薬(22.23)、鎮咳薬および去痰薬(12.83)、抗喘息薬(8.87)、グルココルチコイド(7.65)のインシデント使用の負担が増加していた。

神経系の徴候と症状(14.32)、神経認知障害(3.17)、神経系障害(4.85)、頭痛(4.10)、睡眠覚醒障害(14.53)、不安・恐怖関連障害(5.42)、トラウマ・ストレス関連障害(8.93)の過剰負担が見られ、オピオイド鎮痛薬(9.39)、抗うつ薬(7.83)、ベンゾジアゼピン、鎮静薬および抗不安薬(22.23)の偶発的使用の過剰な負担が見られた。

脂質代謝障害(12.32)、糖尿病(8.23)、肥満(9.53)の過剰負担が見られ、抗脂質異常薬(11.56)、経口血糖降下薬(5.39)、インスリン(4.95)のインシデント使用の負担の増加が見られた。

倦怠感(12.64)、筋肉障害(5.73)、筋骨格痛(13.89)、貧血(4.79)の症状が増加した。

高血圧(15.18)、不整脈(8.41)、胸痛(10.08)、冠動脈アテローム性動脈硬化症(4.38)、心不全(3.94)の心血管疾患の過剰負担があり、β遮断薬(9.74)、カルシウムブロッカー(7.18)、ループ利尿薬(4.72)、チアジド系利尿薬(2.52)、抗不整脈薬(1.28)の偶発的使用の過剰負担があった。

食道障害(6.90)、胃腸障害(3.58)、嚥下障害(2.83)、腹痛(5.73)、

急性肺塞栓症(2.63)および抗凝固薬の使用(16.43)、皮膚障害(7.52)、関節痛および関節炎(5.16)、尿路感染症(2.99)の過剰負担が見られた。

Nature 2021 Jun 594(7862)259-264

file:///C:/Users/jeffb/Downloads/s41586-021-03553-9.pdf

 

脳霧、疲労、自律神経失調症、労作後倦怠感は、若年成人や女性に多く見られる。心血管疾患や代謝性後遺症は高齢者や合併症を有する人に多く見られる。

いずれの後遺症も重症度に応じて増加する。しかし、相対的なリスクは低いにもかかわらず、後遺症の90%異常が軽症者に見られる。

ワクチンの接種によりLong Covidのリスクを15~75%(平均40%)減少させるが、ブースター接種は高齢者や重症化リスク因子を持つヒトに限定されている。パキロビットを発症から5日以内に投与すると、Long Covidのりすくが26%減少するとの報告もある(メトホルミンの感染7日以内の投与では41%リスク低減の報告もある)。2~3年の追跡調査では多くの後遺症は自発的な回復やベースライン状態の復帰はまれであることが複数の研究から示されている。

Science 2024 Feb 23 383(6685)830-832

https://www.science.org/doi/10.1126/science.adl0867

 

イタリアで18歳以上の成人で2020年3月19日から3月の22日の間にPCRでコロナ陽性と診断された症例に急性期の評価、4週間後、8週間後、6ヶ月の及び2年後におこなった電話インタビュー調査では、202例のうち174例がすべてのフォローアップインタビューに回答したが、3例はCOVID-19の再感染が記録されていたので除外された。適格症例168例のうちベースライン108例64.3%、4週間後64例38.1%、8週間後29例17.3%、6ヶ月後27例16.1%、2年後14例8.3%に嗅覚または味覚の変化が見られた。

Covid-19 罹患者で嗅覚障害が生じているヒトでも、感染から3年が経過すればその障害から回復するようなので安心してほしい。

JAMA Otolaryngol Head Neck Surg 2024 Jan 1 150(1) 79-81

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9353700/

 

COVID-19罹患者は6ヶ月時点で22.9%に後遺症が残存し、12ヶ月後では18.5%、24ヶ月後17.2%に減少したが、12.5%においては無症状と有症状を繰り返していた。

感染者の症状の過剰リスクは2~10%であり、味覚または嗅覚の変化9.8%、労作後の倦怠感9.4%、疲労5.4%、呼吸困難7.8%、集中力の低下8.3%、記憶の障害5.7%で観察された。ワクチン未接種の症例においては18%が感染後2年以内にLong Covidの状態にあり、有意に高値であった。

BMJ 2023 May 31 381 e074425

https://www.bmj.com/content/bmj/381/bmj-2022-074425.full.pdf

 

新型コロナウイルス感染症に関する労災請求権数等(累計)では、約23万人が労災認定されている。うち、医療従事者が3/4を占めている。

コロナ以外の医療従事者の公務災害は年間約50~200件弱(平均80件/年)

厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/001101040.pdf

 

2020年3月1日から2022年7月15日の間でCOVID-19の症状が確認されたブラジルの医療従事者に関する検討n=7051では、罹患者の27.4%(1993人)にLong Covidが見られた。複数回罹患者(OR 1.27)、女性(OR 1.21)では有意に高かった。観戦前にワクチンを4回以上接種したヒトはLong Covidを発症する可能性が有意に低かった(OR 0.02)。

 

 

Infect Control Hosp Epidemiol. 2023 Dec;44(12):1972-1978.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10755155/

 

英国の医療従事者n=2331における検討では22.5%が5週以上、9.2%が3ヶ月以上、3.6%が6ヶ月以上にLong Covidの症状を認めたと報告されている。

ESCMID global 2024 P0478

 

2022年2月2日から2022年3月22日までの期間に発生した木澤記念病院での231例の感染者のうち92例の医療従事者にアンケート調査を行い収集された3例で検討した。

がいてに発生した新型コロナのクラスターにおける職業感染では、重症度にかかわらず、入院または施設での滞在期間は9.0日であり、職場復帰には14.0日(12.0-17.0)を要した。感染後1ヶ月の症状は、嗅覚障害33.7%、倦怠感33.7%、咳21.7%であった。感染後3ヶ月では嗅覚障害が18.1%、倦怠感9.6%、頭痛9.6%となり、感染6ヶ月後の症状は、嗅覚障害7.2%、倦怠感は4.8%であった。

J Infect Chemother 2023Feb 29(2) 126-130

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1341321X22002860

 

2023年2月6日から3月19日までの期間に岡山大学医学部附属病院総合内科のCovid Aftercare Clinic受診した866症例において、18歳異常65歳未満の雇用されている545例で検討した。295例で労働状況がLong Covidによりある程度影響を受けていた。

労働状況の変化が生じた女性が164例55.6%と多かった。

急性期に軽度の症状であった患者では56.1%に労働状況に変化が生じており、中等度/重度の感染例の36.4%に比較して有意に多かった。

労働状況の変化が生じた患者のうち、休職者は220例74.6%、退職者は53例18%、短時間勤務は22例7.5%であった。

オミクロン株有意期の方がデルタ株有意期よりも労働状況に変化があったLong Covid患者の割合が多かった。

オミクロン株有意期においては労働状況に変化があった症例は、男性52.2%よりも女性65.3%が有意に高かった。

J Clin Med 2024 Jun 28 13(13) 3809 doi:10.3390/jcm13133809

https://www.mdpi.com/2077-0383/13/13/3809

 

多く長いウイルス量は後遺症のリスクとなる

RT-PCR検査で陽性が確認されたCOVID-19症例70例を含む76例の名やリット自治大学心理学部によってアンケート調査を行った。

持続的な倦怠感は50%異常に見られ、男性で95%、女性で22%と性差を認めた。頭痛は男性で32%、女性で41%であった。

感染に関連する要因はウイルス量であり、これは病気の重症度に影響をあたえ、感染中およびLong Covidの症状の数にも影響を与える。ウイルス量が低い場合は、SARS-CoV-2感染後に患者がより多くの生理学的および精神的変化を示す可能性を示していた。

Int. J. Environ. Res. Public Health 2022, 19(22), 15145

https://www.mdpi.com/1660-4601/19/22/15145

 

2020年3月~2022年4月までにHumanitasの医療施設で働く4354例のうちSARS-CoV-2に感染したことのある医療従事者1293例を分析した。441例34.1%がLong Covidを患っていた。すべての症例はBNT162b2ワクチンを3回接種していた。

感染期間が長くなるほどLong Covidを発症する確率は増加した。陽性期間が10日以内だった症例のうちLong Covidを発症したのはわずか14.5%だったが、15~21日間感染した症例では42.5%、21日以上の症例では56.2%にLong Covidが発症した。

Clin Infect Dis 2023 Nov 3077(11)1531-1533

https://academic.oup.com/cid/article/77/11/1531/7227950

 

外来COVID-19患者73例で検査陽性48時間以内に登録し、登録後45日以内に9回SARS-CoV-2 RT-PCRを測定し、49のLong Covidの症状を1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後18ヶ月後にチェックした。発症後、年齢、性別、BMI25以上、およびワクチン接種状況を調整した急性COVID-19発症後の28日以内のウイルスRNAクリアランスと負の関連を示していた(脳霧aRR 0.46 筋肉痛aRR 0.28)。

Front Immunol 2023 Apr 28 14 1147549

https://www.frontiersin.org/journals/immunology/articles/10.3389/fimmu.2023.1147549/full

 

2020年1月1日から2023年6月30日までにCOVID-19の早期抗ウイルス療法を受けている症例と支持療法を受けている症例の比較した観察コホート研究6報 n=3352235の検討では、抗ウイルス薬の早期投与により、4週間以上の急性期後遺症(PASC)が有意に減少した(OR 0.725)。PASC関連の入院および死亡のリスクは、早期抗ウイルス療法を受けた症例の方が、支持療法群よりも有意に低かった(OR 0.721)。

J Clin Med 2023 Nov 28 12(23)7375

https://www.mdpi.com/2077-0383/12/23/7375

 

COVID-19診療手引き第10.1版における重症度別マネジメントおよび外来診療における抗ウイルス薬の使用の指針は以下のようになっている。

https://www.mhlw.go.jp/content/001248424.pdf

 

65歳以上の患者におけるCOVID-19の入院率は治療を受けた患者では10万人日あたり14.7例であったのに対して未治療の患者では58.9例であり、COVID-19による死亡の調整ハザード比は0.21であった。40歳から64歳の患者におけるCOVID-19の入院率は、治療を受けた患者では10万人日あたり15.2例、未治療例では15.8例で、有意な差はなく、COVID-19による死亡の調整済みハザード比は1.32であった。65歳以上の患者において、ニルマトレルビル投与は有益性を認めた。

NEJM 2022 Sep 1 387(9) 790-798

https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2204919

 

2021年12月8日から2022年4月27日までの間で、COVID-19感染症例にモルヌピラビル投与12529例と通常治療のみ12529例で検討した。

入院または死亡は、モルヌピラビルと通常治療の併用群105例(1%)であったのに対し、通常値両群は98例(1%)で有意な差を認めなかった。

サブグループ間の治療の相互作用のエビデンスはなかった。

Lancet 2023 Jan 28 401(10373) 281-293

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(22)02597-1/fulltext

 

新たに診断された非重度で症候性のSARS-CoV-2陽性の医療従事者55例(平均年齢34歳、女性78%)に対して、前向きに鼻咽頭スワブのサンプルを症状の発症の5、7、10、14日目に連続して採取し、核酸増幅試験とウイルス培養によって調べた。

5日目53例96.4%、7日目48例87.3%、10日目41例74.5%、14日目23例41.8%でPCT陽性であり、ウイルス培養陽性率はそれぞれ83%、52%、13.5%、8%であった。

無症状となった患者のうち、ウイルス培養陽性率はそれぞれ4/4例100%、7/12例58%、3/27例11%、2/41例5%であった。

外出を控える期間の解除(5日)の時点ではほとんどの症例でウイルス培養陽性であった。

Clin Microbiol Ifect 2023 Feb 29(2) 221-224

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9287585/

 

COVID-19感染症例に対して、エンシトレルビル125mg群114例、エンシトレルビル250mg群116例、プラセボ群111例に分け1日1回5日間経口投与し、4日目のSARS-CoV-2の力価のベースラインからの変化と事前定義された12のCOVID-19症状の合計スコアのベースラインからの最大120時間までの時間加重平均変化で検討した。

すべての治療群において、SARS-CoV-2ウイルス力価は4日目までの時間とともに減少し、21日目まで検出レベルの加減で安定した。共分散分析(ANCOVA)を用いて評価した4日目のSARS-CoV-2ウイルス力価のベースラインからの変化は、エンシトレルビル125mgおよび250mg群で有意に大きかった。

SARS-CoV-2ウイルス力価が最初に陰性になるまでの時間の中央値は、COVID-19のワクチン接種歴に関係なく、エンシトレルビル125mgおよび250mg投与群はプラセボ群よりも有意に短かった。

Clin Infect Dis 2022 Dec 7 ciac933  doi:10.1093/cid/ciac933

Clin Infect Dis. 2023 Apr 17;76(8):1403-1411.

https://academic.oup.com/cid/article/76/8/1403/6881001?login=false

 

軽症/中等症のSARS-CoV-2感染症患者を対象としたエンシトレルビルの第3相パートの探索適評かとして患者の罹患後症状を調査し、Day 169までの中間解析を行った。プラセボ群と比較してエンシトレルビル125mgおよび250mg投与群では、COVID-19の急性期症状において、25%、10%、罹患後神経系症状において26%、9%のLong Covid発現リスク低下が見られた。

その傾向は、治療開始時のCOVID-19症状合計スコアが高値であった集団で顕著であり、125mg群で急性期症状45%、神経症状33%の低下が見られた。

precision medicine 2023 6(4) 291-299

http://www.hokuryukan-ns.co.jp/cms/wp-content/uploads/2023/04/PM_2023_04_039_web.pdf

 

グレープフルーツや多くの薬剤はCYP3A4を阻害・誘導することにより薬物代謝に影響を与える。

https://en.wikipedia.org/wiki/Grapefruit-drug_interactions

http://ja.wikipedia.org/wiki/CYP3A4

 

エンシトレルビルは副作用の発現頻度はそれほど高くないが、いくつかの併用禁忌薬がある。使用頻度の多いアゼルニジピン(カルブロック)、ロスバスタチン(クレストール)、リバロキサバン(イグザレルト)覚えておくとよい。

https://med.shionogi.co.jp/disease/infection/covid19/xocova/taboo_pdf.html#taboo01

重症化リスクなくても使用可能

 

パキロビットは腎機能障害例(eGFR 60mL/min未満)には減量が必要であり、重度の腎機能霜害例(eGFR 30mL/min未満)には使用できない。

胃腸障害が多く、併用禁忌薬が多い。

 

ラゲブリオ(モルヌピラビル)は18歳以上の患者に投与可能であり、併用禁忌薬もない。

 

費用もそれぞれの薬剤で違いがある。

日本環境感染学会が(2023年9月19日)、処置に応じた適切な防護具を選択することを下表のように推奨している。

一般社団法人日本環境感染学会5類移行後、COVID-19の感染対策面の課題に対する学会の考え方 2023年9月19日

http://www.kankyokansen.org/modules/news/index.php?content_id=518

 

COVID-19の医療従事者の感染予防対策として461医療者の文献を特定し、その中で59件を抽出し、適格基準を満たしていない43の論文を除外した16件の文献を解析に用いた。対照者は37人から5442人の参加者の範囲であった。

フェイスマスク着用は医療従事者を感染から守る可能性があることは示唆されたが、全体的な効果は統計的には有意でなかった。

サージカルマスクの着用は、結菜効果が示されたが、サンプルサイズが小さく、エビデンスの信頼性が低かった。

N95マスクの着用はOR 0.08と有効性が示された。

しかし、手袋の着用などの手指衛生の徹底や、ガウンの有効性は示されなかった。

Public Health Pract (Oxf) 2022 Dec 4 100280

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9190185/

 

RT-PCRで確認されたCOVID-19患者に対応した医療用マスク群497人中52人 10.46%に、N95マスク群では507人中47人9.27%にCOVID-19を発症した。国別で差が見られるが、Totalでは医療用マスクとN95マスクでは非劣性であった。

 Intern Med 2022 Dec 175(12) 1629-1638

https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/M22-1966

 

全例報告でなくなったため、COVID-19感染者数を過去の流行と比較するのが困難となっているが、解す中心型コロナウイルス量を検討することである程度推察することができる。

2021年11月1日~2024年8月までのデータを見てみると、30033年11月以降は、ほぼ同じような波形の変化を示している。

※下水中新型コロナウイルスRNA量は、定量PCR法によって測定した下水1リットルに含まれるウイルスの遺伝子数(コピー)であり、この値が大きいほど下水の処理区域内に感染者が多く存在していることが想定される。

定点医療機関当たりの患者報告数は指定医療機関から報告された、1週間ごとの新型コロナウイルス感染症の患者数のこと。毎週、感染症情報センター(神奈川県衛生研究所)に掲載される感染症発生動向調査週報にある「表1 報告数・定点当たり報告数 疾病、政令市・保健所別」に基づき算出している。

https://www.pref.kanagawa.jp/docs/h2d/covid19/past_sewer/202311graph.html

 

川崎市内でのCOVID-19の感染流行数はインフルエンザよりも遙かに多くなっている。

https://www.city.kawasaki.jp/350/cmsfiles/contents/0000157/157507/syu0634.pdf

https://www.city.kawasaki.jp/kurashi/category/22-13-8-11-6-5-0-0-0-0.html

https://www.city.kawasaki.jp/kurashi/category/22-13-8-11-6-1-0-0-0-0.html

 

 

抗ウイルス薬は早期投与が大切

検査でインフルエンザが確認された958例において955人に経口オセルタミビルが投与された。140例15%は発症から6時間以内に、240例25%は12時間以内に、573例60%が24時間以内に研究に参加した。

早期の介入は病気の期間の短縮と強く関連していた。

発熱後の最初の12時間以内の介入は介入が48時間まで遅れた場合よりも、病気の期間の中央値を3.1日短縮した。オセルタミビル投与の開始が6時間早くなる毎に、予測された病気の期間の中央値は1.09の加速係数で短縮された。つまり病気の期間が約10時間短縮される計算となる。

J Antimicrob Chemother 2003 Jan 51(1) 123-9

https://academic.oup.com/jac/article/51/1/123/771010?login=false

 

オーストラリアのビクトリア州でB.A.4/5オミクロン波の間に診断された70歳以上のCOVID-19症例38933例にニルマトレルビル-リトナビル(5250例13.5%)またはモルヌピラビル(19962例51.3%)いずれかだけの治療を受けた群と無知両群(13721例35.2%)を比較した。死亡のオッズ比は、治療群で0.43(57%減)、ニルマトレルビル-リトナビル群で0.27(73%減)、モルヌピラビル群で0.45(55%減)で、入院のオッズ比は、治療群で0.69(31%減)、ニルマトレルビル-リトナビル群で0.60(40%減)、モルヌピラビルで0.71(29%減)であった。診断から一日以内に治療を受けた症例では、死亡のオッズ比が0.39(61%)原、4日以上の遅延群で0.67(33%)と減少しており、早期の治療介入が有効であった。

Lancet Reg health West Pac 2023 Oct 3 41 100917

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37927380/

 

一般社団法人日本環境感染学会として2023年1月17日に「介護施設における感染対策(クラスターが起こった際の対応)」に下記のような対策をあげた。

陽性者が出た場合:陽性者の適切な隔離が必要。複数人で居室を共有している場合には、それぞれマスク着用をお願いするとともに、生活空間において2m異常の充分な距離を開け、換気にも配慮することが重要。

介護施設の利用者の多くはCOVID-19の重症かリスクがあると考えられるため、陽性者においては抗ウイルス薬をできるだけ早く投与することを検討し、必要時はかかりつけ医はもとより嘱託医、協力医に診療、処方依頼をする。抗ウイルス薬には体内ウイルス量を早期に減らす効果が期待できる。

その上で、施設内で新たに発熱や咽頭痛、呼吸器症状などCOVID-19に関連する症状型の入居者や職員から出現しないかを慎重に観察し、疑わしい症状があった場合には積極的に公言定性検査を実施する。クラスターに発展することを念頭に置き、発症者や検査日あに陽性者が発生しないことを充分に確認できるまで継続する。入居者や職員の一斉検査は早期のクラスター収束に役立つ可能性はあるが、コストの問題、感度の問題などから、実施については専門家や行政ともよく相談するとよい。

クラスター発生時には面会制限を設ける、来訪者のマスク着用を徹底するなどの対策を一時的に再開することも検討するとよい。

http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/COVID-19_kansentaksaku-cluster.pdf

 

FDAは2023年の秋に、ハイリスク患者におけるCOVID-19による重篤な疾患進行予防として、XXBワクチンと抗ウイルス薬はいずれも考慮するべきであるとしている。

Lancet Infect Dis. 2024 May;24(5):e278-e280.

https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(24)00150-6/fulltext

 

2020年3月から2022年10月までの間で、57のRCTの検討でウイルスクリアサンス比が記載されている44のRCT(n=52384)で、有効な薬を使用することにより、ウイルスクリアランスの加速と臨床効果が期待できる結果であった。

ワクチンを接種しなかった症例での入院および死亡は、低リスク群で55/1534 3.6%、1/534 0.07%、高リスク群では564/8401 6.7%、61/8401 0.7%であったが、ワクチン接種例の低リスク群で9/626 1.4%、0/626 0%、高リスク群では166/14901 1.1%、9/14901 0.06%と有意な差を認めた。

非治療群おけるベースラインのウイルス量とクリアランス比を見てみると下図のようになる。

SARS-CoV-2のウイルスクリアランス比(VCRR)と入院/死亡の相対比を見てみると、ウイルスクリアランスが大きいほどベネフィットは大きい。

咽頭粘膜におけるSARS-CoV-2のウイルスクリアランス比は臨床的に有効性が認められた群で値は大きかった。

Singh J Antimicrob Chemother 2024 May 2 79(5)935-945

https://academic.oup.com/jac/article/79/5/935/7612573

 

2022年11月から2023年7月の間にCOVID-19の診断を受けた18歳以上の外来患者エンシトレルビル群5177例、非抗ウイルス治療群162133例を比較検討した。

エンシトレルビル群は入院の相対リスクを37.1%減少させた。

Infect Dis Ther. 2024 Aug;13(8):1821-1833.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC11266320/

 

日本環境感染学会は、2020年12月14日にCOVID-19とインフルエンザの合併例がCOVID-19による入院患者の4.3-49.5%見られる。

鼻閉や咽頭痛が多く認められる傾向がある。

インフルエンザ被合併例に比して重度や検査所見に差違は見られなかった等の報告や、B型インフルエンザの合併症例は重症化したという報告もある。

細菌感染合併が7%、RSV Preウイルスなどのほかのウイルス感染の合併が3%トと報告もされている。

などのデータを示し、「新型コロナは普通の病気なれど感染性が高く高齢者は重症化し、若年者は後遺症が見られる」と提言している。

https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/2012_teigen_influenza_covid19.pdf

 

2023年2月10日から2023年4月27日までの間に4647例に対して、公共の場でサージカルフェイスマスクを14日間以上着用する群2313例と着用しない群2262例で比較検討したところ呼吸器感染症と一致する事故報告症状は、マスク群で163イベント8.9%であったのに対して、対照群では293イベント12.2%であり、フェイスマスク介入が有効である結果となった。

BMJ 2024Jul 24 386 e078918

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC11267995/

 

2024年のパリ夏季オリンピックは強制的な要望的なCOVID対策はないとした。

オリンピックに出場した少なくとも40人のアスリートがCOVID-19の検査で陽性となった。

200mの決勝戦で銅メダルを取ったノア・ライルズは、レース後にトラックで倒れ、息を切らして胸をつかんでいた。COVID-19陽性であった。

オーストラリアの水泳選手ザック・スタブルティ・クックはCOVID-19に対する抗ウイルス薬を5日間内服していたことをInstagramに投稿している。

アメリカのCDCは、2024年のオリンピックに関して、ウェブサイトで次のような声明を発表した:「大規模な集まりは、呼吸器疾患のリスクの増加など、独特の健康リスクと関連しています。これらのイベントのためにパリに旅行する予定がある場合は、COVID-19を含む定期ワクチンと推奨ワクチンに関する最新情報を入手していることを確認してください。」

https://www.today.com/health/coronavirus/covid-olympics-2024-rcna164070

 

岐阜県は、令和6年7月25日新型コロナウイルス感染症は、例年夏と冬に感染の波が生じており、6月初旬から感染者数が増加しはじめ、7月に入ってから急増していることを示して、「新型コロナは、ただの風邪ではありません。若い方でも高熱や激しい喉の痛みが生じるほか、後遺症のリスクもあり、感染すれば、日常生活に大きく影響します。」と注意を呼びかけている。

https://www.pref.gifu.lg.jp/uploaded/attachment/408116.pdf

https://www.pref.gifu.lg.jp/site/covid19/380058.html

 

震災と感染症

 

東日本大震災後1ヶ月以内(2011年3月11日~2011年4月11日)に、仙台地区の東北大学病院に入院した患者1577例のカルテ検索をした。

震災後1週間までは外傷患者が多かった。感染症の入院患者数は、最初の1週間後に増加し、2010年の同時期の2倍になった。肺炎の症例が43%を締め、12%は破傷風を含む皮膚および皮下組織感染症であった。肺炎は、血清アルブミン値が低く、脳および神経系障害などの併存疾患を持つ高齢患者に多く見られた。喀痰培養では、肺炎連鎖球菌、Moraxella catarrhalis、Haemophilus influenzaeが多く見られた。尿中肺炎球菌抗原は20.5%で陽性であった。

Chest 2013 Feb 1 143(2)349-56

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0012369213600811

参:2010年3月1日~2011年6月30日までの気仙沼市内の入院肺炎かジャを受け入れている気仙沼市立病院、気仙沼市立本吉病院、大友病院に入院した18歳以上の肺炎症例の調査結果。

https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2015/PA03131_02

 

震災の2週間後に324カ所の避難所を訪問し、避難所の衛生管理と避難者の健康状態の調査をした。避難所として利用された施設は、公民館36%、学校32.7%、老人ホーム10.2%などであった。住民の多い避難所では、避難者同士の距離を1m異常確保することがより困難であった。水の供給が回復していない避難所では、食品の衛生的な取り扱いや調理師の手指衛生が十分ではなかった。避難者数50名以上宇の避難所では、保険担当者がいる避難所といない避難所で消化器症状の有病率に差が見られた(0.3%vs2.1%)。避難所の衛生状態や避難者の健康状態に重要な影響を与えた要因は、1.避難所の規模、2.給水状況、3.保険担当者の配置、の3つであった。

また、大規模避難所は物品が豊富であり、小規模避難所は情報の伝達が早かった。J infect Chemother 2014 Aug 20(8) 498-501

https://www.jiac-j.com/article/S1341-321X(14)00178-0/abstract

 

大型避難所では感染症(インフルエンザ)の集団感染が発生した。

Clin Infect Dis 2012 Jan 54(1)e5-7

https://academic.oup.com/cid/article/54/1/e5/367639?login=false

日内会誌 101:3090~3096,2012

https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/101/11/101_3090/_pdf/-char/ja

 

市民への感染予防啓発活動が重要であり、宮城県では感染予防ガイドブックを作成し、配布している。

http://www.tohoku-icnet.ac/cooperation/images/kyg_0228.pdf

 

23価肺炎球菌ポリサッカライドワクチン(PPSV23)の接種率は日本において2013年では25%、2016年の高齢者における全国平均は40.8%であった。この頃の米国では60%、英国では70%、オーストラリアでは54%であるのに比較してかなり低い。

日本公衆衛生雑誌 2018 65(1)20-24

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jph/65/1/65_17-041/_pdf/-char/ja

 

 

2019,2020年度の富山県におけるPPSV23定期予防接種実施率はそれぞれ13.7% 15.8%であった。

IASR vol 44 p5-6 2023年1月号

https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2606-related-articles/related-articles-515/11766-515r02.html

 

東日本大震災では、宮城県において発生直後から3週間程度の間に肺炎球菌性肺炎(PP)または侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)患者が多く発生した。罹患リスク比IRRは1.789であった。高齢者のPPあるいはIPDによる死亡に対してPPV23は有意にリスクを抑えた(OR 0.487)。

青柳哲史 H24-振興-指定-002報告書

 

それ以外の呼吸器感染症の原因としてRSウイルスが注目されている。

米国における高齢者ではインフルエンザと同等の入院期間と重症度が見られ、年間約17700人の入院患者、約140000人の死亡が示唆されている。

NEJM 2005 Apr 28 352(17) 1749-59

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa043951

 

米国1999年1月3日から2018年12月29日までに5030万件の死亡診断書があった。インフルエンザにおいては年間10171人の呼吸器系死亡として記載されていた。65歳以上の高齢者の10万人あたりの死亡はRSVでは14.7で、インフルエンザでは20.5であった。

JAMA Netw Open 2022 Feb 1 5(2) e220527

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35226079/

 

呼吸器外来の外来治療を求める60歳以上の成人を2004年から2005年と2015年から2016年にかけて2257例の症例を登録し、243例でRSVが同定された(Type A 121例、 Type B 122例).

47例19&%が重篤、155例64%が中等度、41例17%が軽症であった。入院29例、救急外来受診13例、肺炎23例が含まれている。重篤な転帰の相対リスクは75歳以上(RR 3.64)、慢性閉塞性肺疾患(RR 2.18)、うっ血性心不全(RR 2.38)の症例で有意に増加した。

Open Forum Infect Dis 2018 Nov 27 5(12) ofy316

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6306566/

 

10月1日から4月30日までの2回の呼吸器期(2015年から2017年)に35のカントリーで実施され、RSVによる入院成人患者(n=2042)での調査では、慢性心不全患者では10000人あたり26.7であるのに対し、非慢性心不全患者では3.3で、RR 8.1と有意に高かった。特に65歳以上でより高値であった。田尾竿津いいも414例20.3%が集中治療室に入院し、全体で101例4.9%が入院中に死亡した。

PLos One 2022 Mar 9 17(3) e0264890

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8906631/

 

 

2024年1月1日に発生した能登半島地震に対して日本環境感染学会は1月5日に避難所における感染対策マニュアルをHPにアップした。

http://www.kankyokansen.org/modules/news/index.php?content_id=537

 

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