クリニックからのお知らせ

2026.04.08

行動経済学から解きほぐす、患者の本音と対処療法 鈴木栄介先生

2026年3月19日 

演題「行動経済学から解きほぐす、患者の本音と対処療法~患者の治療ステージに即して考える~」

演者:株式会社メディカル・インサイト/株式会社イシュランン代表取締役 鈴木 栄介 先生

場所: ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル シルク

内容及び補足「

納得の医療を目指すためには、1.患者の声を可視化して伝える、2.インサイトのあるサービス戦略を生み出す必要があり、3.患者と医療側の共通認識の基盤を作る必要がある。

しかし残念なことに、医療プロバイダーと患者の間において、そこかしこにおいて医療高に対する認識の違いが生じている。

(医療プロバイダー:患者の健康管理や治療に直接関与する専門家や機関を指し、医師、看護師、薬剤師、リハビリテーション専門家などが含まれる。患者の健康状態を把握し、必要な医療サービスの提供する役割を担っている。)

何故このような認識の違いが生じるかを行動経済学の観点から考える。

 

行動経済学が何かを説明する前に、以下のことを考えてみよう。

最近引っ越してきた40歳代の独身男性のAさんについて

近所の人が「Aさんは何をしている人なのかは知らないけれど、ほろっとした見た目の通り、内気で引っ込み思案なタイプだね、基本的には他人に関心が無いのか、口数はあまり多くないなあ」「でも、たまに話しているのを聞くと、あの人は頭が良いと思う。物静かでいつも冷静で、もの後をと深く考える人って印象だよ」

と話していた。この情報からAさんは、大学の研究者と会社員のどちらを想像しますか?

会場参加者の意見は、ほとんどが大学の研究者との意見であった。

しかし、会社員の人口は数千万人であり、一方大学の研究者は数十万人であり、確率的には会社員である可能性が高い計算となるが、会場参加者の意見では、買う率の少ない大学の研究者という意見であった。

この現象は、人間の認知における思い込み、いわゆる「バイアス」が働いているために起こっていると考えられる。

何故このようなバイアスが起こるのか?

下図のaの女性はどのような気分かと聞かれるとすぐに判断できるが、bの34×56はいくつになるかと聞かれると、多くの人は、すぐには答えられない。

人間の脳には、2つのシステムが働いており、システム1は早い思考で、負荷が小さく、システム2は遅い思考で負荷が大きい仕組みである。(カーネマン:人間の意思決定の2つの認知プロセス:システム1とシステム2『ファースト&スロー』)

人間の脳は「楽をしたがる」ため、大抵はシステム1が有意となる。

通常の日常生活においてはシステム1の判断で問題は無いが、人間の文明があまりに早く進歩しすぎてしまい、人間の脳の進化が追いついていないために、

エラーを生じることがある。

例:「スナック菓子」や「ジューシーな肉」をみたら無性に食べたくなるのはシステム1の判断(生きていくためにカロリー摂取が必要)、ですが、カロリー摂取過剰になっている際には、システム2の判断では「カロリーを過剰に摂取することはダメなのでスナック菓子やジューシーな肉をとりすぎないようにしなければいけない」となる。

 

医療現場において、システム1で判断している際には、患者と医療プロバイダーでは、知識や認知の基盤が異なるためにすれ違いが生じてしまう可能性が増大する。

行動経済Behavior Sciencesを自分なり(鈴木栄介)に定義すると『人間の思考行動の“癖を見える化”する科学』ということになる

相田みつをの『にんげんだもの』に通ずる考えである。

 

COPD治療ステージ毎の課題の裏にある問題を行動経済学的に考えてみる。

① 治療行動の開始時の受診時において:適切なタイミングで受診しない

② 軽度の段階において:禁煙がうまくいかない

③ 中等度の段階において:充分なSDMになっていない

④ 重度の段階において:患者の自己判断で治療を中断する

といった問題点がある。

現状維持バイアス(Status Quo Bias):変化するよりも、今のままで痛いと感じる心理傾向のこと

特に困っていないし

受診するのが面倒だし

様子見でいい

検査で悪い結果が出るのが怖い

正常性バイアス(Normalcy Bias):個々の人々が自分たちが直面する可能性のあるリスクや危険を過小評価し、事態が悪化しないという楽観的な見方を維持しようとする思考傾向のこと

疲れているだけ

寝れば治る

いつものこと

これくらいの咳は風邪である

深刻な病気なわけがない

 

これらのバイアスに対する対応策としては、

  1. 今行動したらベネフィットがあることを認識させる。

   *治療法がある。

  1. 掘っていたら悪くなることを認識させる。

   *その症状だと××病のリスクがかなりある

   *××病だと生命にかかわる

等の説明をする。

 

『今すぐ10万円もらえる』と『1年後に11万円もらえる』場合どちらを選択するか?

現在の利益率で年率10%の商品はほとんどありませんので、投資として考える場合には『1年後に11万円もらえる』がより良い選択と思われますが、『今すぐ10万円もらえる』方を選ばれる人も多い。この選択には現在バイアスが働いているといえる。

 

現在バイアス(Present Bias):将来の利益や成果よりも、目の前にある即時の利益を重視する傾向。

例:遠くにある木よりも近くにある木の方が大きく見える。

喫煙行動においては、目の前の一服でもらえる快感が、将来の病状悪化のリスクよりも優先される。

これに対する対応策としては、喫煙による快感を減じる/なくすか、短期的に得られる他の利益を示す方法がある。

投与初期にはあまり効果が無いがそのうちよく効く薬剤Aと最初からある程度高い効果が期待できるが、最終的には薬効が薬剤Aより劣る薬剤Bがあった場合、多くの場合薬剤Bが選択される。

『即効性』は患者にとって価値が高いものである。

 

フレーミング(Flaming):情報や選択肢の提示方法によって、人の意思決定や判断が影響を受ける心理現象

「この手術は90%成功します」=「この手術は10%失敗します」

であるが、同じ内容でも、ポジティブな表現がネガティブな表現よりも受け入れやすい。

「価値のトレードオフ(特定の選択を優先すると、他の選択を偽性にせざるを得ない関係)」による情報の枠組み(フレーム)を提示する。

例:タバコを吸うことにより「ストレスの軽減・緊張が和らぐ・皆ですうのが楽しい」などのメリットがあるが、その一方で「わざわざ喫煙場所を探さなければならない・喫煙場所まで移動しなければならない・衣類などにタバコのにおいがつく・健康障害を起こす・味覚が鈍麻する」などのデメリットを提示する。

この際には、損失回避バイアスが働いている。

損失回避バイアス(Loss Aversion Bias)とは『利益を得るよりも損失を避けることにより強い動機を感じる心理現象』

1万円をもらううれしさよりも、1万円損する悲しさの方が大きく評価される。

ヒューリスティック(Heuristic):ある程度、正解に近いレベルの答えを導き出す方法で、行動経済学上で、意思決定の際、「綿密に計算や分析を行わない」「簡略化した思考で結論を出す」ことを意味している。

ひとが無意識のうちに行っている経験則や先入観によって効率よく答えを導き出す思考法である。

 

参:ヒューリスティックの主な5種類

    1. 代表性ヒューリスティック:「サイコロを3回振ってすべての数字が同じになる可能性は低い」「バスケットボールの選手は背の高い人が多い」といった無意識の判断。
    2. 利用可能性ヒューリスティック:利用しやすい経験に頼った判断をすること。例えば、慌ただしい夕方にスーパーマーケットへ行ったときに、要・不要を判断する時間も無く、陳列された商品の中から思い浮かんだ商品をカートに入れるような作業(いつも買っているというお経験が優先されて選択される)
    3. 固着性ヒューリスティック:最初に手にした情報を基に判断すること。例えば、テレビの今日の占いを信じたり、ひとり○個までとあれば最も多い個数を買ったりすることなど。
    4. シュミレーションヒューリスティック:それまでの経験や持っている先入観を用いて結果を推定する方法のこと。たとえば、「今まで上手にできたことがないから今回も失敗する」「どんなことがあっても、きっと最後はうまくいく」などと考えること。自身の失敗体験か成功体験のどちらが多い化によって、思いつく結果がネガディブかポジティブかに影響する。
    5. 感情ヒューリスティック:「自分にとってメリットがあるか」「自分の気分」「自分にとってリスクがあるか」など、自分自身の感情を基準に意思決定を行うこと。例えば、好きな人から声をかけられたらうれしく思い、身が手な人からの場合は、煩わしいと思うこと。

 

情報を得ようと検索した際に、

サイトの上の方だけ見て判断すること。

手近で楽な思考に頼りがちである。

理解しがたい/時間を要するものは価値が下がる。

患者の自己判断で治療中断を行う解決策として、過去の自分と比較し、薬を続ければ良い検査結果や楽な状態を維持できる(利得フレーム)、釜やめると結果が悪くなったり症状が酷くなる(損失フレーム)といったことを話し、記憶してもらう。

医療マーケティングで使える行動経済学の7つの概念

  1. 損失回避
  2. フレーミング
  3. アンカリングと参照点
  4. 現在バイアス
  5. 確証バイアス
  6. フリクション
  7. ヒューリスティック

https://www.medience.co.jp/forum/parts/pdf/forum2024_02.pdf

参:ナッジ

患者を動かすナッジ活用法 竹林正樹先生

 

参:

https://note.com/yusuke_motoyama/n/ne3c770cded2c

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