その他
2016.02.12
シトステロール血症
2016年2月5日 大手町サンケイプラザ
演題「突然の共通で搬送された25歳 女性」
演者: 東京都保健医療公社 豊島病院内科 平野秀典先生
内容及び補足「
25歳女性 既往歴:脂質異常症、神経性食思不振症 家族歴:冠動脈疾患・突然死なし
2012年の健康診断でLDL-C 300mg/dlの高脂血症を指摘されていたが、精査はされなかった。2013年12月、めまいで他院受診中に突然胸痛を訴えた。心電図で異常を指摘され、当院へ転送。血圧87/50mmHg、脈拍67/分・整、BMI 14.8であった。
心電図で下壁誘導にST上昇を認め、緊急冠動脈造影検査を施行され、右冠動脈中間部に完全閉塞を認め、PCIへ移行となり、血栓吸引、バルーン拡張術後、ベアメタルステント留置となった。Max CPKは2727 IU/L。入院中に硝酸剤が著効する安静時胸痛を認め、後日アセチルコリン負荷試験施行し、冠攣縮性狭心症と診断した。
アキレス腱は両側Ⅰ3㎜程度の肥厚を認め、家族性高コレステロール血症が疑われたが、家人には、LDL高値のFHに該当する人はいなかった。LDL受容体遺伝子検査では病原性変異は認められなかった。
捨てロールさん分画でカンペステロール 47.0μg/ml(基準値10μg/ml以下)、シトステロール45.0μg/ml(基準値3μg/ml以下)、と高値であり、ABCG8遺伝子でミスセンス変異を認め、シトステロール血漿と確定診断にいたり、rosubastatin 20mgでLDL-C 120㎎/dl と低下不良であったが、Ezemaibe 10㎎の併用投与でLDL-C 40㎎/dlと著明に改善した。
シトステロール血症
概念:常染色体劣性遺伝を摂る遺伝性脂質代謝異常の疾患であり、果物や野菜に含まれる植物ステロールの一種であるシトステロール排泄低下により、血中または組織にシトステロールが蓄積し、黄色腫や早発性冠動脈疾患を発症する疾患である。
病態:ATP結合カセットトランスポータ(ABC)G5/8の遺伝子変異が病態に関与している。
食物中に含まれるステロール類は、小腸のステロール輸送蛋白NPC1L1により吸収される。小腸上皮内でコレステロールはエステル化され、カイロミクロン形成の材料となるが、利用されない植物ステロールはABCG5/8を介して腸管内へと排泄される。
この排泄経路が障害されることにより体内に蓄積した食物ステロール(多くはシトステロール)は皮膚や腱などの組織に沈着し黄色腫を形成、また血管壁に蓄積して動脈硬化プラークを形成する。
http://www.phmd.pl/fulltxthtml.php?ICID=584606
症状:皮膚黄色腫、腱黄色腫、早発性冠動脈疾患を呈する。異常赤血球、溶血発作、血小板減少、関節炎などがみられることもある。
治療:
食事療法:食物ステロールを多く含む食品:植物性オイル、マーガリン、ナッツ、アボカド、チョコレートなどや貝類を極力避ける。
薬物療法:Ezebimibe、Colestimideの投与
外科的治療法:部分回腸バイパス術
それ以外:プラズマフェレーシス
診断基準:
A症状
皮膚黄色腫または腱黄色腫の存在
早発性冠動脈疾患(男性45歳未満、女性55歳未満)
B検査所見
血液・生化学的検査所見
血清シトステロール濃度 1mg/dL 以上 (本症患者では通常 10~65mg/dL)
C鑑別診断
以下の疾患を鑑別する。
家族性高コレステロール血症、脳腱黄色腫症
D遺伝学的検査
ABCG5/8遺伝子の変異
<診断のカテゴリー>
Definite:A-1およびB-1を満たしCの鑑別すべき疾患を除外し、Dを満たすもの。
Probable:A-1およびB-1を満たしCの鑑別すべき疾患を除外したもの。
Possible:A-1、2およびB-1を満たすもの。