川村所長の勉強会参加記録

2013.10.08

心電図の読影 山下武志先生

2013年10月5日 ザ・プリンスパークタワー東京
グローバル・スタンダードへ向かうわが国のβ遮断薬療法
演題「3秒で読む心電図」
演者:心臓血管研究所 付属病院長 山下武志先生
内容及び補足(含質疑応答)「心電図を読む際にまず、心構えとして、①放置する、②自分の力で片づける、③緊急に他人の力を借りる、の下を判断することを念頭に置く。此処で気を付けてほしいのは、③の判断をするのは心電図所見よりも患者さんの状態=バイタルサインの方が重要だということである。
心電図は12誘導が標準であるが、時間がかかり過ぎるので、基本的にはすべての誘導を見ない。無駄な時間をかけないで、必要な情報を短時間で心電図から読み取るためには、①何を知るために、②どこを観察し、③どのように判断するか、を自覚しながら心電図を見ることが必要である。
心電図から分かる情報としては、①血行動態、②心臓のポンプ機能、③愁訴の原因を類推することが挙げられる。
血行動態を見る方法としては、①患者さんの状態、②血圧、③心拍数、④不整脈の有無、⑤QRS幅がある。
ポンプ機能は胸部誘導のQRS幅で見る。
その次に症状がなければ心電図での判断はそこでおしまいであり、症状があれば、ST-T部分を見ることになる。
不整脈を見る際には、まず各誘導の洞調律波形が正常であることを確認する。その上でⅡ誘導で不整脈の有無を見る。
QRS幅が0.12秒未満なら上室性の不整脈であり、0.12秒(3mm)以上なら心室性の不整脈である。正常な脈や上室性の不整脈の場合心室の機能は保たれており、ポンプ機能には問題がないから緊急性はないと判断できる。変行伝導がある場合は、QRS幅が0.12秒以上でも上室性の事もある。
タンタンタタンと余分な脈が現れる場合が期外収縮であり、三連発以上であれば心拍を数えることができるので、その心拍数で、100~250を頻拍、250~350を粗動、350以上を細動と分ける。従って、不整脈は2×4の八通りに分類できる。

心電図で不整脈を分類しても患者の一側面を見ているだけで、患者を診ていることにならない。次に必要なことは、心電図異常の将来像を理解していることが必要なことになる。基本的には、心電図異常があっても血行動態が問題なければ何もする必要はその時点ではない。
除脈性不整脈において、以下の心電図を見てみよう。上段は無症状で洞機能不全症の患者でこの状態では死ぬことはないが、下段の失神症例は完全房室ブロックであり、一年後の予後が67%といわれており、至急ペースメーカーの挿入が必要である。

ポンプ機能により評価が分かれるが、ポンプ機能を見る指標としては、①血圧、②心拍数、③胸部レントゲン、④心電図12誘導があり、胸部誘導のQRS幅が左室の心機能を見る指標となる。
肢誘導は上下左右から胸部誘導は前後から心臓を眺めていることを念頭に置く。肢誘導はⅠとⅡ(心臓の興奮は上から下へと伝導していくのでこの誘導に変化が表れやすい)を胸部誘導はV5を中心に連続した波形になっているかどうかを見る。
異常なQRS波形とは①Ⅰ、Ⅱ誘導で下向き波形と胸部誘導での連続性がないもの、②V5のR波が26mm以上のものと考えられる。
心筋梗塞は各波形で考えるのではなく、連続した誘導での異常を考える。
疾患によっては、すべての誘導で異常を認めるものがあり、左室肥大、心筋炎、サルコイドーシスという疾患がそれに該当する。

STの上昇があれば心筋梗塞の可能性があり、低下していれば狭心症発作の可能性があるが、患者さんの臨床症状が大切である。というのも、STの異常があった場合の冠動脈疾患の確率は、男女、年齢で異なるが、その頻度の差を最もあらわしているのは、症状のあるなしであるからである。しかも狭心症の場合でも心電図に所見が出るのは70%に過ぎず、30%は出ない。

上室性期外収縮で変行伝導がある場合には、QRS幅が広がり、心室筋の障害がある場合と紛らわしくなる。右脚ブロック型のQRSはV1でM型、左脚ブロック型のQRSはV5でM型の波形が表れる。


AのV1はきれいなM型ではないが右脚ブロック型の心電図であり、R波が大きく上室性頻拍、BはS波が深い心室性頻拍である。
死心筋梗塞後の心室性期外収縮を治療したことにより、突然死のリスクが高い患者さんが死亡する危険が上昇する。

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