川村所長の勉強会参加記録

2013.10.07

見逃しのない大腸内視鏡検査のコツ 木庭 郁朗先生

2013年10月4日 けいゆう病院
演題「見逃しのない大腸内視鏡検査のコツ」
演者:山鹿中央病院消化器科部長 木庭 郁朗先生
内容及び補足(含質疑応答)「大腸癌の検査・治療においては上部消化管でも話したが、①存在診断、②質的診断(腫瘍性かどうか、悪性かどうか)、③量的診断(浸潤範囲)が大切である。
大腸鏡においては、回盲部までの挿入が前提となるため、手技的な困難、観察の重要性が挙げられるが、上部消化管内視鏡検査に比べ死角が多いのが問題である。
よりよく観察するためには、前処置が重要であり、ガスコン60mlの添加で泡がほとんどなくなるので、ぜひ追加して内服してもらってほしい。
患者さんの苦痛軽減ばかりでなく、挿入困難の予防、観察の容易さを保つために挿入時にできるだけ送気をしないように挿入していく。管腔は縦ひだの方向にあるので、その方向にスコープの先端を動かしていく。ファイバーの先端をうまく動かしながらヒダの奥へと入れていくのであるが、腸が伸展してしまうようなときは、腹壁を圧迫してもらう。恥骨の上の部位で、内視鏡で見ていて腸壁が近寄ってくるところを圧迫してもらうと入りやすい。送気はCO2で行うと、術後に吸収されやすいため、患者の負担も少なく、翌日の内視鏡検査が必要な時にも対応しやすい。
観察においては、ファイバーが抜けてしまって見落とさないように、飛騨の方に先端を振って壁を軽く押さえつけるようにして観察する。空気で大きく広がらない様、少なめの早期で観察し、奥の空気を吸引しながら戻ってくる。盲腸から横行結腸までは仰臥位で観察し、横行結腸から下行結腸までは右45°傾き左前(脾彎曲部を浮かして空気を入れる体位)で観察し、下行結腸から直腸までは左側臥位で観察すると観察しやすい。前処置が悪い例では、液や便汁を吸引すると、便の一部が急咽喉に張り付いて観察困難になることが少なくないので、最初の体位で充分に観察した後、180°身体を動かすようにして反対側を観察するようにする。上行結腸や直腸においては、ファイバーを反転して観察することが必要であるが、慣れるまでは無理をしないでほしい。観察がし辛い部位においては鉗子を用いて、腸壁やひだを圧迫して観察する方法もある。
観察においては、腺腫の粘膜は①淡い発赤、②顆粒状の変化、③浅い陥凹、④多結節上表面構造が挙げられる。高度な発赤や、白斑として観察される部位は腺腫や上皮内癌であるので注意が必要である。Mealanosis Coliと言われる長期下剤を内服している腸の色素沈着がある際には、腺腫部分には色素沈着がないので、白く観察される。NBIでの観察においては、浅い血管は茶色く映り、深い血管は緑色に見えるので、病変部の深さを想定できる。異型性が見られる部分はBrownish areaとなてみられるが、近年いろいろな診断方法が提唱されている。便や黄色い便汁もNBIのみで観察するとBrownish areaと見えるので、通常光でも観察するとよい。

自分は古いSano’s Classificationを利用している。

平坦・陥凹型の病変の見つけ方であるが、領域性のある発赤、血管透見像の消失、退色性変化を見逃さないようにすること、ヒダの変形や中断、ヒダの中断と淡い発赤、ヒダの腫大・変形を見落とさない様に観察することが大事である。あと粘液の付着が残存している場合にも注意が必要である。
近年話題になっているsessile serrated adenoma/polyp(SSA/P)は,右側結腸に多く認められる。HPと異なり,多くが5mmを超える大きさを呈し,10mmを超えるものもみられる。典型的には,やや境界不明瞭な平坦な白色調広基性ポリープ病変として認められるが,よりpolypoidな形態を呈する場合もある。明らかな腫瘍とは判定できない鋸歯状病変で、陰窩の拡張、陰窩の不規則分岐、陰窩底の水平方向への変形(逆T字)が特徴である。
自験例であるが1212病変のEMR(粘膜切除)において、1077病変はTublar adenomaまたはCarcinomaであり、135病変がSerrated lesionであり、86病変はHyperplastic polypであったが、40病変がSSA/P病変であった。この40病変のうち38病変に粘液の付着を伴っており36病変では表面の分葉溝を認めていた。
症例を送っていただく際に一つ念頭に置いてほしいのは、粘膜切除を考える症例においては、生検をせずに紹介してほしい。生検後の瘢痕治癒が生じたため、粘膜を拳上できなくなる病変があるためである。

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