呼吸器系

2013.09.24

風邪の診かた 手稲渓仁会病院 岸田直樹先生

2013年9月17日 横浜市健康福祉総合センター
演題「以外に教わらなかった風邪の診かた―気道症状編―」
演者:手稲渓仁会病院総合内科・感染症科 岸田直樹先生
内容「以外に風邪の定義は、難しく成書においても断定的に表現しているものはない。あえて言うと『self-limitedなウイルス感染症で多くは上気道感染のことを言う』となると考える。患者さん自身が受診する際に『風邪をひきました』と言ってくるし、医者の方としても『熱だけや強い倦怠感を風邪』と言ってしまっている場合もある。
風邪を診るためには、風邪に関する知識を整理する必要があり、①いわゆる風邪:ウイルス性上気道感染症を知る。②風邪という主訴に紛れ込む可能性のある風邪ではない疾患パターンを理解する必要がある。
医師の役割としては
① 風邪症候群に紛れ込む疾患の鑑別
② 必要例に限定した抗菌薬の処方
③ 対照的治療による症状軽快へのサポート
が挙げられる。
先ず風邪症候群の病型を考えてみよう

1. 典型的な”風邪”型は鼻炎症状(クシャミ、鼻水、鼻詰まり)、咽頭炎症状(咽頭痛やイガイガ感)、下気道(咳:喀痰の有無は問わない)症状がある。これらの三領域にわたる多彩性は発熱の有無にかかわらずウイルス感染の特徴である。

この風邪を起こす原因ウイルスとしては

急性に、咳・鼻汁・咽頭痛の三症状が等しくそろっている時には、間違いなくウイルスによる”風邪”と言って間違いはない。細菌感染は原則として一つの臓器に一種類の菌の感染であるからである。こういった症例において大切なことは治療が必要な細菌感染を見極めることである。ただし、細菌感染があってもすべての症例において抗生剤の治療が必要であるわけではない。というのも、上気道においては、多種雑多な菌が存在しており、自然と時間経過の中で感染を起こしている菌を排除できるからである。
2. 鼻症状メイン型(鼻炎型)は鼻炎症状(くしゃみ、鼻水、鼻詰まり)が症状の主体で、発熱の有無は関係ない。その上膿性鼻汁があっても細菌感染とは限らないことが重要である。というのも鼻汁は『水様透明⇒粘っこい粘液性⇒黄色』と経過して軽快することが多く、鼻汁や鼻汁がのどに来て痰として出す喀痰の黄色化のみでは、抗生剤の使用の適応とはならないからである。
この状況下においての鑑別疾患として挙げられるのは、アレルギー性鼻炎と急性細菌性副鼻腔炎がある。
アレルギー性鼻炎の特徴としては、視診で鼻粘膜が蒼白であること、朝方クシャミ鼻水があるけれど日中は減少することが多く、季節性がある。可能であれば鼻汁中の好酸球数などのチェックが有用である。
細菌性副鼻腔炎の臨床像は以下のものが挙げられる。* 症状が二峰性、* 片側性の頬部痛、* うつむいたときに前頭部もしくは頬部の重い感じ、* 上歯痛、* 膿性鼻汁の病歴(ある程度の期間の膿性鼻汁)、* 身体所見で膿性鼻汁の確認、* 血管収縮剤や抗ヒスタミン薬に対する反応が悪い、* 後鼻漏、がある。


細菌性副鼻腔炎に特徴的な症状は、述べたようにいくつかあるもLiklihood ratio(尤度比)は2前後と低く、決め手にはならない。検査としてもレントゲンは感度が悪く、CTやMRIでは感度が高く特異度が低すぎて偽陽性所見が多く悩ましい限りである。この細菌性副鼻腔炎のうち抗生剤の治療が必要なケースは海外の成書においては①非常に強い片側性の頬部の痛み・腫脹、発熱がある場合と、②鼻炎症状が10日以上持続し、かつ胸部の片側性の痛み・圧痛と膿性鼻汁が見られる場合とされている。日本においては10日経過を見ることは現実的ではないので、5日程度と考えている。
原因菌としは、肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラキセラが多く、治療としては肺炎と同じで、First Choiceはアモキシリンとしてよい。耐性菌がいても、副鼻腔はもともと無菌状態ではないので、ある程度の菌数が減少すれば、耐性菌であっても治癒してくる。しかも、感冒後の副鼻腔炎で細菌性は0.5~2.5%とと言われており、ほとんどが抗菌薬は不要である。
3. 喉症状メイン型(咽頭痛>咳、鼻水)の特徴としては、咽頭痛が主症状で発熱の有無は関係ない。所見としては、咽頭の発赤、咽頭後壁のリンパ濾胞の腫脹があり、原因の大半がウイルス性であり、自然治癒する。
この症状の症例で鑑別が重要な疾患として以下のものがある。
① A群β溶血性連鎖球菌性咽頭炎(急性咽頭炎の約%を占める)
② 扁桃周囲膿瘍
③ 急性喉頭蓋炎
④ 亜急性甲状腺炎
それぞれを見てみよう。
*連菌性咽頭炎の診断基準としてCentorの診断基準:①38℃以上の発熱、②圧痛を伴う前頚部のリンパ節腫脹、③白苔を伴う扁桃発赤、④咳嗽なし(陰性所見)、がある。
年齢を考慮する(Melsaac modification)と 15歳未満で+1、45歳以上で-1ポイントするのが現実的である。これにより点数化して評価したものが以下の表になる。

4 point以上ならすべてに抗菌薬治療を開始し、1 point以下ならば簡易キットによる検査もせず、抗生剤の治療もせず、2~3 pointならば、簡易キットによる検査をして、陽性なら公金宅の治療を開始することが推奨されている。簡易キットを使用した上記診断基準では10~20%はundertreatmentであるが、大人でこの程度であれば無害と考えられている。
ただ、前頚部のリンパ節の触知は困難であり、圧痛として認められることが多いこと、38℃を超える前の早期受診も多いこと、白苔を認めるケースは半分にも満たないことが問題点であり、4~5 pointでも簡易検査では半数にしか陽性とならない。
見落としを少なくするためのコツとしては、「鼻汁がない」というのも1点と考えてみること、ウイルス性疾患に比べ、溶連菌性咽頭炎は咽頭痛が強く変則であることが主であり、嚥下時の強い痛みで、食事で改善しない場合は細菌性を疑う。また、咳嗽時に増強する咽頭~喉頭部の痛み、起床時に強い痛みや、食事後に警戒する咽頭痛はウイルス性を疑う。
治療に関してはペニシリンを10日間投与が薦められているが、これはリウマチ熱の予防が念頭にある考えである。アモキシリン500mg×3回/日×10日から500mg×2回/日×10日の治療や、1000mg×1回×10日も試みられている。
扁桃周囲膿瘍では、激しい片側性の咽頭痛・嚥下痛があり、食事で改善せず、開口障害も認められる。
急性喉頭蓋炎は緊急疾患であり、嗄声・喘鳴・呼吸困難を伴ったり、横になれなかったり、Sniffing position(嗅ぐ姿勢)を取っていたり、見た目でとても重症感があり、つばも飲み込めなくて、涎を垂らす状況である。
亜急性甲状腺炎では、甲状腺に圧痛があり、痛みの部位が移動し、耳の下に痛みがある。
画像的には
細菌性の白苔(右)と異なり、伝染性単核球症の白苔(左)はべろっと一枚の布のような感じが多い。

下の図のように粘膜がえぐれている場合にはウイルス性の変化を疑う。

4. 咳症状メイン型(咳>鼻水、咽頭痛:気管支炎型)は、咳嗽が主症状で、喀痰や発熱の有無は問わず、90%以上が非細菌性のものであり、5~10%にマイコプラズマ、クラミジア、百日咳といった疾患が見られる。ウイルス性気管支炎との鑑別で大切な疾患としては、①肺炎、②抗菌薬治療が必要な細菌性気管支炎、③慢性咳嗽症候群がある。
基本的な考えとしては、肺に基礎疾患がなければ『肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、モラクセラ・カタラーリスが急性気管支炎を起こすというエビデンスはない。
肺炎を鑑別するためのレントゲン検査の適応としては、基礎疾患のない非高齢者においては、バイタルサインの異常(脈拍数≧100/分、呼吸数≧24/分、体温≧38℃)や呼吸音の左右差がなければ、通常は不要であるとされている。
気管支肺炎と肺炎の鑑別のツールとしてDiehr診断ルールというのがある。

のどの痛みが―1となっているのは細菌感染が原則として一つの臓器に一種類の菌の感染があるからであるが、喉の痛みとして咳嗽時の痛みであれば、咽頭炎ではなく肺炎を疑う必要があるし、悪寒、寝汗も肺炎を疑う兆候の一つである。
レントゲン検査は肺炎の診断には有用な検査ではあるが、前肺炎の7%で初期においては肺炎像が見えず(脱水があると、浸潤影は出にくくなる)、肺に基礎疾患がある人においては、気管支に肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、モラクセラ・カタラーリスが感染を起こしており、抗菌薬の治療が必要な場合もあるので要注意である。
従って、肺に基礎疾患がなければ、成人の気管支肺炎で38℃以上の発熱はなく、悪寒を伴う発熱で咳がある症例や二峰性の症状経過がある場合には、レントゲンを撮らなくて(レントゲン検査所見が陰性で)も肺炎を疑うべきである。
また、高齢者や肺に基礎疾患のある人では38℃以下の微熱であっても、気道症状に寝汗を認めれば肺炎を疑うべきである。

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