川村所長の勉強会参加記録
2013.09.24
認知症の早期発見と予防への取り組み 浦上克哉教授
2013年9月19日 横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ
演題「認知症の早期発見と予防への取り組み ~鳥取方式の紹介~」
演者: 鳥取大学医学部保健学科 生体制御学講座環境保健学分野教授 浦上克哉 先生
内容「2年前には200万人、昨年は300万人いると言われていた認知症患者さんは今年は462万にと報告された。徐々に増加していることだけによるのではなく、認知症の診断がよりされるようになったからでもある。
より簡便に認知症を診断するために、この簡易スクリーニング検査では、言葉の遅延再生(3つの言葉)、時間見当識(今日は何日?何曜日?)、立体の模写(立方体透視図の模写)が有効である。
しかし、医師がこの検査を行うには時間のロスが問題点となってくる。
そこで、短時間で認知症患者さんのスクリーニング検査機器として、Mohs博士により開発されたアルツハイマー病の評価スケールであるAlzheimer’s Disease Assessment Scale(ADAS)を、タッチパネルを用いて簡便に検査出るようにした機械TDAS-1000を日本光電とともに開発した。
この検査は15点満点であり13点以上を正常、12点未満を認知症疑い例としたところ、
と図のような結果となり、感度96%、特異度97%であった。
認知症患者さんを診察治療する際に、患者さんの話を聞かず、つい家族と話し合って治療方針を決めがちであるが、実際、認知症患者さんにも感情や心身の力が残っており、すべての物事を忘却しているわけでもない。従って本人の話を聞くことも非常に大切なことである。
普段一緒には住んでいないある患者の家族から「最近食欲がなくて全然食べないので体重が減ってきているんです」との相談があり、悪性疾患の合併を疑い、内視鏡やCT検査などいろいろな検査をおこなったが異常が見つからなかった。ご本人に聞いてみると「弁当が不味くて食べたくないので、あまり食べていません」との返答があり、家族でフランス料理を食べに行ってもらったら、家族の中で一番多く食べたという事例がある。一人暮らしを心配し、食事を宅配弁当にしたところ、味に慣れてしまったころから食べる量が減った事実に気づかされた。本人にいろいろと聞くことが重要である。
認知症の予備軍も増加してきていることもあり、認知症の進行予防も必要であるが、発症予防も重要な課題である。
2004年度から鳥取県の中央にある琴浦町で認知症予防教室を開催した。先ずスクリーニングとして、数字の遅延再生、日時の見当識、図形認識の三つの検査を4分ぐらいで行い、15点満点中13点以下の人には、先述したTDASを行って7~13点を軽度認知障害(MCI)、14点以上を認知症の疑いがある人と判定し、神経内科医が診察、結果を説明して、精密検査が必要な人には専門医療機関への紹介を、MCIの人には「ほほえみの会」への参加を勧めた。ほほえみの会は、血圧測定、体操や音読、計算などのプログラムを盛り込んだ認知症予防教室である。
現在Amyloid precursor proteinをβセクレターゼが分解し、さらにγ―セクhttp://www.rivastach.jp/magazine/no6.pdfレターゼが分解してβアミロイドが作られる。βタンパクが凝集し沈着して老人班が形成される。タウのリン酸化および蓄積により神経原線維変化が起こり神経細胞死を来す。現在アミロイドタンパクを溶かす薬物やワクチン、βセクレターゼモデュレイター、βセクレターゼインヒビターなどの開発が行われている。
あまり知られていないが、アルツハイマー病においては記憶が障害される以前に嗅覚が障害さる。この論文では、アルツハイマー病14人中12人において嗅覚障害が認められたとしている。
腐った食品に気付かなくなることが、アルツハイマーの初期兆候としてとらえることができる。この嗅覚障害に対してアロマテラピーを行うことにしてみた。
日中はローズマリーとレモンの配合が良く、夜間熟眠するためにラベンダーとオレンジの配合が良いことが分かった。個人で調合することが困難だと考え、ブレインメイトという会社からリ・ブレインというアロマオイルを発売している。