呼吸器系

2024.10.02

重症COPD治療における気管支鏡的肺容量減量術 峰下昌道教授

2024年9月30日 

演題「重症COPD治療における気管支鏡的肺容量減量術 ~適応・治療手技・合併症対策」

演者:聖マリアンナ医科大学呼吸器内科 主任教授 峰下 昌道  先生

場所: かながわサイエンスパーク(KSP)

内容及び補足「

肺は下図のように右3葉、左2葉に分かれている。

https://shinshu-surgery.jp/thoracic/treatment/lung_anatomy.php

胸壁を動かしたり、横隔膜を上下させることにより胸腔内の圧力を変化させ呼吸を行っている。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は主として喫煙により引き起こされた炎症で気管支が細くなり、肺胞が破壊され肺気腫が生じるために、吸った空気をスムーズに排出できなくなる疾患である。

気管支バルブ治療情報サイト

https://blvr.jp/

 

禁煙、吸入薬、理学療法等で治療するが、進行すると呼出できなくなった空気により気腫が膨張して肺内を占拠し、呼吸運動の際の筋肉や横隔膜に大きな負担をかけ、息苦しさが増悪する。

COPD診断と治療のためのガイドライン2022が日本呼吸器学会COPDガイドライン第6版作成委員会編集の元にメディカルレビュー社から刊行されている。

https://www.jrs.or.jp/publication/file/COPD6_20220726.pdf

 

種々の治療にもかかわらず、年齢を重ねる毎に肺機能は低下し、労作時の息切れなどの症状が徐々に増悪する。

https://koshii-c.sakura.ne.jp/copd2022.html

 

重症COPD症例には肺移植や肺容量減量手術(Lung Volume Reduction Surgery:LVRS)が考慮される。

胚移植は60歳未満が適応であり、ドナーも少なく、適応となる症例は非常に少ないのが現状である。

COPD進行例ではAir trappingのため気腫内にため込まれた空気が呼出できず、このため腫瘍状に肺内のスペースを占拠することで、有効な換気スペースが減少するだけでなく呼吸活動を行う呼吸筋に大きな負担を強いることになる。

重症肺気腫症例のレントゲンでは、肺の過膨張のために横隔膜は下に圧迫され、これ以上空気が吸えない状態となっている。

LVRSは換気機能をほとんど失っている、単にスペースを占拠するだけの存在となった機首部分を切除し、残った肺の呼吸を容易にすることを狙った治療で、適応基準を満たした場合の成績は、内科的治療と比較し生命予後は良好であるが、開胸手術の体への負担が重く、術合併症の頻度も高く、日本では年間20~30件程度の実施にとどまっている。

 

気管支バルブによる気管支鏡的肺容量減量術(Bronchoscopic Lung Volume Reduction:BLVR) 気管支バルブを用いたBLVRは開胸手術を行うことなく、LVRSと同様に肺容量減量を得る手段として開発され2023年12月より保険診療が開始された。

Air trappingされている肺につながる気管支に、空気の流れを制限する一方弁を持った小さな気管支バルブを植え込む。息を吐くと気管支バルブが開き、肺内にたまった空気が出て行き(オレンジの矢印)、息を吸うと気管支バルブが閉じて空気が肺の中に入らない(緑の矢印)ようにする仕組みである。

気管支バルブ治療情報サイト

https://blvr.jp/

 

左側治療前の写真。赤枠の部分は気腫が著名な右常用で、右側気管支バルブ治療後には和美儀のように右枠の右常用は無気肺となり縮小し、賀陽の選挙部位が拡大し、横隔膜も上昇し、空気を吸いやすい状態に改善している。

気管支バルブは、吸気時には気流を閉塞し、呼気時には末梢気管支からの空気や粘液の流出を可能にする一方向便の機能を有するものである。気管支内に留置することで治療対象の肺をしぼませ、容量を減らし切除と同様の効果が期待できる。気管支バルブでの治療効果を得るためには、気腫が進行し機能が低下した肺葉を選び、その肺葉へほかの肺からの側副換気がないことを確認する必要がある。側副換気があると、バルブを挿入しても隣の肺葉から空気が入り込み、治療対象の肺葉をしぼませることができないからである。

側副換気の無有無に関してはCT画像で肺葉と肺葉の境界(葉間胸膜)がしっかりしていることを確認することで推定可能である。

実際に側副換気があるかどうかは、気管支バルブ留置術時にチャーティス装置を用いて評価する。

https://www.mariannna-kokyuuki.com/medical/doc/copd.pdf

 

LIBERATE Study

128例の気管支バルブを留置した群と64例の標準治療群の非知念語の結果を比較した米国中心に行われた研究では、1秒量が治療前の15%以上上昇した患者は、バルブ群で47.7%、標準治療群で16.8%と有意にバルブ群で優れていた。

 

Am J Respir Crit Care Med 2018 198 1151-1164

https://www.atsjournals.org/doi/10.1164/rccm.201803-0590OC

 

対照群がないオランダの研究であるが、気管支バルブ治療効果は一秒量FEV1、残気量RV、6分間歩行距離6MWD、SGRQ別に6、12、24、36ヶ月毎に測定した結果が示されており、通常の肺気腫患者の変化夜も緩やかである。

ERJ Open Res 2022 8:00235-2022

https://pure.rug.nl/ws/portalfiles/portal/258418825/00235_2022.full.pdf

 

気管支バルブ留置術に伴う重篤な有害事象は気胸が20~30%の症例で報告されている(バルブ挿入側の肺に多い、6~12ヶ月間での対照群の気胸発生率は0%に対して治療群の平均の発生率は27.8%)。

気胸の80%は術後3~5日間に発症するため、術後1週間程度は入院の上、注意深く経過観察する必要がある。また、退院後も急速な呼吸困難、共通等が生じた場合は気胸の可能性を考え、速やかに医療機関に連絡、受診してもらう必要がある。気胸が生じた場合には胸腔ドレナージが必要となる症例が多いが、少数例でバルブの除去や手術が必要となる症例もある。

https://www.mariannna-kokyuuki.com/medical/doc/copd.pdf

https://www2.idac.tohoku.ac.jp/dep/surg/blvr/2/#:~:text=Zephyr%E6%B0%97%E7%AE%A1%E6%94%AF%E3%83%90

 

Lung Volume Reduction Coilを用いた気管支鏡的肺容量減量術

主要アウトカム評価項目/Primary outcomes

1.治療終了3ヶ月後の1秒量(FEV1)及び6分間歩行の改善

2.安全性の評価

片側治療開始時から治療終了後3ヶ月以内に生じた下記①~⑤の治療関連の重篤な有害事象

①7日間以上リークが継続する気胸

②入院あるいは入院の延長を必要とする急性増悪及び呼吸器感染症

③24時間以上の人工呼吸管理が必要な呼吸不全

④喀血(300ml以上、あるいは輸血を要する症例)

⑤治療関連の死亡

 

選択基準/Key inclusion criteria
①同意説明書を読み、十分理解した上で署名できる症例
②同意日の年齢が35歳以上の症例
③CT上、両側の肺気腫の所見を有する症例
④気管支拡張薬吸入後の一秒量(FEV1)が予測値の45%以下の症例
⑤全肺気量が予測値の100%を上回り、残気量が予測値の175%以上の症例
⑥呼吸困難の程度がmMRC grade 2*以上の症例
 * mMRC grade 2:息切れがあるので、同年代の人よりも平坦な道を歩くのが遅い、あるいは平坦な道を自分のペースで歩いている時、息切れのために立ち止まることがある。
⑦本人が8週間以上禁煙していると申告した症例
⑧呼吸リハビリテーションを導入され、治療を継続している症例
⑨適切なワクチン接種を受けている症例(インフルエンザ、肺炎球菌)

 

除外基準/Key exclusion criteria

①肺気腫の程度が高度(凡そ80%以上)でLVRCで巻き込む組織が乏しい症例

②整形外科的疾患などで歩行能力に障害がある等、6分間歩行評価ができない症例

③気管支拡張薬によりFEV1が20%以上(当初のFEV1が1?未満の症例では200ml以上)の改善を示す症例。但し研究担当者が気管支喘息の合併を除外できる症例は治療可。

④肺拡散能(DLco)が予測値の20%未満の症例

⑤室内気での血液ガス所見がPaO2 45Torr未満、あるいはPaCO2 55Torr以上の症例

⑥同意取得の前1年間に3回以上の呼吸器感染による入院を繰り返している症例

⑦収縮期右心室圧50mmHg以上の肺高血圧症例

⑧6分間歩行距離が140m以下の症例

⑨研究期間中の生存に影響を及ぼすような重篤な併存症を有する症例

⑩妊娠(予定)あるいは授乳中の患者

⑪局所麻酔あるいな全身麻酔下の気管支鏡による処置に耐えられない症例

⑫臨床上明らかな気管支拡張症

⑬片肺の1/3以上の容積を占める巨大ブラ

⑭過去に肺容量減量術(BLVR含む)や肺葉切除を受けた症例

⑮同意取得の前30日以内に薬物あるいは他の治療器具に対する治験に参加した症例

⑯プレドニン換算で20mg/日以上のステロイドを服用している、あるいは慢性炎症性自己免疫性疾患により高度の免疫抑制療法を受けている症例

⑰抗血小板薬、あるいは抗凝固薬治療中で治療前7日間の休薬が不可能な症例

ニッケルや気管支鏡治療の際に用いる薬剤・器具にアレルギーのある症例

⑲α1アンチトリプシン欠乏症

⑳その他研究担当者が除外すべきと判断したもの

https://center6.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr.cgi?function=brows&action=brows&recptno=R000026967&type=summary&language=J

 

76歳男性, 2009年にⅣ期の慢性閉塞性肺疾患と診断され, 外来にて在宅酸素療法や理学療法を含む内科的加療を継続してきたが, 呼吸困難は持続していた。右下葉にLVRCを12個(100mm×8, 125mm×4)留置し, 2ヶ月後に左下葉に11個(100mm×4, 125mm×7)留置した。

両側留置3ヶ月後, 6分間歩行距離は75m延長し, Modified Medical Research Council dyspnea scaleは3から2へ改善した。

 

気管支学 2019 41 78-84

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsre/41/1/41_78/_pdf/-char/ja

 

32例(GOLD3=19COPD患者に対して高解像度CTスキャン分析を行った。1例では標的葉を特定できなかったが、8例では標的葉は≧80%の完全性で亀裂に囲まれていなかった。13例の患者では>95%の完全性で観察され、残りの10例の患者は80%~95%の亀裂完全性を持っており、側副換気の評価の候補と考えられた。

高解像度CT検査を行い、亀裂の完全性が<80%ならEBVによる治療の対照者ではないと見なせる。亀裂の完全性が80%~95%の症例ではChartis測定を実行してCVがないことを確認する必要があり、亀裂の完全性が>95%であればEBV治療を直接行うことができるといえる。

Intern Med 63 2269-2275 2024

https://www.jstage.jst.go.jp/article/internalmedicine/63/16/63_2250-23/_pdf/-char/ja

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