川村所長の勉強会参加記録

2016.07.05

パニック障害 海老澤 尚先生

2016年6月21日(火) 
演題「うつと睡眠障害」
演者: 医療法人和楽会 横浜クリニック 海老澤 尚 先生
場所:ホテル横浜キャメロットジャパン
内容及び補足「
パニック障害:
突然生じる予期しないパニック発作によって始まる。本能的な危険を察知する扁桃体が活動しすぎて、必要もないのに戦闘態勢に入り、呼吸や心拍数が増加し、その症状を自覚する。その後、その発作が再発するのではないかと恐れる『予期不安』と、それに伴う症状の慢性化が生じる。さらに長期化するにつれて、症状が生じる場面を回避するために生活範囲を限定する「広場恐怖症」が生じる。

診断基準:DSM-V
A.繰り返される予期しないパニック発作。パニック発作とは、突然、激しい恐怖または強烈な不快感の高まりが数分以内でピークに達し、その時間内に以下のうち4つ以上が起こる。
1.動悸・心悸亢進・心拍数の増加
2.発汗
3.身震い・震え
4.息切れ感・息苦しさ
5.窒息感
6.胸痛・胸部不快感
7.嘔気、腹部不快感
8.めまい感・ふらつく感じ・頭が軽くなる感じ・気が遠くなる感じ
9.寒気・熱感
10.異常感覚(間隔麻痺・うずき感)
11.現実感消失・離人感(自分が自分でない感覚)
12.抑制力を失う恐怖・「どうにかなってしまう」ことに対する恐怖
13.死ぬことに対する恐怖
B.パニック様の症状や、その他のたえられない当惑するような症状が起きた時に、脱出は困難で援助が得られないかもしれないと考え、これらの状況を恐怖し回避する。
C.広場恐怖症の状況は、ほとんどいつも恐怖や不安を誘発する。
D.広場恐怖症の状況は積極的に避けられ、仲間の存在を必要とし、強い恐怖や不安を伴って耐えられている。

100人に一人ぐらいの頻度で診られ、欧米では女性が男性よりも2倍ほど多いが、日本においてはほぼ同数で、男性では25~30歳にピークがあり、女性は35歳前後の発病が最も多い。
多くの人では1回目の発作から1週間以内に2回目の発作が起こり、週に数回認めるようになる。

予期不安:
パニック発作が起こると患者にとっては生命の危機をひしひしと感じられるものであるので、発作に対する恐怖感は計り知れないほど強く、しかも不意に突然起こるので、いつあの恐ろしい発作が起こるのかという不安感を常に心の底に持ち続けることになる。このためリラックスした気分にはなれず、知らぬ間に行動は防衛的になり、行動範囲が狭くなります。その典型例が広場恐怖です。
予期不安を分類してみると次のようになります。
・発作症状そのものに対する恐れ
・発作により病気になるおそれ
・発作により死亡する恐れ
・発作により失神する恐れ
・発作により気がくるってしまう恐れ
・発作により事故を起こす恐れ
・発作を起こしても助けてくれる人がいないことに対する恐れ
・発作を起こした場所からすぐさま逃げ出せない恐れ
・発作により人前で自分が取り乱してしまう恐れ
・発作により人前で倒れたり吐いたり失禁したりする恐れ
・発作を起こして人に迷惑をかける恐れ

広場恐怖:
パニック発作が起こることを恐れ、助けが求められない場所やすぐに逃げ出すことのできない場所にいることに不快を強く感じたり、またはそのような場所を避ける状態。パニック発作を起こした患者の3/4に程度の差はあれ広場恐怖を認める。
新幹線、航空機、地下鉄、電車、トンネル、エレベーター、橋などの狭い場所や倉庫や窓のない部屋といった閉鎖空間、美容院、歯科医、会議、行列に並ぶといった束縛された状態などがあり、高速道路や渋滞を恐れたり、自宅から遠く離れた場所や、家で一人での留守番が苦手な人もいます。

軽症:外出には多少不安を感じて、どうしても必要な場所にだけ行く
中等症:一人で外出できないことが多く、行動に制限がある
重症:ほぼ完全に家にいて、付添なしでは外出できない
パニック発作があるうちは広場恐怖はよくなることはめったになく、発作が消失すると約半数の人は自然に広場恐怖がなくなる。イミプラミンが使われますが、スルピリドも有効。

患者・家族のための10章
1 パニック障害は、患者当人には死を決意するほどのつらい病気であるが、決して死を招くような病気ではないことを確認する
2 パニック障害は気持ちの持ち方が悪いから起こる病ではない。ましてや、都合が悪いのでわざと起こしている病気でもないことを確認する
3 パニック発作が起こってもあわてふためかない。かえって不安が増強するので、静かに慎重に対処する
4 パニック障害の治療の根本はまず発作を完全に消失させること
5 発作が起きてから薬を飲んでも効果発現時には発作は終わっているので意味がない。発作を起こさないようにきちんと服薬することが肝要
6 広場恐怖に対しては、どんどん薬を使い、どんどん行動する
7 「併発うつ病」は早期発見、早期治療
8 パニック障害は完全にコントロ-ル出来る病気であることを確認する
9 パニック障害は頑固な病であるので、勝手な断薬は禁物
10「パニック障害」という診断名を使う専門医に治療を受けること
貝谷久宣著「不安・恐怖症 -パニック障害の克服」講談社、1996より

治療:
三環系抗うつ薬:イミプラミン
SSRI:ジェイゾロフト、パキシル
抗不安薬:アルプラゾラム、ロラレパム、クロナゼパムなどのベンゾジアゼピン系薬剤
レクサプロ、メイラックス、ドグマチール、ワイパックス
認知・行動療法

みんなのメンタルヘルス総合サイト パニック障害・不安障害

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