脳神経系

2023.10.19

急性期から維持期まで続く脳卒中治療の現状 竹川英宏教授

2023年8月31日 

演題「急性期から維持期まで続く脳卒中治療の現状 ~神経障害性疼痛を中心に~」

演者:独協医科大学病院脳卒中センター センター長・教授 竹川英宏 先生

場所: ウエスティンホテル横浜

内容及び補足「

日本の脳卒中データバンクを使用し2000年1月~2019年12月までの旧清掃しょっちゅう患者を対象に調査した。182080例のうち、虚血性脳卒中は135266例(女性53800例39.8%、年齢中央値74歳)、出血性脳卒中は36014例(女性15365例42.7%、年齢中央値70歳)、くも膜下出血は11800例(女性7924例67.2%、年齢中央値64歳)、

 

急性再灌流療法の開発により虚血性脳卒中患者の機能的転帰が男女ともに改善したが、出血性脳卒中患者の天気は改善しなかった。

JAMA Neurol. 2022;79(1):61-69

https://jamanetwork.com/joy/fullarticle/2786581

file:///C:/Users/jeffbeck/Downloads/jamaneurology_toyoda_2021_oi_210075_1641404422.22576%20(2).pdf

虚血性脳卒中の治療

急性期:急性期の脳卒中の治療を行うとともに再発予防も行う必要がある

九世紀以降の治療:治療の継続に加えリハビリテーションも重要である。

 

急性期の治療として血栓溶解療法がある。

従来は脳梗塞発症から4.5時間以内に静注血栓溶解療法を始めることが治療の有効性と安全性から鉄則とされていた。

睡眠中の発症や発症時同伴者不在のため発症時刻が明らかでない場合、「無症状であることが最後に確認された時刻(睡眠中発症例では就床した時刻)」から4.5時間以内の治療開始が求められていたため、こういった症例への静注血栓溶解療法は実施不可能であった。

欧州で行われたWake-Up試験結果に基づいて、MRIを用いて発症から4.5時間以内と推定できる所見(いわゆるDWI/FLAIRミスマッチ)を得た場合、静注血栓溶解療法を行ってもよいとなった。

Int J Stroke. 2014 Dec;9(8):1117-24

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4660886/

https://www.ncvc.go.jp/pr/release/190329_press/

38のアメリカの施設で行った、血栓溶解療法92例と内科的治療90例を比較した試験では、Score on Modified Rankin Scaleは血管内療法群で有意に良かった。両群間で症候性頭蓋内出血の頻度には差を認めなかった。

NEJM 2018 378 708-718

https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa1713973

 

急性期脳梗塞症例の内科的治療の効果判定をRAPIDとBayesian Vitrea CT Perfusionと比較したところ、有意さを認めなかった。

Am J Neuro Rad 2020, 41 (2) 206-212

https://www.ajnr.org/content/41/2/206

2021年の脳卒中治療ガイドラインにおいて、

 

2006年1月1日より2016年12月31日までの、4.5時間以内にt-PAで治療された急性虚血性脳卒中61426例のDoor to Needle timeで治療予後を見てみると、65歳以上の高齢者では、治療開始までの時間が短いほど、1年での全死亡率が低く、再入院が少なかった。

JAMA 2020 323 2170-2184

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2766633

 

米国の急性虚血性脳卒中患者6756例を対象にした症例で退院時の機能的独立性と血管内細開通療法までの時間の関係を検討した後ろ向きコホート研究では、血管内再灌流療法までの時間が短いほどより良い転帰と関連していた。

JAMA. 2019;322(3):252-263

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2738288

 

SKIP研究:内頸動脈や中大脳動脈などの脳主幹動脈閉塞に対して、カテーテルにより血栓を回収して血管を再開通させる決戦回収療法が普及しいてきた。血栓回収療法を行う場合も発症から4.5時間以内といった条件を満たす場合は、あらかじめtPAの投与が推奨されているが、出血リスクが上昇するため、血栓回収療法単独治療の可能性が探られていた。SKIP研究では、18~86歳の発症から4.5時間以内、CTまたはMRIによる血管撮影で内頚動脈もしくは中大脳動脈水平部の閉塞所見、NIHSS6点以上の条件を満たした204例(血栓回収療法単独群101例とtPAを投与する併用群103例)で検討された。

結果は、血栓回収療法単独群の非劣勢が示され、安全性の主要評価項目である36時間以内の頭蓋内出血の発生は併用群50.5%に対して血栓回収療法単独群では33.7%で有意に低率だった。

JAMA 2021 325 244-253

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2775278

 

頸動脈のドップラーエコーを使用して、急性完全片側心塞栓症(CE群)とアテローム血栓性内頚動脈閉塞(AT群)、血管造影所見正常患者(対照群)を比較すると、AT群では、近位内頚動脈が、一部石灰化し不均一な大きなプラークでいっぱいであり、EDVが10.8cm/s(対照群20.3cm/s)と有意に低値であり、ED比はほとんどの症例で1.4以上であり、有用な検査であるといえる。

 

AJNR Am J Neuroradiol. 1997 Sep; 18(8): 1447-52.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8338137/

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8338137/pdf/9296185.pdf

 

脳神経超音波マニュアル 2020 65-68

 

頸部血管超音波ガイドライン

計測法と表示

  • 超音波診断器はDuplex法とカラードプラ法が可能なものを用い、プロ―ベは中心周波数7㎒以上のリニアプロ―ベを用いる。
  • 内中膜厚の計測時には表示深度を3cm以下西、十分画像を拡大する。
  • 短軸像は画面の左側に頸動脈の右、長軸像では画面の左側に心臓側を表示する。
  • カラードプラの色の設定は、プローベに近づく血流を赤、遠ざかる血流を青にする。
  • 頸動脈の描出は、長軸・短軸ともに斜め前方・横・斜め後方と多方面から行う。
  • IMT計測時には血管をなるべくプローベと平行になるよう描出し、血流速度計測時には斜めに傾ける。
  • 血流速度計測時の角度補正は60度以内にする。

椎骨動脈の描出は総頚動脈を描出し、プローベを頸部の外側に移動すると椎骨の横突起がアコースティックシャドーとして描出されるので、横突起間にある血管を探す。本血管が見える場合には、浅いほうが椎骨静脈、深いほうが椎骨動脈である。両者の鑑別は血流波形で確認しておく必要がある。椎骨動脈を心臓側に追ってゆくと鎖骨下動脈の起始部まで観察することも可能である。

 

狭窄率

  • 狭窄率の測定法は、NASCET法、ECST法、area stenosisの3通りがある。
  • 狭窄率はarea stenosis≧ECST法≧NASCET法の順に大きい値となる。
  • 狭窄率は最低限ECST法、できればNASCET法で表記し、狭窄面が不整でECST法で困難な場合はarea stenosisで表記する。
  • 行為狭窄はED ratioで推測する。
  • 内中膜剥離術後は内科的治療に比べ、NASCET法・ECST法いずれの方法でも50%以上の狭窄でやや有効、70%以上の狭窄で有効
  • 狭窄部位の血流速度は、150cm/sec以上でNASCET法で50%狭窄、200cm/sec以上で70%狭窄と診断する。Near occlusionでは血流速度は低下する。

 

血流速度

  • 初めに可視範囲内の形態学的な血管の状態を評価する。
  • 対象血管の径が一定で直線的に走行する部位でパルス度プラ法を用いて測定する。
  • 血管の屈曲・蛇行や高度狭窄・閉塞がある場合には測定部位に注意する。
  • サンプルボリュームは血管径の2/3程度に設定する。
  • 入射角度(パルス信号と血管走行のなす角度)は60°以下に設定する。
  • 収縮期最高血流速度(PSV)、拡張末期血流速度(EDV)、平均血流速度(TAMV)、pulsatility index(PI)を測定する。
  • 内頚動脈起始部狭窄ではPSV≧200cm/secがNASCET狭窄≧70%を示唆する。
  • 外頸動脈の血流速度測定は内頚動脈閉塞病変が疑われる場合に追加する。
  • 総頚動脈の拡張末期血流速度の左右比(ED ratio)は内頚動脈系主幹動脈の閉塞病変診断に有用である。

  

 

臨床的意義

健常者における総頚動脈、内頚動脈、外頸動脈の血流速度を下の表に示す。20歳以上の健常者では血流速度は年齢とともに徐々に減少する。これらの値は異常を検出するための指標となる。しかし、年齢や動脈硬化の危険因子も血流速度波形へ影響するため、一側の血流速度波形のみを解析しても狭窄や閉塞病変の推定はしばしば困難である。もし、左右の血流速度波形に明確な差異があれば、一側の狭窄や閉塞病変を疑う。

内頚動脈起始部狭窄の診断にはPSV上昇が有用である。特にNASCET基準における内頚動脈70%以上狭窄診断には収縮期最高血流速度200cm/sec以上を用いる。

外頸動脈波形は、PSVとEDVの差が大きいことより、内頚動脈波形と容易に鑑別できる(図2BとC参照)。外頸動脈に関する血流速度の正常値はあまり論議されることがない。内頚動脈の閉塞性病変では必ず外頸動脈血流速度を測定する。内頚動脈閉塞の場合には同側の外頸動脈血流速度波形が内頚動脈化する(図3E)ことがあり、側副血行路として機能している所見である。

内頚動脈系の主幹動脈閉そく性病変では、総頚動脈での血流速度が対側に比べて低下する。血流非低値側(健側)のEDVを血流低値側(患側)のEDVで除した値は拡張末期血流速度比(ED ratio)といわれ、主幹動脈閉塞病変の検出に有用である。塞栓性もしくは血栓性の内頚動脈閉塞ではED ratio≧1.4となる(図3AとB)。心原性塞栓症のみの検討では、内頚動脈閉塞でED ratio≧4.0、中大脳動脈水平部閉塞では1.3≦ED ratio<4.0、中大脳動脈分岐閉塞ではED ratio<1.3と報告されている(Stroke 1992 23 420-422)。ED ratioを参考に閉塞血管の推定が可能となる。側副血行路の左右差や、血管径の左右差の影響もあるため、実際のスクリーニングではED ratio≧1.4をもって内頚動脈遠位部の閉塞性病変を疑う。

椎骨動脈

  • 椎骨動脈血流評価の際には左右両側の結果やより遠位部の血流情報を考慮し、総合的に判断する必要がある。
  • 遠位部病変ではPICA-endを含めて後下小脳動脈(PICA)分岐前後での閉塞を診断基準に基づき診断することが可能である。
  • 起始部病変では、高度の狭窄病変では血流パターンが変化しpost-stenotic patternを呈する。
  • 鎖骨下動脈盗血現象では、鎖骨下動脈の狭窄の程度により、椎骨動脈の逆流の程度は様々であり注意を要し、鎖骨下動脈の評価も併せて行う必要がある。

   

臨床的意義

椎骨動脈は内頚動脈と異なり、椎体内を上行するため、頸部の屈曲、伸展や回旋などの運動による影響を受ける。このため、外相などを受けやすく、椎骨動脈乖離による狭窄や閉塞が見られることがあり、Bモード法でFlapが確認されたり、ドプラ法で狭窄による流速上昇が示されることがある。また、頸部回旋により、めまいや脳幹部虚血症状が出現する症候をBow hunter症候群と呼ぶが、回線による椎骨動脈血流変化を確かめることが診断に有用である。また、頭蓋外椎骨動脈の血流速度を測定することでPICA前閉塞やPICA後閉塞など頭蓋内椎骨動脈の閉塞を診断できることは。脳梗塞急性期の閉塞血管を診断するうえで非常に重要である。さらに、椎骨動脈は左右が合流し一本の脳底動脈になり上行するため互いの血流が影響したり、椎骨動脈の血流がより遠位の脳底動脈や後大脳動脈の血流に影響を受けたりする可能性がありえるという特徴があり、脳底動脈閉塞の際にも、椎骨動脈血流が影響を受け、診断できる可能性もある。

一側の鎖骨下動脈が狭窄または閉塞した場合、上肢への血流を供給するために患側の椎骨動脈が逆流する現象が鎖骨下動脈盗血現象であるが、患側上司の運動によりしびれなどとともに、めまい、複視といった椎骨動脈系の神経症候(鎖骨下盗血症候群)も呈する場合がある。

Neurosonology 19 49-67 2006

https://www.jstage.jst.go.jp/article/neurosonology/19/2/19_2_49/_pdf

 

虚血性脳卒中の内科的治療

アテローム血栓性脳梗塞:プラークラプチャーに伴う決戦形成が発症機序として重要。

血小板凝集が活性化し、血小板血栓の形成が促進され、活性化した血小板から凝集惹起物質が放出され、トロンビンの活性を介してフィブリン血栓の形成が促進される。また、形成された血栓が不安定な場合、その血栓が剥離し、狭窄部位円の血管に飛来し、動脈原生脳塞栓をきたす。急性期にはDAPT(dual antiplatelet therapy)を含めた強力な抗血栓療法が必要である。また、主幹動脈のアテローム硬化により、穿通枝起始部が閉塞する病態であるBAD(branch atheromatous disease)もアテローム血栓性脳梗塞の一型と捉えられており、治療もアテローム血栓性脳梗塞に準ずる。

急性期 抗凝固療法 アルガトロバン48時間以内 7日間投与

       未分化ヘパリン10000~20000単位/日

       抗血小板薬 アスピリン160~300㎎、クロピドグレル初回300㎎その後75㎎ シロスタゾール

二次予防アスピリン75~150㎎/日、クロピドグレル75㎎/日、シロスタゾール200㎎/日

 

ラクナ梗塞

穿通枝動脈領域に生じる15㎜以下の梗塞であり、穿通枝動脈の細動脈硬化(脂肪硝子変性)が発生基盤である。一番のリスクファクターは高血圧であり、持続的な高血圧により、細動脈の血管内皮が飛行、血管壁の膠原線維が増加し、さらに、病態が進行すると、血管壁が降硝子変性し、細動脈閉塞や循環不全をきたす。また、編成に陥った細動脈壁は脆弱化し、微小動脈瘤を形成し、この微小動脈瘤の破綻が脳出血の原因となる。ラクナ梗塞と脳出血は病態的に類似しているとも、いえ抗血栓薬を選択する場合には出血性合併症の少ない薬剤を検討する。7

急性期 抗血小板薬 オザグレルナトリウム80㎎×2回/日 14日間、 アスピリン160~300㎎/日、クロピドグレル75㎎/日、シロスタゾール200㎎/日

二次予防 血圧のコントロールを行ったうえ、アスピリン75~150㎎/日、クロピドグレル75㎎/日、シロスタゾール200㎎/日のいずれかを選択する。

 

心原生脳塞栓症

塞栓源となる心疾患の大半は、非弁膜症性心房細動(non-valvular atrial fibrillation:NVAF)である。発症様式としては突発完成型であり、急性期に医療機関に搬送されやすく、他の病型よりも血栓溶解療法や血栓回収療法の適応となることが多い。

急性期 ヘパリン 明確なエビデンスはない 中大脳動脈領域の1/3以下の場合10000~15000単位/日で投与を開始し、APTTを投与前値の2~2.5倍となるように調整する。

二次予防 NVAFのある脳梗塞患者の再発予防には、DOAC(direct-oral anticoagulant)ないし、ワルファリンによる抗凝固療法がすすめられる。

 

血栓溶解療法

Rt-PA静注は発症から4.5時間以内に治療可能な虚血性脳血管障害で、慎重に適応判断された患者に対し、少しでも早く投与することがすすめられている。

禁忌・慎重投与のチェックリストにより判断される。

禁忌事項にあるCT/MRI初見での「広範囲な早期虚血性変化」じゃASPECTS(Alberta Stroke Program Early CT Score)で評価し、CTは10、MRIでは11店から早期虚血性変化を認める部位を減点法でスコア化する。6点が中大脳動脈領域の約1/3程度の虚血と相関しており、rt-PAの適応をASPECTS6以上としている施設が多い。投与量は0.6mg/kgで10%を急速投与し、残りを1時間で投与する。

脳卒中の再発率について検討したThe Shiga Stroke and Heart Attack Registry Studyにおいて、2011年~2013年に脳卒中発症28日後に生存していた1883例の2.1年(中央値)の経過観察のうち120例再発した。集結性脳卒中は3.8%であるのに対して虚血性脳卒中は6.8%と高率に認めた。

Circ J 2020 84 943-948

https://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/84/6/84_CJ-20-0024/_pdf/-char/en

 

2013年12月13日から2017年3月31日の期間、日本の292の病院で、非心原生の虚血性脳卒中の患者に、バイアスピリン81または100㎎/日またはクロピドグレル50または75㎎/日単独かシロスタゾール100㎎×2/日とアスピリンかクロピドグレルの併用投与の半年から3.5年の経過で比較試験が行われた。併用群では932例中29例3%に、単独療法群では947例中64例7%に虚血性脳卒中の再発を認めた。重篤または生命を脅かすような出血は、併用療法群では6例、単独療法群では9例認め、統計上有意差はなかった。

Lancet Neural 2019 18 539-548

https://www.thelancet.com/journals/laneur/article/PIIS1474-4422(19)30148-6/fulltext

 

 

 

57のRCT、165533例のメタアナライシスでは、抗血小板薬の二次予防効果は、アスピリンで0.79、クロピドグレルで0.63、シロスタゾールでは0.51のORであった。

BMC Neurol. 2021 Aug 16;21(1):319

 

再発性脳卒中または一過性脳虚血性発作の二次予防に対するDAPTの有効性のメタアナリシスを27358例対象に行った。DAPTは再発性脳卒中のリスクRR 0.71 、複合アウトカムRR 0.76と低下させたが、大出血のリスクはRR 2.17 と増加させた。

二次解析でアスピリンとクロピドグレルの併用による大出血のリスクは、30日以下の使用の場合は、単独療法と同等であった(RR 1.52 p=0.32)、治療期間を長期間延長した場合には有意に上昇した(RR 2.57 p=0.005)。

Circulation 2021 143 2441-2453

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCULATIONAHA.121.053782

 

PRASTRO-1試験

224の病院、非心原性の虚血性脳梗塞で発症1~24週以内、CTまたはMRIで診断された3753例で、プラスグレル3.75㎎/日(1885例)とクロピドグレル75㎎/日(1862例)の比較試験が行われた。イベントはプラスグレル群で73例3.9%(死亡1)、クロピドグレル群69例3.7%(死亡0)非劣勢は認めなかった。この研究のサブグループ解析でCYP2C19遺伝子多型による地下街や脳梗塞の病型による違いも分析されたが、有意さは認めなかった。

Lancet Neural 2019 18 238-247

https://www.thelancet.com/journals/laneur/article/PIIS1474-4422(18)30449-6/fulltext

 

参:Cytochrome P 450 2 C 9(CYP2C9)はワルファリンやフェニトインなどの治療息の狭い医薬品を含め、現在処方されている医薬品の約15~20%の代謝に関与する。活性低下を伴う多型として、*2(430 C>T、Arg 144 Cys)と*3(1075 A>C、Ile 359 Leu)が知られ、*2は東アジア人にはほとんど見いだされず、*3の頻度も白人と比較して低い。尚良武井による活性低下の程度は、基質役により異なる。

Cytochrome P 450 2 C 19(CYP2C19)は、ヒト肝臓P450 量に占める割合は1%に過ぎないが、プロトンポンプ阻害剤など、多くの医薬品の代謝に関与する。活性欠損型の十y東名多型に、*2(681 G>A、スプライス異常)と*3(636 G>A、Trp 212 X)があり、これらの頻度に大きな人種差が認められる。日本人では*2および*3のホモ接合(*2/2または*3/3)および複合ヘテロ接合(*2/*3)の割合は約16%に達し、約6人に1人がCYP2C19活性をほとんど有しない低代謝型(poor metabolizer:PM)であるのに対し、白人では大多数が通常の活性を有する高代謝型(extensive metabolizer:EM)であり、PMはわずか2%である。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/50/7/50_669/_pdf

 

脳出血発症後の長期的抗血栓薬投与による血栓塞栓症予防の研究としてRESTAR試験が行われた。脳出血発症後24時間以上生存した脳出血症例に対して発症後76日後に介入開始し、2年間経過を見た。抗血栓薬投与群(Start群:268例)、抗血栓薬回避群(Avoid群:269例)で検討された。

症候性脳出血の再発はStart群22例(8.2%)、Avoid群25例(9.3%)と有意さを認めなかった。

 

Major vascular events(非致死的な心筋梗塞、脳卒中+血管イベントによる死亡)はStart群72例(26.8%)に対して、Avoid群87例(32.5%)でこちらも有意さを認めなかった。

JAMA Neurol. 2021 Oct 1;78(10):1179-1186.

https://jamanetwork.com/journals/jamaneurology/fullarticle/2783812

 

高齢者によくみられる不整脈である心房細動の治療目的は、予後と生活の質の改善にある。高齢者においての抗凝固剤の治療効果を検討したBAFTA研究(Mizuno et al. 2018; Patti et al. 2017; Poli et al. 2009)では、80~84歳までの386例と、85歳以上の190例で検討している。アスピリンに比べワルファリンは血栓塞栓症を、それぞれRR 0.30、RR 0.50低下させている。

Ageing Res Rev. 2019 Jan;49:115-124

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1568163718301284?via%3Dihub

我が国で行われたFushimi-AFレジストリは登録患者の約半数が75歳以上であったが、2011年において抗凝固療法士効率は53.1%であった。CHADS2スコア1点で40%台、2点で50%台、3点以上でも60%前後であった。

抗凝固療法がおこなわれている患者のうち9割以上(全体の50.6%)の患者に対してワルファリンが投与されていたが、PT-INRが治療域であった患者の割合は54.4%であった。

このような状況下で、全身性塞栓症の発生率、および大出血の発生率は抗凝固療法の有無で有意差は認めなかった。これはワルファリン投与がUnderuseであったことが一因であると考えられている。

Circ J 2014; 78: 2166-72

https://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/78/9/78_CJ-14-0344/_pdf/-char/en

 

つまりAFの50%の人が抗凝固療法役を飲んでいないし、短文の人がAF事態に気付いていない。特に発作性に起こるAF:pAFが問題である。

pAFを起こしやすいと考えられている異常所見をいかに上げる。

P波の延長 ≧40㎳

PRの延長 20msごとに20%増加

PAC ≧1000/24hr

V1誘導でP wave terminal toneの増大

QTc≧438ms

BNPの上昇

左房径増大

無症候性甲状腺機能亢進

 

左房ストレイン

左房の収縮力低下は、左房の線維化など心房心筋症と関連し、心房心筋症は心房細動の発症に関与している。

J Am Soc Echocardiogr 2017 30 59-70

 

参:スペックルトラッキング法によるストレイン解析

左心室心筋は心内膜側から心外膜側にかけて、内斜走筋、輪状筋、外斜走筋の三層からなり、全体的には螺旋状に奏功している。左室の中層では心筋線維は円周方向に走行しており、心内膜側、心外膜側に向かうにつれて次第に角度は長軸に近い方向で走行する。この角度の変化は、心外膜で-60°、中層で0°、心内膜で+60°である。この走行により、左室は心尖部から見て、心尖部は反時計回り、心基部は時計回りに回転し、左室全体にねじれを生じる。

また、心筋線維は束になり、sheet状に配列されている。左室の収縮に伴い、心内膜側では、このsheetの配列の角度が大きく変化し、この変化は心基部より心尖部で大きい。このsheetのずれのおかげで心内膜側での大きな壁厚増加が得られる。これらは左室が有効に血液を駆出することに寄与している。

 

左房ストレイン解析と臨床応用

左房には3つの機能がある。①収縮期には左房の士官と進展で血液を貯留するリザーバー機能、②心室の拡張早期における導管機能、③拡張後期に左房内に貯留した血液を左室へ駆出するブースター機能である。心エコー図検査による左房機能評価は、従来、パルスドプラ法、組織ドプラ法、左房をトレースして得られる左房容積係数などが用いられてきた。しかし、各疾患の血行動態や必ずしも一定ではない左房拡大の形態、画像の描出度の観点から限界もあった。一方、2Dスペックルトラッキング法で評価した左房ストレインは、リザーバー機能を反映する収縮期ストレイン、ブースター機能を反映する拡張後期ストレインなど比較的簡便に評価可能であり、左室の挙動に左右されにくく、再現性も良好といわれている。左房ストレインに影響を与える因子としては、年齢、性別があり、特に収縮期ストレインは、加齢により低下するという報告がある。性別については女性のほうが高値であるという報告があるがまだ確定されていない。また計測値は機種による差があるので注意を要する。

左房ストレイン計測時には、心尖部四腔像にて左房がすべて表示できるように深度を調整する必要がある。このように求められた左房ストレインの正常値は、リザーバー機能を反映する収縮期ストレインは39%程度、ブースター機能を反映する拡張期ストレインは17%程度と言われており、収縮期ストレインが38%未満となるとリザーバー機能の低下を表し、拡張後期ストレインが16%未満となるとブースター機能の低下があると考えられている。左房ストレイン及びその変化率を示すストレインレートは、急性心筋梗塞や僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症、HFpEFなどの宍道湖予測に有用であることが報告されている。

藤田医科大学医学会氏2021 45 19-25

file:///D:/A%20%E5%8B%89%E5%BC%B7%E4%BC%9A/2023.08.31/bfms_45_1_19.pdf

 

参:心房細動(AF)のメカニズム

AFは心房が高頻度に興奮する病態であり、主に心房内のランダムリエントリーによる不規則な興奮が特徴で、AFは発作性として始まり、徐々に発作の持続時間が長くなって慢性化するという自然経過をたどる。

リエントリーの引き金であるトリガー興奮は、洞結節以外の部位から発生する異所性の早期興奮であり、心電図所見は心房期外収縮である。トリガー興奮の薬90%は肺静脈周囲に存在する心筋組織(肺静脈心筋スリーブ)から生じる。一部の症例は、上大静脈領域でトリガー興奮がみられることもあり、心房筋内にトリガー興奮が存在する症例もある。

心房金においてリエントリーを持続させる基質をAF基質というが、AF基質が増加すると、心房はよりAFに適した状態へと変化するリモデリングが生じる。

高血圧や心不全による圧負荷及び糖尿病やメタボリックシンドロームといった背景疾患により心房リモデリングはAF発症前から進行していると考えられるようになってきた。

つまり、AFは、ある程度の心房リモデリングが進行してAF基質が一定の閾値に達した時点でトリガー興奮が生じると発作性AFとして発症し、その後は、AFそのものによる心房リモデリングが加わり、AF基質がますます増大することで慢性化していくという経過をとる。

日内会誌108 204-211 2019

https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/108/2/108_204/_pdf

https://enoki-iin.com/contents/news/20201012_01.html

 

参:心房細動

フラミンガム研究で、1958~1967年と1998~2007年の間に、年齢調節された心房細動の有病率は、男性では1000人年あたり20.4人から96.2人へ、女性でも1000人年で13.7人から49.4人へと4倍に増加した(Lancet 2015; 386: 154–162. PMID: 25960110)。

日本でも2003年の定期健診の成績から心房細動の有病率は加齢とともに増加し、70歳代では男性で3.44%、女性で1.12%、80歳以上では男性で4.43%、女性で2.19%であった(. Int J Cardiol 2009; 137: 102–107. PMID: 18691774)。

心房細動に関連する趨勢可能な臨床危険因子

心房細動症例の56.5%は一つ以上の危険因子を有しており、そのうち高血圧が最も重要な因子であったと報告されている。

高血圧: 持続的に上昇した収縮期血圧、並びにより長期の降圧治療歴などの長期経過パターンの違いが心房細動の新規発症リスクと関連している。

糖尿病:耐糖能障害を有する試験集団において空腹時血糖値が18mh/dL増加するごとに心房細動発症リスクが33%増加するという報告がある。

肥満:男女ともBMIの増加に伴い心房細動のリスクが増加し、低下するとリスクが減少する。

睡眠呼吸障害:重症度が高いほど心房細動リスクが高くなる。

尿酸:尿酸降下薬を内服していない日本人49292人を対象に行われた後ろ向き研究結果では、高尿酸血症は心房細動の独立した危険因子であった。

喫煙:心房細動の危険因子であり、心房細動を患う喫煙者の入院と死亡のリスクが高いことが報告されている。

アルコール消費量:1日のアルコール摂取量が10g増えるごとに心房細動新規発症リスクが5%上昇し、左房系が0.16mm拡大することが報告されている。

不整脈薬物治療ガイド2020年改訂版

https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/01/JCS2020_Ono.pdf

 

発作性心房細動(paroxysmal atrial fibrillation:PAF):普段はどう両立であるが突然ADが出現し、その後7日以内に洞調律に戻る不整脈。ほとんどの場合48時間以内に洞調律に戻る。

心房細動の心電図波形

  • P波がない
  • RR感覚が不規則
  • f波が出現する(2誘導、V1誘導で観察しやすい)

P波:心房の収縮を表すが、右房と左房の波形の合成がP波を形成する。右房は左房よりも洞結節からの信号が早く伝わるので前半が右房成分、後半が左房成分である。

右房負荷:高さ2.5㎜(0.25mV)以上。

2誘導、3誘導、aVf、V1、V2でP波は尖って、高さが2.5㎜以上

左房負荷:元来左房成分は小さいので大きくなっても高さに反映されることは少なく心房拡大による伝導時間の延長で幅が広くなり、2.5㎜(0.1sec)以上となることが多い。

二峰性P波

二相性P波 V1誘導 陰性部分の幅と深さのコマ数を掛け算して1以上なら左房負荷

コペンハーゲンホルター研究の15年間のフォローアップで、心血管疾患・脳梗塞・心房細動の既往がない55-75歳の患者678例を対象としており、ESVEA(Excessive supraventricular ectopic activity:1分間に30回以上のPAC、または20回以上のPACショートラン)が99例に認められた。ESVEAを認め脳梗塞を発症した症例のうち14.3%が脳梗塞発症前にAFを認めた。

J Am Coll Cardiol. 2015 Jul 21;66(3):232-41

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0735109715023748?via%3Dihub

 

2015年に更新された欧州不整脈学会ガイドラインでは、一過性脳虚血性発作(TIA)では発症後1日、軽症脳梗塞では3日、中等症脳梗塞では6日、重症脳梗塞では12日(1-3-6-12 day rule)から抗凝固療法の開始を推奨しているが、各々1日、2日、3日、4日(1-2-3-4 day rule)でも安全かつ有効にDOAcを使用することが可能であることを2022年に木村らが示した。

Stroke 2022 53 1540-1549

file:///C:/Users/jeffbeck/Downloads/kimura-et-al-2022-practical-1-2-3-4-day-rule-for-starting-direct-oral-anticoagulants-after-ischemic-stroke-with-atrial.pdf

 

参:

心房細動を伴う脳梗塞患者2032例に対して、早期DOAC投与開始群1006例、標準的開始群1007例に振り分け、試験登録30日以内の脳梗塞再発、症候性頭蓋内出血、全身塞栓症または血管死からなる複合エンドポイントを主要評価項目とした。

主要評価項目は、早期開始群で29例(2.9%)、標準的開始群41例(4.1%)に発生し、有意さを認めたが、登録30日以内の脳梗塞再発は早期開始群で14例(1.4%)、標準的開始群で25例(2.5%)、30日以内の症候性頭蓋内出血は両軍とも2例(0.2%)で有意な差にはならなかった。

早期のDOAC開始により複合エンドポイントは約1%減少する可能性が示され、非弁膜症性心房細動を伴う脳梗塞症例では発症早期からDOACによる脳梗塞再発予防を検討することが妥当と考えられる結果であった。

N Engl J Med 2023; 388:2411-2421

https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2303048

 

ENGAGE AF-TIMI 48試験

非弁膜症性心房細動患者に対して、脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制を目的としワルファリンとエドキサバン60㎎/日、30㎎/日の投与で比較検証した試験である。

結果としては、ワルファリンに対する非劣勢が検証され、重篤な出血の発現については、エドキサバンのワルファリンに対する優越性が示された。

N Engl J Med 2013; 369:2093-2104

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1310907

 

ELDERCARE-AF study

80歳以上の非弁膜症性心房細動患者に対して低用量であるエドキサバン15㎎/日の投与は、Primary outcomeは、HR 0.34と有意に減少させ、大出血に関してはプラセボと有意さを認めなかった(消化管出血は多かった)。

75の研究のメタアナリシスでは、DOACで心房細動の脳卒中の予防的投与は、ガイドラインに準じて行われていたが、かなりの患者(25~50%)が適応外投与を受けていた。過剰投与は全死因死亡率の増加と出血イベントの悪化に関連していたが、過小投与は心血管入院の増加と関連しており、特にアピキサバンの過小投与では脳卒中のリスクがほぼ5倍に増加した。

Br J Clin Pharmacol 2020 86 533-547

https://bpspubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/bcp.14127

 

2013年10月から2016年12月までのNOAC関連の脳内出血に関する検討を行った。141311例の脳内出血患者

JAMA 2018 319 463-473

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2670103

 

ENTA-AF-Japan研究:2015年4月13日から2017年9月30日までに非弁膜症性心房細動(NVAF)の患者11569例の患者が登録され、11111例で安全性が解析された。年齢74.2±10.0歳、体重60.0±12.7 kg 、クレアチニンクリアランス63.9±25.8mL/min、CHADS2スコア2.2±1.3であった。Edoxabanは86.3%に投与され、治療中央機関は561.9±261.2日であった。出血イベントは5.60%/年、大出血イベントは1.02%/年、虚血性脳卒中または脳塞栓症は1.08%/年であった。60㎎/日の投与では大出血の年間発生頻度は0.75%、30㎎/日では1.21%であった。

出血イベントの発生率は、80歳以上で出血歴のある患者で特に高く、虚血性脳卒中(TIAを除く)または全身性塞栓症の発生率は、体重が40㎏未満、クレアチニンクリアランス30mL/min未満の患者で高かった。

J Arrhythm. 2021 Apr; 37(2): 370–383.

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/joa3.12520

 

European Heart Rhythm Association(EHRA)は心房細動の抗凝固療法のガイドラインを2017年に以下のように発表した。

弁膜症性心房細動はワルファリンで治療されるべきで、NOACの適応ではないとした。

NOACも四種類に拡張し言及されている。

抗凝固薬の切り替えに関する推奨事項も更新された。

NOACで治療されたAF患者における結構再建術または旧青函症候群の急性管理は下図のように提示された。

 

TIA/脳卒中または脳内出血後の抗凝固療法の開始または差異化のフローちゃーをてゃ下図のように提示された。

Eur Heart J. 2017 Jul 14; 38(27): 2137–2149.

https://academic.oup.com/eurheartj/article/38/27/2137/2996308

 

心房細動患者における脳梗塞は、心原性脳血栓塞栓による梗塞が主であり、その血栓の90%以上が差神事由来とされている。その治療法として本邦のガイドラインにおいてもCHADS2スコア1点以上の症例において、抗凝固療法が推奨されているが、服薬コンプライアンスや、薬物相互作用の問題、出血のリスクの門外があり、その対応策として、左心耳閉鎖システムがある。国内治験として実施されたSALUTE試験において脳梗塞のリスクを有する日本人のNVAF患者(CHA2DS2-VAScスコア≧2点)を対象としたWRTCHMANの有効性および安全性が検証され、欧米と同等の手技成功率、安全性、術後2年までの有効性が日本人でもしめされた(Circ J 2018 82 2946-2953、Circ J 2020 84 1237-1243)。

https://www.jhf.or.jp/pro/shinzo/upload_images/ab21ed100098f044d17fe2cbaa1d072ca7a03301.pdf

 

参:cryptogenic stroke(潜在性脳卒中):原因不明の脳梗塞(Embolic stroke of undetermined source:ESUS)。脳梗塞全体の25%程度を占める。その原因として、潜在性発作性心房細動、卵円孔開存(patent foramen ovale:PFO)、大動脈プラーク、がんなどがある。その多くは、奇異性脳塞栓症は深部静脈血栓由来の塞栓子が心臓や肺の右左シャントを通じて動脈内に流入し、脳動脈を閉塞することにより生じる脳梗塞

 

12個の研究データを使いCSの中で、PFO症例は、若年者、画像上で皮質の梗塞巣の存在、糖尿病、高血圧、喫煙などの脳梗塞やTIAの危険因子の欠如が関連していた。

PFOの存在確率は、Risk of Paradoxical Embolism scoreが0~3では23%、9~10では73%になるとしている。

Neurology 2013 81 619-625

https://n.neurology.org/content/81/7/619

 

PFOの診断は生理食塩水を拡販したマイクロバブルを用いたコントラスト経食道心エコー検査を行う。

https://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/medical_info/presentation/202002.html

 

contrast transcranial color-coded sonography of vertebral artery monitoring via the foramen magnum window (cTCCS-VA)はPFOの診断でSpcifity 42%、Sensitivity 84%、右左シャントの診断にはSpcifity 40%、Sensitivity 91%だった。

J Neurological Sciences 2017 376 97-101

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0022510X17301818

49例の下肢静脈瘤血栓症症例の入院時と二週間後のエコーを検討した。

虚血性脳卒中の入院から2週間以内にPosterior Tibial Veinで7例のDVTが、Peroneal Veinで6例のDVTが発症した。入院時の静脈系にはDVTを発症した群としなかった群で有意さはなかった。

J Stroke Cerebrovasc Dis 2013 22 1002-1005

https://www.strokejournal.org/article/S1052-3057(12)00046-8/fulltext

 

4009例の抗血栓療法を行っている脳卒中及び心血管疾患を4群(単一の抗血小板剤47.2%、2剤の抗血小板剤8.7%、ワルファリン32.4%、ワルファリンに抗血小板剤を追加11.7%)に分けた。中央値19か月の経過観察で57例の生命を脅かす出血、51例の大出血(含31例の頭蓋内出血)を認めた。年間のプライマリエンドポイントの頻度は、単一の抗血小板剤で1.21%、2剤の抗血小板剤で2.00%、ワルファリンで2.06%、ワルファリンと抗血小板剤の投与では3.56%であった。

Stroke. 2008 Jun;39(6):1740-5

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/STROKEAHA.107.504993

 

抗血栓療法がおこなわれている心血管および脳血管疾患患者4009例を中央機関19か月の経過観察において31例の頭蓋内出血(ICH)、および77例の頭蓋外出血(ECH)を認めた。エントリー時の血圧レベルでは、出血を認めなかった群、ICH群、ECH群では差を認めなかった。ICH群ではエントリー時に比べその後の期間において、収縮期及び拡張期血圧は高値であった。抗血栓薬投与中の血圧の上昇は、頭蓋内出血と正の関連があり、血圧の管理が重要である。

Stroke 2010 41 1440-1444

https://www.ahajournals.org/doi/pdf/10.1161/strokeaha.110.580506

2016年のEuropean Heart Jouranlに掲載された、ESCのガイドラインにおいて、心房細動の抗血栓療法について詳述されており、血圧のコントロールの重要性も上げている。

 

抗血栓薬投与の併用について下記のように推奨している。

ステントを使ったPCIを行った症例においては、下図のように推量している。

Eur Herat J 2016 37 2893-2962

https://academic.oup.com/eurheartj/article/37/38/2893/2334964

 

STEP研究

高血圧を有する60~80歳の中国人患者を目標血圧110~130mmHg(強化治療群:4243例)と130~150mmHg(標準治療群:4268例)に割りつけた。追跡1年時点での収縮期血圧の平均値はそれぞれ127.5mmHg、135.3mmHgであった。追跡中央値3.34年の時点では主要評価項目のイベントは、強化治療群で147例(3.5%)、標準治療群で196例(4.6%)で、強化治療群のほうが優れていた。

 

 

副作用においては、低血圧が強化治療群で146例(3.4%)、標準治療群で113例(2.6%)と強化治療群で多かったが、それ以外には有意な差は認めなかった。

NEJM 2021 385 1268-1270

https://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa2111437

 

心房細動の疫学としてAmerican Herat AssociationはCirculation 2020 141号に置いて下記のように記載している。

治療は下図のように4本柱として示している。

肥満患者の対応として、体重を10%低下することを推奨している。

アプローチに関しては多職種参入がより効果的である。

Circuation 2020 141 e750772

https://www.ahajournals.org/doi/epub/10.1161/CIR.0000000000000748

 

非弁膜症性心房細動患者(NVAF)の心血管予後に対する心房細動発症前の既往高血圧とコントロール状況の影響を、2005年1月から2016年6月までに提出された384万人のJMDC医療機関・薬局の月次請求を基に解析した。

期間中に新たに発症したNVAFがあると特定された21523例の患者のうち、7885例はNVAF発症前に血圧データが利用可能であった(高血圧既往あり4001例、既往なし3884例)。一次複合エンドポイントevent発生率は、高血圧のある患者とない患者でそれぞれ10.3と4.4(1000人年)であった。さらに、NVAF発症前の収縮期血圧の低下(<120mmHg)は、NVAFの発症後の心血管event発生率の低下と関連していた。

J Clin Hypertns 2020 22 431-437

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8030061/

 

いくつかのメタアナリシスで、臨床的な明白な以前の脳卒中がなくても、心房細動が認知障害及び認知症と関連していることが示されている。

 

AFと認知機能障害との関連は多因子である可能性が高く、いくつかのメカニズムが提案されている。AFは脳梗塞、脳容積の減少、微小出血などの様々なメカニズムを通じて認知障害を引き起こす可能差異があり、脳容積の減少のメカニズムの仮説として、灰白質の低灌流、サイレンと脳梗塞、微小出血、及び炎症が考えられている。炎症は、凝固亢進と血栓形成を促進する。NOAC投与は、脳微小出血のリスクを高めるリスクがありえる。

Circulation 2022 145 392-409

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCULATIONAHA.121.055018

 

2014年1月1日から2017年12月31日までの期間で、心房細動があり、経口抗凝固剤(Warfarin、rivaroxaban、dabigatran、apixaban、edoxaban)を内服している154407例のうち72846例のデータを検討した。内訳は下表のようになっている。

Dementia、Vascular dementia、Alzheimer’s dementiaにおいて、WarfarinとDOACの内服によるイベントの差は認めなかった。

年齢で分けてみると65歳から75歳未満の群でDOAC投与群でリスクが減少していた。

投薬薬剤毎で見てみるとDemenitagunnnioite edoxabanの投与でリスク低減が見られた。

Stroke 2021 52 3459-68

https://www.ahajournals.org/doi/epub/10.1161/STROKEAHA.120.033338

 

伏見レジストリは京都伏見区で2011年から行われている地域密着型のAF患者の前向き調査で、2016年11月末までの追跡データが入手可能な4045例の患者における心血管(CV)及び比CV死亡の死因と臨床指標の調査研究である。

平均年齢73.6歳、平均CH2DS2-VAScスコア3.38で、経口抗凝固薬は患者の55%に処方されていた。追跡期間中央値1105日の間に、705例の全死因死亡(5.5%/年)があった。CV死180例(総死亡の26%)、非CV死381例(54%)、未確定原因の死亡144例(20%)であった。CVおよび非CV死亡の死亡原因は、心不全14.5%、悪性腫瘍23.1%、感染症17.3%、脳卒中による死亡率は6.5%であった。

年齢群で見るとCV死亡は全死因死亡の約25%を占めている。

 特定の死因の死亡率は、年齢層に応じて増加した。

多変量Cox回帰分析では、全死因死亡のリスクが最も高い変数は、貧血であり、続いてPAD、脳卒中/TIA、高齢、既存の心不全、COPD、ジギタリスの処方、腎機能障害が続いた。

女性であること、OAC処方、スタチンの処方は、全死亡死因のリスクが低いここと有意に関連していた。

Eur Heart J Qual Care Clin Outcomes. 2019 Jan 1;5(1):35-42

https://academic.oup.com/ehjqcco/article/5/1/35/5055400

 

脳卒中後中枢神経痛:CPSP(central post-stroke pain)は脳血管障害後の慢性神経因性疼痛症候群で、脳卒中患者の8~55%で発生すると推定されている。

温度や圧力感覚の感覚異状を伴う一定または断続的な神経因性疼痛として説明されている。

これらの痛みと感覚障害は、脳卒中病変に対応する身体の領域内にある。痛みの発症は通常緩やかであるが、脳卒中直後または数年後に発症する可能性があり、臨床症状の多様性があり、脳卒中後のCPSPは除外の困難な診断である。治療の明確なアルゴリズムはいまだ確立されていない。

アミトリプチン、ラモトリギン、ガバペンチノイドなどを第一選択として選択し、難治例に対して、フルボキサミン、ステロイド、リドカイン、ケタミン、プロポフォールの静脈内注入などの他の薬剤治療を考える。さらに、運動皮質刺激や径頭蓋磁気刺激などの介入療法が有効な症例が示されている。

CNS drug 2021 35 151-160

https://link.springer.com/article/10.1007/s40263-021-00791-3

 

参:脳卒中後中枢神経痛:CPSP(central post-stroke pain)

DejerineとRoussyが脳卒中後に対戦感覚神経系の病変によって生じる神経障害性疼痛を初めて報告した。病変が主に視床にあると考えられており、視床痛と表現されたが、その後、視床以外の病変でも生じることが分かった。

脳卒中罹患患者の1~12%にみられ、脳卒中発症から3か月以内に発症するとされている。

『焼けるような』。『うずく』、『凍てつくような』、『しびれるような』。『刺されるような』と表現され、被殻病変では『下肢』が多く、視床病変では『上肢』が多いとされている。

脳卒中後にみられる痛みをKlitらは下図のように分類している。

Lancet Neurol. 2009 Sep;8(9):857-68.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19679277/

 

Poststorke thalamic pain(PS-TP)or broadly central poststroke pain(CPSP)はまだよく解明されていないが、現時点においては、下図のようなメカニズムが考えられている。

治療としては、薬物治療と非薬物治療がある。

薬物治療としては

Tricyclic Antidepressants(TCAs)

Selective Serotoin Reuptake Inhibitors(SSRIs)

Serotoin-Norepinephrine Reuptake Inhibitors(SNIRs)

Anticonvulsants

Other Medications(Opioid or opioid antagonist, medical cannabinoids, mexiletine, clonidine, and beta-blockers)

Diagnostics 2022, 12(6), 1439

https://www.mdpi.com/2075-4418/12/6/1439

 

ミロガバリンは末梢神経因性疼痛、特に糖尿病性末しょう神経障害性疼痛および帯状疱疹後神経痛の治療薬として承認されている。

Anesth Pain Med. 2021 Dec 22;11(6):e121402.

https://brieflands.com/articles/aapm-121402.html

 

抗痙攣薬の服薬アドヒアランスを検討した21077例の検討では、飲み忘れが60.7%、意図的中断が11.1%、薬漏れが17.4%とされている。

 

参:精神疾患治療薬における服薬状況に関するアンケート調査

犬山病院精神科で加療している全患者に2011年12月に行ったアンケート結果は以下膿瘍なっている。

日職災医誌2013 61 382-392

http://www.jsomt.jp/journal/pdf/061060382.pdf

 

アドヒアランスの橋上のためには、残薬のチェックが有効である。

医師のみでなく、薬剤師などによるチェックなど多面的な介入のほうが効果が高いことも示されている。

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