消化器系

2019.03.28

腸内細菌から読み解く慢性便秘症 金井隆典教授

2019年3月24日 
演題「腸内細菌から読み解く慢性便秘症」
演者:慶應義塾大学医学部消化器内科教授 金井 隆典 先生
場所:品川プリンスホテル アネックスタワー プリンスホール
内容及び補足「
『腸内細菌は21世紀の新臓器』といわれるようになってきた。
  ヒト個体 腸内細菌
細胞数  60兆個  100兆個
ゲノム数 2万個  100兆個
Ann. Hum. Biol. 40.463 2103
人一人の個体に1000種類の腸内細菌が存在する。腸内細菌は腸管のどの部分にいるかというと、胃や十二指腸、小腸にはごくわずかしか存在せず、回腸末端では菌が多くなるが、そのほとんどが大腸であり、1.5~2.0㎏の重さになる。
当然場所によって存在する菌種は異なってくる。そして、その大腸にいる菌のほとんどが嫌気性菌である。腸管の酸素濃度が上昇すると悪玉菌が増えてくると言われている。

https://www.gastrojournal.org/article/S0016-5085(07)02157-9/fulltext
地球が誕生したのが46億年前で、最古の生命の化石である藍藻が35億年前、細菌が誕生したのが30億年前であり、このころ酸素は地上になく、嫌気性菌が主であった。20億年前に植物が出現し、酸素が大気中に増えてきた。360万年前に猿人が登場し、人類の誕生は20万年前である。

http://lifeplan-japan.net/index.php?%E5%9C%B0%E7%90%83%E3%81%A8%E7%94%9F%E5%91%BD

アントーニ・ファン・レーウェンフック:Antonie van Leeuwenhoekが歴史上はじめて顕微鏡を使って微生物を観察し、『微生物の父』と称せられている。

下図は彼が作成した顕微鏡である。この200倍の顕微鏡を使って1674年バケールス湖から採取した水を観察し奇妙に動く物体を発見しanimalculeと名付けた。彼は人の弁を観察し細菌が存在留守ことを確認し、男性の精子が生きた生命体であることを観察している。

フェルメールの作品の『天文学者』はレーウェンフックがモデルといわれている。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%8B%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%83%E3%82%AF

腸内細菌は善玉菌と悪玉菌、日和見菌に分けられ、2:1:7が理想的といわれている。
善玉菌としては、ビフィズス菌、乳酸菌などで、食物繊維を発酵させ、人体にとって有益であるビタミンの合成、消化吸収の補助、感染防御、免疫刺激がある。代謝産物である、Propionate、Acetate、Butyrateが重要な役割を演じていることがわかってきた。
悪玉菌としては、ブドウ球菌、ウエルシュ菌、有毒株の大腸菌があり、腸内腐敗、細菌毒素の産生、発癌物質の産生、ガスの産生などの作用がある。
日和見菌としては、バクテロイデス、無毒株の大腸菌、連鎖球菌などがある。

Dysbiosis腸内細菌バランスが崩れ、悪玉菌が増える状態をいう。人工乳、薬剤、活動の低下、ファストフード、手洗いをしないことによりDysbiosisの状態となり、慢性の炎症(IBD、IBS、リウマチなどの疾患)を引き起こしたり、代謝異常(肥満、糖尿病、パーキンソン病、自閉症など)の疾患に至ると考えられる。醸造食品・発酵食品(Fermented Foods)を摂ることにより、このDysbiosisの状態をHealthy Microbiotaの状態に戻す必要がある。

肥満に対しての腸内細菌の研究として興味深いものがある。片方が痩せていて、もう一方が太っている4組の双子の便を、無菌マウスに移植したところ痩せている方の便移植をした群は、太っている方の便移植をした群に比べ体重は少ないままであった。

Science  06 Sep 2013: Vol. 341, Issue 6150, 1241214

『旧友仮説』:腸内細菌は古くから宿主と共生してきた。こうした細菌は宿主の免疫系に『自分は敵ではないですよ』『攻撃しなくてもよいですよ』とメッセージを送り続けている。何を攻撃するか何を攻撃すべきでないかと、人の免疫系に指示を出しているのが腸内細菌であるという考えである。
クローン病の腸内細菌は酪酸産生菌が減少していることが示されている。
歯周病の原因菌の一つとされているFusobacterium Nucleatumが大腸がん症例の約半数例においてがん組織に生着していることが2011年に報告されていたが、近年がん病巣のごく一部を切り取り核酸同定・定量検査法を用いると、Fusobacterium Nucleatum固有の核酸量の著しい増加が認められていること、大腸がんの肝転移巣に本菌が持続的に共存しており、抗菌薬投与により癌の進行が抑制されたとの報告がScience  15 Dec 2017:Vol. 358, Issue 6369, pp. 1443-1448にされた。

1928年にアレクサンダー フレミングがペニシリンを発見したが、この抗生剤は、常在細菌も致死させてしまった。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%82%B0

日本人の脂肪摂取量は、徐々に増加している。

https://health.suntory.co.jp/professor/vol30/
一方善玉菌の栄養源である食物繊維は、徐々に摂取量が低下している。

http://www.rokujo-radium.com/blog/index.php?entry=entry141217-125945

デニス・バーキット博士はアフリカの農民の食物繊維摂取量は60~80gであり、便秘や大腸がん患者が少ないのは、この食物繊維の摂取量によると唱えている。
ちなみにケニア520g、マレーシア477g、ウガンダ470g、イラン349g、ペルー325g、インド311g、中国209g、日本200g、アメリカ150gである。
「その国の人の健康状態は、便の大きさを見ればわかる。便が大きい国では病院は小さくてすむ。便が小さければ大きな病院が必要だ」と薀蓄を述べている。
https://www.excite.co.jp/news/article/HealthPress_201506_150g200g520g/

腸管粘液の重要性についてこれから話す。(金井教授の図が入手できなかったので他の図で説明する)
大腸は1.5mほどの管腔組織で二重の粘液層でおおわれている。顕病な大腸においては、腸内細菌は外粘液層までは入れるが、内粘液層にはほとんど存在しない。

https://scienceportal.jst.go.jp/clip/20160517_01.html
この粘液層の主成分はムチンである。
ムチンは動物の上皮細胞などから分泌される粘液の主成分で、分子量100~1000万の糖を大量に含む糖蛋白質の混合物で、細胞の保護や潤滑物質としての役割を担っている。水溶性繊維に分類され、分泌型ムチンと細胞膜に結合している膜結合型ムチンがある。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%83%81%E3%83%B3
ムチンは杯細胞から分泌されるが、人は分解できず、腸内細菌が消化できる。腸内細菌の栄養源である食物繊維の摂取量が減少してくると、このムチンが栄養源として利用されることになり、細菌が存在できない内粘液層が減少し、細菌が腸管上皮に損傷を与えることになっていく。

Cell. 2016 Nov 17;167(5):1339-1353.e21. doi: 10.1016/j.cell.2016.10.043.

プロバイオティクス・プレバイオティクスの作用機序は直接・間接作用および免疫系へのかかわりが考えられている。直接作用としては、抗菌作用とColonization Resistanceが考えられる。
E. Coli Nissle 1917はβ defensin 2を合成するし、偏性嫌気性菌は、他の細菌を抑制する働きがある(Colonization Resistance)。
間接作用としては、腸内細菌叢の代謝産物である酢酸やプロピオン酸などの短鎖脂肪酸の抗炎症効果が注目されている。
Bifidobacteriaは酢酸を介して病原性大腸菌をマウスモデルにおいて抑制する。
ビフィズス菌によるO157感染死の予防機構
(a)O157感染死を予防できる予防株ビフィズス菌はフルクトーストランスポーターを発現しているため、結腸末端という栄養源が乏しい環境でもフルクトースの代謝が可能で、非予防株ビフィズス菌よりも多量の酢酸を産生できる。その結果、O157の感染により生じるはずの結腸での軽い炎症は酢酸によって抑制されるため、腸管に多量に存在する毒素は血中へは移行せずマウスは生存する。
(b)O157感染死を予防できない非予防株ビフィズス菌はフルクトーストランスポーターを発現していないため、結腸末端でのフルクトースの代謝能が低く酢酸は十分には産生されない。その結果、O157の感染により結腸で軽い炎症が生じ、腸管のバリア機能が低下することで毒素は血中へ移行しマウスは死にいたる。

http://first.lifesciencedb.jp/archives/2284
Nature, 469, 543-547 (2011)

GPIアンカー型膜たんぱく質であるLy6/Plaur domain containing 8(Lypd8)分子が大腸上皮特異的に高発現しており、大腸管腔に恒常的に分泌され、大腸菌やプロテウス属菌などの有鞭毛細菌の鞭毛に結合し、運動性を抑制することで細菌の侵入を防止している。
また腸管の粘液を構成するムチンであるMuc2欠損マウスにおいては、内粘液層が形成されず、腸内細菌の大腸粘膜への侵入とそれによる大腸炎が認められる。
PNAS September 30, 2008 105 (39) 15064-15069;

ムチンのO型糖鎖修飾に必須であるcore 1 synthase, glycoprotein-N-acetylgalactosamine 3-beta-galactosyltransfrase 1(C1galt1)が欠損すると、Muc2欠損マウスと同様に内粘液層が形成されず、腸管炎症が発症する。

https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2017.890731/data/index.html

クロストリジウム目細菌群などの酪酸産生菌が食物繊維の発酵代謝により腸管内で酪酸を産生する。大腸粘膜固有層において酪酸がナイーブ T 細胞にエピジェネティックに作用することで、制御性 T 細胞のマスター転写因子であるFoxp3 遺伝子の発現を誘導し、ナイーブ T 細胞から制御性 T 細胞への分化を誘導する。大腸局所で誘導された制御性T 細胞は、大腸炎やアレルギーなどの免疫応答を抑制する。酪酸化でんぷんの摂取により腸管内の酪酸濃度を高めた場合にも同様に大腸炎やアレルギーを抑制できる。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim/29/3/29_145/_pdf
Nature. 2013; 504: 446‒450

Primary sclerosing cholangitis (PSC)患者において門脈菌血症がよく見られており、肝臓内のTH17細胞の活性化を引き起こす三種類の腸内細菌が高率に存在することを発見した。
Nature Microbiologyvolume 4, pages492-503 (2019)

この中の1つである、クレブシエラ菌は大腸の上皮に穴をあけ、腸管バリアを破壊し、腸管外にあるリンパ節に移行し肝臓内の過剰な免疫応答を誘導することに成功した。この肝臓内で起こるTH17免疫反応は、抗菌薬でクレブシエラ菌を排除すると30%程度に減弱することが示された。

https://www.amed.go.jp/news/release_20190115.html

イリヤ・イリイチ・メチニコフ (Ilya Ilyich Mechnikov)は白血球の貪食作用を提唱し、免疫系の研究において先駆的な研究を行った。ブルガリア旅行中の見聞から『ヨーグルトによる不老長寿説』を唱え、ヨーロッパにヨーグルトを普及させた。乳酸菌で大腸菌を駆逐しようとしたと考えられる。この考え方をもっと進めたものが便移植である。

難治性のClostridium difficile感染症に対して便移植(FMT:fecal microbiota transplantation)を行った結果、著明な改善を認めた。

N Engl J Med 2013; 368:407-415 DOI: 10.1056/NEJMoa1205037

炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)である潰瘍性大腸炎やCrohn病の原因は解明されていないが、これまでの多くの研究から、遺伝学的素因を有するものに、食事、衛生環境などの環境因子が加わり、腸内細菌に対する異常な免疫応答が引き起こされて発症する多因子疾患と考えられている。

IBDみられるDysbiosisを改善する治療法としてFMTが注目されているが、最近の系統学的レビューでは18例の潰瘍性大腸炎に対してFMTが施行され13例で効果を認めたとしているが、症例報告かケースシリーズによる報告が多く、publication biasを考慮する必要がある。FMTの前向き試験の最近の報告では良好な結果は出ていない。しかし、小児の潰瘍性大腸炎に対するFMTのPhase 1試験では有効性が示されており、年齢やDysbiosisの程度によって効果が異なることも考えられる。
日内科医師 104:35-41、2015

機能性胃腸症患者にFMTを施行し4週間後の便の性状を調べた慶應大学でのデータでは、19例の便秘患者のうち10例が正常化した。

もう一つのDysbiosis病である便秘について述べる。
便秘が大腸癌発生リスクを増加させるかどうかは不明である。2013年にAm J Gastroenterolに掲載されたメタアナリシスでは、17の症例対照研究では、慢性便秘と大腸癌には正の相関(OR 1.68 95%CI 1.29-2.18)を、8つの横断研究(OR 0.56 95%CI 0.36-0.89)と3つのコホート研究(OR 0.80 95%CI 0.61-1.04)では、慢性便秘と大腸癌は負の挿管にあると報告された。

Am J Gastroenterol. 2013 Jun;108(6):894-903; quiz 904. doi: 10.1038/ajg.2013.52. Epub 2013 Mar 12.

一方、慢性便秘のある28854名と便秘のない86562名を対象とした大規模後方視摘コホート研究では、1年後の大腸癌罹患率は、便秘群で2.7%に対して日便秘群では1.7%と便秘群で有意に高くオッヅ比は大腸癌で1.59(95%CI 1.43-1.78)、大腸良性腫瘍で2.60(95%CI 1.51-2.70)と有意差を認めている。


Aliment Pharmacol Ther 2014 40 83-92

Miyagi Cohort Studyで便秘や下剤使用が大腸がんリスクを増大させているという報告がなされた。宮城県在住の40-64歳の住民を対象に生活習慣に関する自己記入式アンケートを配布し、解答が得られた47605人(回収率92%)のデータ分析で、便通回数が1日一回以上のものに比べ、それ未満のものは、大腸がん発症リスクは1.35、下剤使用者は、未使用者に比べ大腸がん発症リスクは1.31と高値であった。統計上有意にはならなかったが、数値は上昇していた。

Eur J Cancer. 2004 Sep;40(14):2109-15.

慢性便秘症患者においては腸内細菌が乱れている。
Gastroenterology 150 367-379 2016

Clostridium difficileとBifidobacteriumが増加している一方、LactobacillusとFaecalibacterium prausnitziiが減少している。
セロトニン受容体やセロトニントランスポーター(SERT)が消化管の運動や知覚、分泌にかかわっている。セロトニンは 5-HT1、2、3、4 受容体等を介し、胃の適応性弛緩や消化管運動調節に関わるが、脳内にも存在し、食欲や情動調節に深く関わっている。脳内のセロトニンは 5-HT2c受容体を介し、胃排出能を抑制するとともに、胃運動を食後期のパターンに変化させる。消化管運動は生理的に脳腸相関の中で調節され、脳および消化管の双方の異常により、消化管運動異常を招来することが分かる。

日内会誌  99 2128-2133 2010

抗生剤を3日間投与したあとにFMTを施行した群と行わなかった群で7日目と15日目の便の排出量を比較した。便秘患者から行われたFMT患者は健常者に比べ排便回数は15日目に有意に減少し、排便量も少なかった。

FMT, fecal microbiota transplantation; FMT-C group, the group that received the fecal microbiota of constipation patients; FMT-H group, the group that received the fecal microbiota of healthy controls
Scientific Reportsvolume 7, Article number: 10322 (2017)

参:短鎖脂肪酸:酢酸やプロピオン酸や酪酸などのC2-4の脂肪酸のことであるが、ときにC6までの脂肪酸を含める事もある。
短鎖脂肪酸のpKa4.8付近であるから、体内や大腸管腔の生理的なpHでは短鎖脂肪酸の98%以上が解離した状態で存在する。
ヒトでは近位結腸が短鎖脂肪酸の主な産生部位であり、この部位で細菌の活動が盛んである。発酵しやすい難消化性糖類をたくさん食べれば、大腸内での短鎖脂肪酸産生が増える。ペクチンのような水溶性の食物繊維とセルロースのような非水溶性食物繊維とでは発酵のされ方が違うし、同じ野菜でも塊のまま食べるのとジュースにして飲むのでは発酵速度が違う。食物の大腸での停留時間が細菌の構成や発酵産物にも大きく影響する。
大腸内のpHの変動要因は短鎖脂肪酸ではなく、乳酸やコハク酸である。これらの吸収速度は短鎖脂肪酸の場合の1/100程度と遅い。
大腸には非解離型の短鎖脂肪酸が受動拡散によって吸収される機構と短鎖脂肪酸アニオンが陰イオン交換輸送家によって炭酸水素イオンと交換で吸収される機構がある。炭酸水素イオンとの交換輸送系は大腸内のpHを保つのに重要であり、管腔内の酸化が防止されることになる。しかし、乳酸やコハク酸を吸収しても炭酸水素イオンは分泌されない。したがって、乳酸やコハク酸が大量にできると、これらの酸は管腔内に蓄積して、管腔内のpHが5付近にまで低下する。
短鎖脂肪酸は大腸上皮のもっとも重要なエネルギー基質である。大腸管腔から上皮細胞に入った酢酸の約15%が上皮細胞によって消費される。残りは門脈を経て肝臓に入り、肝臓で半分以上が、エネルギー基質あるいは脂肪合成の基質として消費される。
また、大腸管腔内にプロピオン酸が共存すると、酢酸からトリアシルグリセロールへの合成を阻害する。
大腸上皮細胞に吸収されたプロピオン酸の約半分が上皮細胞のエネルギー基質として利用される。
吸収された酪酸は、大部分が大腸上皮細胞のエネルギー源として消費され、残りは肝臓で脂肪合成の基質として利用される。

消化管の表面に短鎖脂肪酸を塗ると粘膜内小動脈平滑筋を弛緩させて小動脈が拡張するために消化管粘膜の血液量が増える。
短鎖脂肪酸は大腸の粘膜増殖作用があり、酪酸>プロピオン酸>酢酸の順に作用が強い。
短鎖脂肪酸を回腸内に入れると、回腸の蠕動運動が亢進し、内容物の通過速度が上昇する。酢酸>プロピオン酸>酪酸の順に作用が強く、非解離性の短鎖脂肪酸よりも短鎖脂肪酸アニオンの方が、強い作用を発揮する。この作用は大腸内容物が回腸へ逆流した時に、内容物を大腸へと押し戻すのに役立つと考えられている。
結腸の最後の方の内容物を洗い流しておいて、そこに短鎖脂肪酸を入れると数秒後に強い収縮が起こり、肛門側へ移動する、最初の収縮を起こさせるのは、酪酸やプロピオン酸で、酢酸にはこの作用はない。また、遠位結腸は短鎖脂肪酸によって収縮を起こすが、盲腸や近位結腸は収縮しない。続いてみられる弛緩作用の強さは酪酸>プロピオン酸>酢酸の順である。盲腸や近位結腸では蠕動が起こっても完全にくびれることは稀であり、常に内容物が入っている。短鎖脂肪酸の消化管弛緩作用は、発酵部位の内容積を確保し、複雑な微生物生態系を維持していると考えられる。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jos1996/46/10/46_10_1205/_pdf

新便秘薬
Lubiprostoneは大腸粘液分泌量を増加させる。
Dig Dis Sci. 2012 Nov; 57(11): 2826-2845.

Lubiprostoneは小腸でムチンの分泌量を増加させる。

BMC Gastroenterology2012 12:156

Lubiprostone投与において細菌の侵入(Bacterial Translocation)が抑制される。


Gut Microbes 3(3):250-60

参:Lubiprostone(アミティーザ)
腸管粘膜上皮細胞の基底膜側にあるNa+-K+-2CL-共輸送体などを介して粘膜上皮細胞内に取り込まれたCL-は、管腔側の小腸上皮頂端膜に存在するClC2クロライドチャンネルを介して腸管腔内に移動する。それに伴い、Na+も受動的に腸管内腔に移動し、その結果、腸管内腔へ水が分泌される。Lubiprostoneは、小腸上皮頂端膜に存在するClC2クロライドチャンネルを活性化し、腸管内への水分分泌を促進し、便を柔らかくし、腸管内の輸送を高めて排便を促進する。

https://mylan-e-channel.jp/ja-jp/%E8%A3%BD%E5%93%81%E6%83%85%E5%A0%B1/%E3%82%A2%E3%83%9F%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%82%B6/%E8%A3%BD%E5%93%81%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E6%83%85%E5%A0%B1/%E4%BD%9C%E7%94%A8%E6%A9%9F%E5%BA%8F

脳腸相関:脳と腸は相互に情報伝達・情報交換を行っており、互いに作用を及ぼし合う関係である。ホルモンやサイトカインなどの液性因子や自律神経系のネットワークを介した作用機序が明らかになってきた。

無菌マウスは外界からのストレスに対して過敏で、アレルギーを抑制する力が弱いが、細菌を植え付けることにより次第にアレルギー症状が抑えられる。
腸内細菌という外界因子にさらされることで成熟し、十分な機能を持つことでアレルギーの抑制力が高まると考えられる。
通常マウスと無菌マウスにストレスを与えた際のACTHとコルチコステロンの分泌量は明らかに異なった。

人工細菌叢マウスとしてバクテロイデス属の腸内細菌叢を持つマウスでは、無菌マウスとの差はなく、ビフィドバクテリウム属の細菌叢を持つマウスでは、通常マウスと同じ程度までACTHの反応が減少した。

脳内神経成長因子と脳内伝達物質の濃度を無菌マウスと通常マウスで比較したところ、無菌マウスでは海馬や前頭葉でのBDNF(脳由来神経栄養因子)濃度が、通常マウスに比べ有意に低下していた。
無菌マウスは通常マウスに比べ、高い不安を感じた時に起こす行動『多動』が多く見られ、攻撃的な性質を持っている。
外界からの刺激に応答して発現する遺伝子の1つであるc-fosの発現の増強が視床下部でみられており、求心性の迷走神経線維を破壊したマウスでは見られなかった。
また、セロトニンの受容体の機能を止めると反応が抑えられており、『腸内細菌によって腸クロム親和性細胞から遊離されたセロトニンが迷走神経あるいは脊髄求心神経末端のセロトニンレセプターに作用し、孤束核を経由する経路』が存在すると考えられる。
クロストリジウム属細菌により作られる酪酸が抗うつ作用を持つことが実験で示され、酪酸投与マウスで、脳内の海馬や前頭葉でBDNFが増加していることが確認された。
https://www.yakult.co.jp/healthist/242/img/pdf/p02_07.pdf

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