川村所長の勉強会参加記録
2025.03.16
慢性便秘症治療の使用時に考慮したい医薬品情報 安島秀友先生
2025年3月15日
演題「慢性便秘症治療の使用時に考慮したい医薬品情報」
演者:横浜市立大学附属病院薬剤部 安島秀友 先生
場所:
内容及び補足「
治療薬を処方する際の医薬品情報の関連をみてみると、下図のように考えることがでる。
学術論文などのデータを元に、ガイドラインの記載や臨床試験の結果を基に、その病態に応じた薬剤を選別し、その薬剤のより詳しい情報を添付文章やインタビューフォームにおいて確認し、使用薬剤を決定する。使用した後の作用や副作用をモニターして、継続使用をするかどうかを判断することになる。
この添付文章やインタビューフォームはPMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構:Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)で調べることができる。
https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/0003.html
添付文書は医薬品、医療機器、医薬部外品、化粧品において、警告や使用上の注意、品目使用、その他の重要事項を記載した、医薬品の使用者や医師、薬剤師向けの製品情報を記載した書面であり、薬機法に基づいて作成された公文章である。また添付分小は電子化され公開する必要があることも定められている。
添付文書における副作用の発生の記載は、治験の条件に置いてのことであり、服用量や併用薬、既往症、投与期間といった条件によって異なってくる。
参:2021年8月より、医薬品等の外箱に表示されているバーコードをスマートフォンやタブレットのアプリケーションなどを使って読み取ると、インターネットを経由して最新の添付文書を閲覧できるようになった。
https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/0003.html
インタビューフォームとは、処方箋医薬品の添付文章では不十分な情報を補うために企業から提供される総合的な情報提供所である。日本病因薬剤師会が要領を策定し、作成と配布を製薬企業に依頼している。製品の薬学的特徴、製剤の安定性、注射剤の溶解後の安定性、使用上の注意の設定理由、毒性などといった薬剤師が必要とする医薬品情報のうち、添付文章では十分に得られない情報を収載している。
アミティーザ(ルビプロストン)の添付文章の用法および用量の欄は下記のように記載されている。
https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/medley-medicine/prescriptionpdf/671450_2359006M1025_3_02.pdf
どうして食前投与になっているかの説明はない。
アミティーザのインタビューフォームのP15には下記のようにその理由が記載されている。
薬理作用についてもP28で下図のように説明している。
食事の影響は、食後のCmaxは空腹時と比較し薬1/2になっているが、AUC波動程度、食後のTmaxは空腹時に比べ遅延しており、食事によりアミティーザの吸収量は変化を受けないが、吸収速度は影響を受けるとP34に記載されている。
非がん性慢性疼痛に伴うオピオイド誘発性便秘症に対する海外第Ⅲ相試験(0631および0632試験)、海外第Ⅲ相長期投与試験(06S1試験)の結果もP21-23に記載されており、令和3年10月に効能が追加認定された情報が記載されている。
添付文書では、妊婦には禁忌と記載されているが、
インタビューフォームのP41には下記のように記載されており、より詳細な情報が提供されている。
https://www.viatris-e-channel.com/viatris-products/di/detail/assetfile/Amitiza_Cap_IF.pdf
リンゼス(リナクロチド)の添付文章の用法及び用量には、
としか記載されていない。
https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/medley-medicine/prescriptionpdf/800126_2399017F1020_1_06.pdf
リンゼスのインタビューフォームのP10の記載は、以下のように、食全投与の法が食後投与に比べ副作用が少ないために、食前投与になっているとの理由が記載されている。
また、P52には薬理作用の図が記載され、リナクロチドが、14個のアミノ酸からなるグアニル酸シクラーゼC(GC-C)受容体作動薬であり、結腸上皮細胞に発現するCG-C受容体を活性化し、細胞内のcGMP濃度を増加させ、管腔内への腸液分泌が亢進し、腸管輸送を促進する作用の他に、ストレスや大腸炎によって引き起こされる大腸痛覚過敏を抑制し、排便異常並びに腹痛/腹部不快感の改善に寄与している可能性が記載されている。
file:///C:/Users/jeffb/Downloads/DocNo202311603_y.pdf
グーフィス(エロビキシバット)の添付文章
https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/medley-medicine/prescriptionpdf/111890_2359008F1025_1_06.pdf
グーフィスのインタビューフォームP10には、グーフィスの作用機序などの説明も記載されている。
グーフィスの作用機序は回腸末端部における胆汁酸の再吸収阻害であり、効率よく効果を発現させるためには食事等の刺激により胆汁酸が十二指腸に放出される以前に投与されていることが望ましい。昼食前や夕食善の投与でも当職前頭よと同様に十分な効果を示すことが治験で確認されており、現代においては、朝食を摂取する習慣のない患者も多数存在すると考えられるので食前投与で設定された。
作用機序はP37-38に表示されている。
大腸内の水分分泌と大腸運動促進のデュアル効果が期待できる薬剤である。
授乳への移行に関しては、ラットへの単回投与のT1/2は11.3時間であり、授乳中放射線濃度は投与8時間後にCmaxを示した後、7.6時間のT1/2で減少し、乳汁中放射線濃度は血漿中放射線濃度と比較して緩やかに増加する傾向が認められた。乳汁中放射線濃度が結晶中放射線濃度を上回った時点は投与8時間後(血漿中濃度の1.30倍)のみであり、乳汁中放射線濃度は結晶中濃度を大きく上回ることはなく、同等かそれ以下であった。そのことを踏まえてP53に以下のように記載されている。
妊婦への記載はP52に以下のように記載されている。
https://med.mochida.co.jp/interview/gof_n7.pdf
これらの情報は、いろいろなデータがPMDAに寄せられて初めてよりよいものになっていく。そのために、薬剤の副作用が出現した場合には、PMDAの安全対策義務「医薬関係者からの報告」に是非報告してほしい。
https://www.pmda.go.jp/safety/reports/hcp/0002.html