その他

2017.06.19

ドライアイの診断と治療 藤島 浩 先生

2017年6月8日 
演題「ドライアイの診断と治療」
演者:鶴見大学歯学部眼科教授 藤島 浩 先生
場所: ホテル横浜キャメロットジャパン
内容及び補足「
ドライアイ:涙の量や質に変化が起き、目を守るために必要な涙の量が不足したり、瞬きが検証したりして涙が均等にいきわたらなくなる疾患。高齢化、エアコンの使用、パソコン、スマートフォンの長時間の使用、コンタクトレンズ装着により増加し、現在日本人で2200万人いるといわれている。

https://www.santen.co.jp/ja/healthcare/eye/library/dryeye/

涙は、眼球外上側にある涙腺で作られ、瞬きで目の表面に広がります。大半は、目頭にあるある「涙点」という小さな穴から鼻の奥に排出され、一部は目の表面から蒸発する。

http://www.nichigan.or.jp/public/disease/img/dryeye1.jpg

涙液のダイナミクス:
涙は、涙腺から1~2μl/min分泌され、10%ほどが蒸発する。残りの90%は涙点より排出される。
眼球の上方の結膜嚢に4.5μl、眼球露出部表面に1.1μl、涙液メニスカス(三日月部分)に2.9μl分布しているといわれている。
瞬目は平均14.3回/分行われており、この瞬目により、涙液は眼表面にいきわたる。

涙の機能としては、乾燥防止、洗浄、殺菌、栄養補給、鮮明な画像が結べるように同行の表面を滑らかに保つことなどが挙げられる。
涙の最表面層は油層で乾燥を防ぐ働きがあります。その下にムチンを含んだ液層がありこれらが目の表面の細胞を覆っている。

https://www.santen.co.jp/ja/healthcare/eye/library/dryeye/

ドライアイの定義
2006年のドライアイ研究会による定義
『ドライアイとは、さまざまな要因による涙液および角膜上皮の慢性疾患であり、眼不快感や視機能異常を伴う。』と定義され、1.自覚症状、2.涙液異常、3.角結膜上皮障害の三つを満たした場合、ドライアイの確定診断としていました。
ドライアイ診断における確定例と疑い例
自覚症状:あり 涙液異常:あり 角結膜上皮障害:あり…ドライアイ確定
自覚症状:あり 涙液異常:あり 角結膜上皮障害:なし…ドライアイ疑い
自覚症状:なし 涙液異常:あり 角結膜上皮障害:あり…ドライアイ疑い
自覚症状:あり 涙液異常:なし 角結膜上皮障害:あり…ドライアイ疑い
であったが、判断が少々込み入っているので、2016年に『BUt5秒以下かつ自覚症状(含不快感、視機能異常)を有する』という定義に変更となった。この為、ドライアイと診断される患者数は増加している。
http://www.dryeye.ne.jp/public_dryeye/teigi/img/definition.png

参:角膜上皮障害の検査
シルマー試験:
専用のろ紙を眼瞼の縁にはさんで、5分間でどのくらいの長さがぬれるかを調べる検査

BUT(Tear Break Up Time)検査:フルオレセインという染色液を少量点眼し、瞬きを止め、眼の乾燥とともに色素が消える時間を測定する検査。10秒以上が正常、5秒以下ならドライアイの可能性が高い。

症状:

ドライアイの危険因子:
(1)年齢:
 加齢による涙の分泌量の量や質の低下。
(2)性別:
 女性のほうが男性よりドライアイになりやすい。
(3)過度のVDT(visual display terminals)作業
 パソコン、スマートフォンなど、モニターを長時間見つめる作業。
(4)乾燥した環境
 冬の乾燥した季節やエアコンの吹き出し口に当たるところなどの環境。
(5)コンタクトレンズ:
 特にソフトコンタクトレンズ装用者で多い。
(6)喫煙
 たばこの煙に曝されると、涙の質が悪くなる。
(7)内服薬
 降圧薬や向精神薬など「抗コリン作用」を持つ薬で、涙の分泌量が減少する。また、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(商品名:ティーエスワン)などの抗癌剤でも涙の分泌量が減少。
(8)点眼薬
 点眼薬の中には、涙の安定性を低下させたり、角膜に障害を与えやすくなる成分が含まれていることがあり、点眼薬の中に含まれる防腐剤などによる障害も起こりやすくなる。
(9)マイボーム腺機能不全(MGD)
 加齢に伴う眼瞼の縁にあるマイボーム腺の詰まりによる、油成分分泌低下。
(10)結膜弛緩症
 加齢に伴う、結膜部分(白目の部分)の弛みのため、眼表面で涙が留めにくくなること、また、弛んだ結膜と眼球の摩擦により眼表面に傷つきやすくなること。
(11)全身の病気に伴うもの
 涙腺、唾液腺に対する自己免疫疾患であるシェーグレン症候群では、強いドライアイを生じることがしばしばみられる。

病態:
涙液層と表層上皮の間に悪循環(コア・メカニズム)が生じること
悪循環には、さまざまな要因(上記危険因子)が関与すること
症状(眼不快感、視機能異常)があること
つまり、リスクファクターがコア・メカニズムをひきおこしてドライアイが生じると考える。
その橋渡しのメカニズムとして、1.涙液減少、2.涙液層の水分蒸発、亢進3.表層上皮の水漏れ性の低下、4.瞬目時の摩擦の亢進、が挙げられる。

京都府医大誌 122(8)、549-558.2013

治療
ドライアイの理想的な治療は、この橋渡しのメカニズムを想定しながら、リスクファクターを見つけ、それぞれにたいして治療を行うことである。

涙液層は開瞼後に眼表面に形成されるが、その過程は大きく二つに分けられる。
1つ目は、開瞼時の角膜表面への涙液の水分の塗り付け過程であり、2つ目は、開瞼後の油層の情報進展によってもたらされる角膜上方への水分移動に基づく涙液層の形成過程である。
この二つの過程は、BUT検査では測定できないものであるが、これらの過程を考えながら、涙液層の破壊を観察することは重要である。
京都府立医科大学の横井らは、涙液層の破壊パターンが4つに分類可能であると提唱している。
Spot break(下図左上):開瞼直後に見られる特徴的な類円形の涙液破壊であり、角膜上皮の水漏れ性低下が原因と考えられる。
Area break(下図右上):涙液の水分が極端に少ないために油層の上方伸展が得られない場合に、油層の上方伸展でもたらされるはずの水分の上方移動が得られず、角膜の広い範囲にわたって開瞼直後から涙液層の形成が得られないもの。
Line break(重度-下図左下、軽度-下図右下):油層の上方伸展によってもたらされる水分の上方移動の途中で、角膜下方に見られる線状の涙液層の破壊である。軽症~中等症の涙液の水分減少がそのメカニズムとして考えられる。

シェーグレン症候群の角膜上皮障害に対する3%軸あほソルナトリウム点眼効果(左:点眼全、右:3か月点眼後)人口涙液の頻回点眼では、改善のない角膜障害が著明に改善している。

難治性の糸状角膜炎に対する2%レバミピド点眼液の効果(左:点眼全、右:1ヵ月点眼後)。人口涙液の頻回点眼および低力価ステロイド点眼液では、全く改善が得られなかった角膜糸状物が、レバミピド点眼により消失しているのがわかる。

点眼液で効果が得られない場合には、涙点閉鎖による治療を行う。涙の排出口である涙点を閉鎖して、涙の流出を抑え、眼の表面に涙をためる治療である。シリコンや合成樹脂性ン涙点プラグを挿入する。

https://www.santen.co.jp/ja/healthcare/eye/library/dryeye/

シェーグレンの口腔内乾燥症治療薬のサラジェンなどの投与でも、ドライアイの改善がみられる。

参考サイト
ドライアイ研究会
日本眼科学会
Santen:A Clear Vision For Life

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