循環器系

2022.10.26

余談の多い心房細動のはなし 村川裕二 先生

2022年10月14日 

演題「明日からの診療に役立つAFセミナー in Kawasaki 余談の多い心房細動のはなし」

演者: 村川内科クリニック院長 村川裕二 先生

場所: 川崎市医師会館

内容及び補足「

脳卒中は下図のように、血管が詰まる病型と血管が裂ける病型に分けられる。

聖マリアンナ医科大学東横病院脳卒中センター(HP/2011/6)による『脳卒中とはどんな病気?』から

http://earthresources.sakura.ne.jp/er/Etc_RH.html

 

人種別脳出血の頻度を見てみると、日本人で多いことがわかる。下図は10万にあたりの数字である。

Drugs volume 69, pages633–647 (2009)

https://link.springer.com/article/10.2165/00003495-200969060-00001

脳卒中急性期患者データベース(JSSRS)は1999年に構築され、2015年には約110施設、約101100例のデータベースとなっている。TIAを除く95844例のデータ解析で脳梗塞72777例、脳出血17723例、くも膜下出血5344例の解析を行った。

脳梗塞72777例の内訳はアテローム血栓性脳梗塞26.8%、アテローム血栓性塞栓6.4%、ラクナ梗塞31.2%、心原性脳塞栓27.7%であった。

2000年の発表された日本の16922例のJ-MUSIC研究では、アテローム血栓性脳梗塞・塞栓は33.3%、ラクナ梗塞38.8%、心原性脳塞栓21.8%でラクナ梗塞が最多であったが、今回の結果では心原性脳塞栓が増加した。 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 

出血性脳卒中23067例の63.3%は高血圧性脳出血、1.6%脳動脈奇形(AVM)からの出血、11.9%はその他の脳出血、23.2%はくも膜下出血であった。

出血性脳卒中の原因別比率の年次経過は下図のようでありくも膜下出血は、27.3→24.5→21.2→19.9%と徐々に減少し、高血圧性脳出血が59.7→61.2→64.7→67.6%と徐々に増加している。

脳卒中の発症年齢分布をみてみると、AVMからの出血は発症年齢が若く、次いでくも膜下出血であった。逆に心原性脳塞栓が最も高齢で発症する頻度が高かった。

今回の心原性脳塞栓20134例のうち13791例(68.5%)に心房細動を認めており、高齢者における心房細動が原因となっている発症している例が多いと考えられる。

脳卒中データバンク 2015 2015 19-20

 

脳梗塞発症後10年で約5割が再発し、アテローム血栓性脳梗塞や心原性脳梗塞は同じ病型で再発しやすい(J Neurol Neurosurg Psychiatry 2005;76:368-72)ことから病型別の脳梗塞危険因子の解析は、再発予防の観点からも有用である。脳卒中データバンクの登録症例のうち、脳梗塞病型の明らかな31527例(ラクナ梗塞10828例、アテローム血栓性梗塞9227例、アテローム血栓性塞栓2288例、心原性脳塞栓症9184例)、および一過性脳虚血発作(TIA)2752例を対象に、検討したデータでは、いずれの病型も70歳代をピークに分布した。70歳代ではアテローム血栓性脳梗塞の頻度が最も高く、70歳未満ではラクナ梗塞が最多となり、80歳以上では心原性脳塞栓が最も頻度の高い病型であった。

男性の頻度はラクナ梗塞で62.0%(69.7歳)、アテローム血栓性脳梗塞63.2%(71.8歳)、心原性脳塞栓56.0%(74.7歳)、TIA 64.6%(68.9歳)であり、心原性脳塞栓で男性の頻度が少ない結果であった。

いずれの病型においても約三割に脳卒中の既往を有し、約二割に脳卒中の家族歴を有した。

また、いずれの病型において高血圧は60%以上に認め、糖尿病、脂質異常症はラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞に多い傾向が認められた。脂質異常症は心原性脳塞栓で少なかったが、心房細動は、心原性脳塞栓症の72.3%に認め、ほかの病型では少なかった。

ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞を比較すると、痰変量解析では高血圧を除くすべての項目で有意さを認めた。女性がラクナ梗塞の危険因子となり、それ以外はアテローム血栓性脳梗塞の危険因子として有意となる結果であった。

脳卒中データバンク 2009 2009 60-61

 

脳梗塞の四つのタイプ別に危険因子を見てみると心原生脳塞栓の場合には心房細動が高頻度である。

25の企業診療所、9の地域社会健康診断センター、5の地方自治体から収集した40歳以上の630138例の被験者データを解析した。男性は約47%で、50~59歳31%、40~49歳27%、60~69歳は23%であった。

心房細動の有病率は、男女ともに高齢になるにしたがって高頻度になった。男性のほうが有意に多く、全体では、女性の約3倍であった。

心房細動の危険因子となりえる基礎疾患の有病率を見てみると、高血圧、糖尿病、心疾患は男女とも心房細動を有する群で有意に多く、アルコールの飲酒は男性において、心房細動群で多く、高コレステロール血症と現在の喫煙は関連が見られなかった。

Int J Cardiol 2009 137 102-107

https://www.internationaljournalofcardiology.com/article/S0167-5273(08)00825-5/fulltext

 

久山町研究(1961-1993年)によれば、40歳以上の一般住民の脳塞栓症の発症率は(/1000人年)は、男性1.3、女性0.5で、男女比は2.6と男性に多い、加齢に伴い増加しており、心房細動の発症率に加齢と年齢差にあることに起因している。

心房細動発症の危険因子は女性では弁膜症の存在が大きい。

剖検にて脳梗塞が確認された131例の心疾患と脳梗塞病型の頻度は、心房細動を伴う心弁膜症では半数に脳塞栓症を、18%にラクナ梗塞が認められた。非弁膜症性心房細動では、弁膜症性心房細動とほぼ同頻度に脳梗塞はきたすが、ラクナ梗塞はやや多く認められた。心房細動を認めない心弁膜症では30%に脳塞栓症を、40%にラクナ梗塞を認めた。心筋梗塞では、脳塞栓の頻度は減りラクナ梗塞が40%を超えた。心疾患なしの例では脳塞栓症は10%以下であるがラクナ梗塞は60%にのぼった。

年齢と心弁膜症の有無を調整した場合、高血圧を伴わない例では、心房細動を有する群で約三倍高頻度であるが、高血圧を伴うと心房細動の有無による差は小さくなるがやはり高頻度であった。

循環器専門医 1998 6 19-26

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcsc/6/1/6_KJ00002081842/_pdf/-char/ja

 

年齢とともに疾患が増える場合のモデルとして、1年齢とともに疾患発症頻度が増える、2ハイリスク群とローリスク群が混在している、3いろいろなグレードのリスク群が混在している、場合が考えられる。

 

元フラミンガム心臓研究コホートの40年間の追跡調査中に心房細動を発症した55~94歳の被験者の死亡率を検討した。5209例中男性296例、女性325例が心房細動を発症した。心房細動は男性で1.5および女性で1.9倍の死亡リスクであった。

心房細動の発生率は加齢に伴い増加し、1000人年あたりの年間発生率は、55~64歳では、男性で約3.1例、女性で1.9例、85~94歳では男性で38.0例、女性で31.4例に上昇した。心房細動に伴う脳卒中のリスクは、50~59歳の時には1.5%であるが、80~89歳では23.5%に上昇した。

死亡リスクおいては心房細動になると若年者においては経年変化とともに上昇してくるが、高齢になると経年変化における上昇の差は目立たない。しかし、心房細動発症直後から死亡率の上昇があることは注目しておく必要がある。

A, Kaplan-Meier mortality curves for subjects aged 55 to 74 years. A log-rank test gave chi-square values of 42.90 for men (P < .0001) and 70.93 for women (P < .0001). B, Kaplan-Meier mortality curves for subjects aged 75 to 94 years. A log-rank test gave chi-square values of 51.44 for men (P < .0001) and 101.51 for women (P < .0001).

Circulation. 1998;98:946–952

https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/01.CIR.98.10.946

 

1992年から2002年までの心房細動罹患率、ワルファリン使用及び心房細動患者における脳卒中リスクとの関係を調査した。

心房細動罹患率は1992年では3.2%であったが2002年には6.0%に増加した。

Stroke 2006 37 1969-1974

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/01.STR.0000230607.07928.17

 

ASO閉塞性動脈硬化症の患者さんの症状で間欠性跛行や四肢虚血に伴う皮膚の変色がある。

抹消動脈疾患(PAD)患者における心血管イベントリスク(心筋梗塞、虚血性脳卒中及び血管死)は年間約5~7%である。症状がないControl群、間欠性跛行を認めるIC群、重篤な四肢虚血を認めるCLI群の死亡率は下図のように、病態が重篤になるほど、予後不良となる。

REACH調査で症候性PADと診断された患者のうち4.7%が冠動脈疾患を併発しており、1.2%が脳動脈疾患を併発、両者を有する者は1.6%であった。脳血管よりは冠動脈疾患との関連が強い結果であった。

J Vascular Surgery Vol 45 S5-S67 2007

https://www.jvascsurg.org/article/S0741-5214(06)02296-8/fulltext

 

PAD患者は、PADにり患していない人よりも心房細動のリスクは有意に高かった(HR1.29)。一方、心房細動患者は、非心房細動患者と比較してPAD発症リスクは高くなかった(HR1.00 )。心房細動とPADの両方が脳卒中のリスクを増加させ(HR1.29および1.41)、相加的な増加であった。

Int J Cardiol 2016 203:204-11

https://www.internationaljournalofcardiology.com/article/S0167-5273(15)30654-9/fulltext

 

1992年から2002年までの心房細動罹患率、ワルファリン使用及び心房細動患者における脳卒中リスクとの関係を調査した前述した研究において、心房細動患者では、ワルファリン使用は1992年の24.5%~2002年の56.3%に有意に増加した。1000人年あたりの脳卒中患者は、虚血性脳卒中では、1992年の46.7から2002年の19.5に低下したが、出血性脳卒中では有意な変化はなかった。

しかし、ワルファリン使用の頻度は年々増加してるが、CHADS2スコア別での差はほとんどなかった。

Stroke 2006 37 1969-1974

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/01.STR.0000230607.07928.17

 

ワルファリン使用により死亡率が改善した。

Stroke. 2015;46:3488-3493.

file:///C:/Users/jeffbeck/Downloads/STROKEAHA.115.011139.pdf

 

ワルファリン作用機序はビタミンKの拮抗作用である。

通常安定な酸化型(quinone form)で存在するビタミンKは、細胞内でビタミンK還元酵素の作用により還元型(hydroquinone form)となる。この還元型ビタミンKを補酵素としてガンマカルボキシラーゼがグルタミン酸残基のガンマ位から水素を引き抜き、一分子のCO2を添加し、Gla残基に変換する。このように酸化還元反応を通じてビタミンKが再利用されるためビタミンKサイクルと呼ばれる。このうちのビタミンKエポキシド還元酵素、ビタミンK還元酵素(大量投与時)をワルファリンは阻害する。

ワルファリンはVKORを阻害するアンタゴニストであるが、高容量投与時にはビタミンK還元酵素も阻害する。ワルファリンを投与するとビタミンK依存性凝固因子の濃度が低下し、その結果、抗凝固作用を発揮するが、同時に凝固抑制因子であるプロテインCなども低下するため凝固能も低下する。ビタミンK依存性凝固因子、凝固制御因子の半減期を見てみると下の表のようになる。

つまり7、プロテインC<9<プロテインS、10<2(プロトロンビン)の順で半減期が長くなり異なっている。ワルファリン投与直後においては凝固能が更新することがあり得るので、ワルファリン導入時にはヘパリンなどの別の抗凝固療法下で行う必要がある。

https://square.umin.ac.jp/transfusion-kuh/related/VitKprotein/index.html

 

ワルファリン開始の最初の30日間に、虚血性脳卒中のリスクの71%の増加が観察された。リスクは最初の週に最も高く、開始後3日でピークに達した。30日を超えた後は、有意に虚血性脳卒中リスクは減少した。

https://academic.oup.com/eurheartj/article/35/28/1881/529194?login=false

 

2009年1月1日から2010年12月31日目でのMarket Scanデータベースからワルファリン開始時から30日間の虚血性脳卒中の発生率を比較した。30日を超えたところでワルファリン投与群と非投与群の線が交差している。

30日までを拡大してみると明らかにワルファリン投与群で虚血性脳卒中の頻度が高いことが確認された。

Stroke. 2017 Jun;48(6):1487-1494

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/STROKEAHA.116.015535

 

ビタミンKは骨郷土に影響していると考えられており、ワルファリンの投与により骨粗鬆症性骨折のリスクが上昇することが懸念される。2000年から2010年に心房細動の発症を有する20000人の参加者で骨粗鬆症性骨折の発症頻度を検討したが、有意な差はみられなかった。

Osteoporos Int. 2014 Jun;25(6):1677-84.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24833176/

 

2010年1月1日から2014年12月31日までに当たらにAfと診断された51946人のうちダビガトランとワルファリンの新規投与者10279人のうちダビガトラン3268人とワルファリン4884人で追跡調査を行った。10279人のうち129人に骨粗鬆症性骨折を認め、ダビガトラン使用者34人(1.0%)、ワルファリン使用や95人(1.4%)であった。骨折の既往がある群においてはワルファリン投与群で有意に骨粗鬆症性骨折が多く見られた。

JAMA. 2017;317(11):1151-1158

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2612616

 

参:

2010年1月1日から2015年9月30日まで経口抗凝固役を処方された非弁膜症性心房細動患者167275人(女性38%男性62%、平均年齢68.9歳、平均16.9か月の経過観察)において817人の股関節骨折、2013例の骨折による入院、合計7294例の骨折を認めた。ワルファリンに比べDOACにおいて骨折の頻度は少なく、特に骨粗鬆症と診断された症例においてより骨折予防効果が強いと考えられた。

JAMA Intern Med誌電子版に2019年11月25日

 

DOACは非弁膜症性の心房細動に使用し、弁膜症性心房細動においてはワルファリンが使われる。機械弁の装着に伴い、血流のうっ滞から内因系の活性化が、血管内皮機能障害から外因系の活性化が起こるため、DOACでの凝固因子活性化抑制では不充分で、ワルファリンによる多因子抑制が必要である。

大動脈弁または僧帽弁に対して機械弁を用いた弁置換術を受けた252例の患者のうち、168例にダビガトラン、84例にワルファリン投与された。172例が大動脈置換で、71例が僧帽弁置換、9例が療法を置換された。ダビガトラン群の99例、ワルファリンの59例の患者で延長試験が行われた。平均治療期間はダビガトラン群で143日、ワルワリン群で152日であった。ダビガトラン群では、脳卒中が9例(5%)、心筋梗塞が3名(2%)で起こり、ワルファリン群では発症者はいなかった。機械弁置換術を行った症例においては、ダビガトラン群で血栓塞栓症も、出血も多く認められた。

N Engl J Med 2013;369:1206-14

 

心房細動が起きてから5年間で10%に虚血性脳卒中が見られる。この頻度は近年になっても大きな変化はない。抗凝固療法を行ってもいても差は出ていない。

J Am Heart Assoc. 2016;5:e003408

https://www.ahajournals.org/doi/pdf/10.1161/JAHA.116.003408

 

非弁膜症性心房細動が言われだしたのは調べてみるとはっきりと記載している資料は見つからない。

19世紀末か20世紀初頭から脳卒中と心疾患に関連があることがわかってきた。特に僧帽弁狭窄症や感染性心内膜炎があると脳卒中が多くなることに気付いた。

20世紀中ごろから心房細動のある僧帽弁狭窄が危険であることが分かった。

人物で検索してみると1949年ボストン市立病院のFisher C.M.が、僧帽弁狭窄のない出血性脳梗塞3例で、脳内に血栓塞栓を認めず、心房細動があり腎梗塞、脾臓梗塞を認めた症例を、非弁膜症性心房細動による脳卒中症例として報告した。

https://en.wikipedia.org/wiki/C._Miller_Fisher

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/01.STR.27.3.559

Stroke. 2012 | Volume 43, Issue 7: 1739–1740

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/STROKEAHA.112.661512

 

ARISTOTLE試験

プロトコール時点において減量基準が下記のように定められていた。

Eur Heart J 2014 35 1864-1872

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8175828/

 

有効性については、6か月後ぐらいから、ワルファリンの曲線と少し差が見られていたが、年月が経つにつれ、差が縮まっているが、副作用の大出血については年月が経つにつれて広がっている。DOAC(アピキサバン)は、ワルファリンと比較して出血を起こさないで、同程度に脳梗塞を予防する薬剤であるといえる。

N Engl J Med. 2011; 365: 981-92.

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1107039

 

ARISTOTLE試験のサブ解析で日本人336例(アピキサバン群161例、ワルファリン群175例)の解析が発表された。

主要評価項目である脳卒中+全身性塞栓症の発生率は、アピキサバン群で0.87%/年、ワルファリン群で1.67%/年と有意さを認めた。内訳をみると虚血性+原因不明の脳卒中はアピキサバン群で0.87%/年、ワルファリン群で1.11%/年、出血性脳卒中はアピキサバン群では0%/年、ワルファリン群で0.55%/年であった。全死亡でも1.74%/年に対して3.02%/年で、心筋梗塞の発生でも0%/年に対して0.28%/年と有意さを認めた。

https://pfizerpro.jp/cs/sv/eliquis/product_info/symptom01_evidence/index02.html

安全性においては、ISTH基準による大出血は、アピキサバン群で1.26%/年(160例)、ワルファリン群で5.99%/年(175例)で有意さを認めた。頭蓋内出血はアピキサバン群では認めておらず、ワルファリン群で1.97%/年だった。消化管出血では、0.63%/年、1.97%/年と有意さを認めた。

https://pfizerpro.jp/cs/sv/eliquis/product_info/symptom01_evidence/index03.html

https://pfizerpro.jp/cs/sv/eliquis/elq-navi/remotemr/j-eld.html

 

J-ELD Afレジストリ

3031例の75歳以上の日本人非弁膜症性心房細動患者を対象に、アピキサバンを使用し、原料基準により標準容量群1284例と減量容量群1747例に割り付けた試験。

主要評価項目は脳卒中または全身性塞栓症、入院を要する出血で、両群間で主要評価項目の発生率に有意差は認めなかった。

C Total death D Cardiovascular death

CHADS2スコアはStandard doseで2.8±1.1、Reduced doseで2.9±1.1と有意差はなかった。

Clin Cardiol. 2020 Mar;43(3):251-259.

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/clc.23294

 

アピキサバン血中濃度との関係をサブ解析で評価しており、減量基準に当てはまった低容量群では血中濃度が高い群で出血イベントが有意に多かった。

https://tachibanadai-clinic.jp/director/2328/

 

非弁膜症性心房細動を有する121280例の患者のうちCHADS2のスコア0の低リルクのひとの血栓塞栓症の人は、100人年で1.67、スコア1で4.75であった。心不全、高血圧、糖尿病でリスクは上昇したが、一番リスクが高いのは75歳以上の群であった。

BMJ. 2011 Jan 31;342:d124

https://www.bmj.com/content/342/bmj.d124

 

2020年に不整脈薬物治療ガイドラインが改定された。抗凝固療法を「考慮可」とするその他の危険因子として、従来の心筋症、年齢(65~74歳)、血管疾患はそのままとし、日本のレジストリ研究から明らかになった持続性・永続性心房細動、低体重(≦50㎏)、腎機能障害、左房径(>45㎜)を新たに追加した。

2020年改訂版不整脈薬物治療のガイドライン

https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/01/JCS2020_Ono.pdf

 

NOACを新たに開始した患者401例のうち113例(28%)が薬物を中止し、ワルファリンを新たに開始した200例の患者のうち33例(17%)が薬物を中止した。

ダビガトランの中止率は、治療開始1年以内のワルファリン中止率よりも有意に高かった。

中止した患者の約10分の1は、医師や薬剤師に相談することなく、自ら中止した。胃腸症状および抗凝固療法中の出血を含む有害事象は、NOAC江尾中止する一番頻度の高い原因であった。

J Arrhythm. 2015 Dec;31(6):339-44.

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1016/j.joa.2015.04.004

 

ワルファリン療法のアドヒアランス低下に関連する要因として以下のものがあげられる。

Patient Prefer Adherence . 2010 Mar 24;4:51-60.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20361065/

 

参:脳卒中患者の退院時処方の継続率

205年9月1日から2006年8月31日の間に脳梗塞を起こした24024例(75.2歳:男性51.5%)のデータでは、2年後の服薬継続率は、降圧薬で74%、抗血小板薬64%、スタチン56%、ワルファリン45%であった。降圧薬の種類による差はなかったが、抗血小板薬はアスピリンの継続率が高かった。

 

Stroke 2010:41:397-401

https://www.ahajournals.org/doi/pdf/10.1161/strokeaha.109.566950

 

ファイザー株式会社とブリストル・マイヤーズ株式会社が行った医療情報総合研究所(JMIRI)が有する調剤レセプトデータベースを用いた解析がある。2014年9月一か月間の抗凝固療法患者26425例中のうち服薬情報が不明なもの145例を除いた26280例のデータ解析を行った。平均年齢72.9歳男性61.7%で70歳以上が67.8%であった。処方されたかは、一般内科39.6%、循環器内科35.3%、脳神経外科6.2%、心臓血管外科5.1%、神経内科1.8%、その他12.0%の内訳であった。諸法令のうち94.7%は他剤の処方があった。降圧薬78.6%、遺産関連疾患薬60.1%、脂質異常症治療薬35.4%、心疾患治療薬34.4%、抗血小板薬27.7%、痛風治療薬21.0%、蛍光糖尿病治療薬16.2%、抗不安薬8.5%、抗貧血薬8.3%、骨粗鬆症治療薬5.9%、認知症治療薬2.8%、抗うつ薬1.9%、抗パーキンソン病薬1.2%であった。

抗凝固薬以外の内服薬を併用している患者は96.4%であり、平均6.9±3.6剤であった。6財以上を服薬する患者は61.5%、ワルファリンで66.3%、ダビガトラン51.2%、リバロキサバン51.8%、アピキサバン53.0%で、ワルファリンで多く、DOAC間では有意な差は認めなかった。

服薬回数の解析では薬剤間で有意な差は認めなかった。

抗凝固薬投与回数1回と2回の間に差は認めなかった。

アドヒアランスの調査指標であるPDC(proportion of days covered)は「対象(抗凝固)薬を所有している日数を調査対象期間の日数で除した割合=抗凝固薬が処方された患者が手元に薬を有していた日数の割合」で80%以上をアドヒアランス良好、80%未満をアドヒアランス不良として評価を行った。

平均のPDCは96.5%と良好であり、アドヒアランス良好と評価されるPDC≧80%はアピキサバン96.0%、リバロキサバン96.6%、ダビガトラン95.1%、ワルファリン94.6%であった。

また、新規抗凝固薬の投与回数別の解析では、一日一回投与であるリバロキサバンでと二回投与であるアピキサバン、ダビガトランのPDCの平均値はそれぞれ96.8%、96.7%で良好で油井差はなく、アドヒアランス両行の割合は、それぞれ96.6%、95.4%と有意な差はなく、抗凝固療法役の投与回数はアドヒアランスに大きな影響は与えなかった。

PROGRESS IN MEDICINE 35 (3) 543-552, 2015.

 

服薬アドヒアランスに影響を及ぼす因子としては以下のものがあげられている。

アドヒアランス向上のためには、以下のものが推奨されている。

精神神経学雑誌 107 (7), 696-703, 2005

http://kmc2007.jp/KMCtsushinvol502.pdf

 

当然、一次予防として薬剤が投与されているか、二次予防目的で投与されているかにより、医師が患者さんに説明するときの言葉選びや意味づけ、協調度合いは異なることが考えられるし、内服する患者さんの意識も異なると考えられる。

343例を対象とした患者背景の解析では、循環器症例では一次予防の割合が10%、二次予防が90%、脳神経内科では、それぞれ94%、6%、その他で83%、17%となっており、循環器内科において投与される薬剤は、治療薬としての二次予防投与の割合が高かった。

 

参:

Q Life Pro研究報告

http://reports.qlifepro.com/20adherence/adherence-to-prescribed-drugs/

 

心房細動(IMPACT-AF)における経口抗凝固薬による治療を改善するための多面的介入試験で、5か国から2281人の患者を2014年6月11日から20ベースライン時の64%~16年11月13日までの間に登録し、中央値12か月の追跡調査を行った。介入群では、ベースライン時の68%から1年で80%に増加したが、対照群ではベースライン時の64%から1年で67%にとどまり有意な差を認めた。

介入群対対照群における脳卒中の二次転帰の減少が見られた(HR 0.48 P=0.0434)。

Lancet 2017 390 1737-1746

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(17)32165-7/fulltext

 

19世紀半ばまで新生児の平均寿命は約40年だった。最も顕著な変化が見られるのは19世紀半ば以降の平均寿命の変化であり、出生時の平均寿命が40歳から81歳へと倍増した。

実は人類がこのような改善を成し遂げたのは、過去150年に限定されている。

人の平均寿命はこの150年でなんと2倍に!そして乳幼児の死亡率低下だけがその原因ではない、という意外な事実

https://data.wingarc.com/life-expectancy-has-doubled-in-150-years-29671

 

近代以前の人口データによると、全乳児の約4分の1は生後一年以内に死亡し、ほぼ半数が成人する前に死亡していた。

近代におきた健康状態の改善以前の平均寿命においては大きな変化はなかった。

https://ourworldindata.org/uploads/2021/03/Youth-mortality-rates-over-last-two-millennia.png

「乳児の死亡率が下がったことによって平均寿命が二倍になった」と推察する意見がある。実際、30年足らずで乳児死亡は半減している。

このことは平均寿命を延長していることに寄与しているが、これがすべての原因ではない。

過去三世紀にわたるイギリスとウェールズの平均寿命を見てみると、すべての年代において平均寿命は、程度の差はあるものの伸びている。

https://data.wingarc.com/life-expectancy-has-doubled-in-150-years-29671

心房細動の抗凝固療法の治療でどう変わったかを見てみる。

2006―2016年の英国の全国データベースによると心房細動の患者数は、692054例から983254に(有病率:1.295対1.71%)直線的に増加した。心房細動関連脳卒中/10万人心房細動患者の入院エピソードは2006年:80/週から2011年:98/週に増加し、2016年:86/週に減少した。CHA2D2-VASc≧2患者の抗凝固薬使用は48.0%から78.6%に増加し、抗血小板剤使用は42.9%から16.1%に減少した。

心房細動罹患率の調節後、抗凝固薬使用の1%増加は、心房細動関連脳卒中の週間率の0.8%減少と関連していた。

Eur Heart J. 2018 Aug 21;39(32):2975-2983.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29982405/

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