呼吸器系
2013.06.01
特発性肺線維症 日本医科大学内科学 吾妻安良太教授
2013年5月29日横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ
演題「間質性肺炎の治療開発と評価」
演者:日本医科大学内科学講座呼吸・感染・腫瘍部門教授 吾妻安良太 先生
内容「間質性肺炎は、広くびまん性に病変がある肺疾患で、放射線画像上両側びまん性に陰影を認める疾患で肺の間質(狭義:肺胞隔壁、広義:小葉間間質、胸膜近傍を含む)に炎症が起こる疾患で、病理像は多彩であり、職業性や薬剤などの明らかな原因物質が存在するものや膠原病に随伴する場合と、原因が特定できない疾患があり、原因を特定しえない間質性肺炎が特発性間質性肺炎であり、以下の7つに分類される。
1) 特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)
2) 非特異性間質性肺炎(nonspecific interstitial pneumonia:NSIP)
3) 特発性器質化肺炎(cryptogenic organizing pneumonia:COP)
4) 呼吸細気管支炎関連性間質性肺疾患(respiratory bronchiolitis-associated interstitial lung disease:RB-ILD)
5) 剥離性間質性肺炎(desquamative interstitial pneumonia:DIP)
6) リンパ球性間質性肺炎(lymphocytic interstitial pneumonia:LIP)
7) 急性間質性肺炎(acute interstitial pneumonia:AIP)
http://www.nanbyou.or.jp/entry/302
この内IPF、NSIP、COPの頻度が多く、喫煙と関連があるRB-ILDとDIPがそれに続く。
頻度としては、特発性間質性肺炎は10万人中20人程度と推定されているが、自覚症状がない限り、医療機関の受診がないため、10倍ほどの数が想定されている。男性に多く、発症は通常50歳以降が多い。
間質性肺炎の血清マーカーとしてはLDHの他に、KL-6、SP-A、SP-DはIPFやNSIPで効率に陽性となり、病態のモニタリングや治療反応性の評価に使われている。
胸部レントゲン所見としては、両側肺野に末梢性、肺底部中心に網状影、小粒状~粗大輪状(蜂巣肺:honey comb lung)陰影が認められ、しばしば有効換気量の減少がみられる。CT所見では、両側下肺野背側胸膜下に優位に分布する蜂巣肺と網状陰影を認める。
牽引性気管支拡張像や気管支血管影や葉間線の偏移、気管支血管影や胸膜面の不整像が特徴的にみられる。
IPFの診断確定後の平均生存期間は2.5~5年と報告されて折り、急性増悪した後の平均生存期間はは2カ月以内という厳しい数字がある。また、間質性肺炎、特にIPFで肺気腫を合併した肺線維症では肺癌が高率に合併することがあり、注意深い経過観察が必要である。
治療に関しては、IPFとそれ以外で異なり、一般的にはステロイドや免疫抑制薬を中心とした治療が行われるが、IPFには有効な治療法がこれまでは存在せず、対症療法が中心であったが、近年さまざまな新しい治療方法が行われるようになってきている。日本で初めて認可された抗線維化剤Pirdenidoneは世界的に効果が期待されている薬剤であるが、まだ治療におけるエビデンスは確立されていない。このほかに以下にあげる数種類の治療法(①)が実施されて折り、いくつかの治療法(②)が現在治験中である。
① NAC(ムコフィリン)吸入。Pirfenidone 、Predonisolon、シクロスポリン(CsA)、シクロフォスファミド(CPA)
② BIBF1120、PC-SOD吸入