川村所長の勉強会参加記録
2013.07.16
睡眠薬の適正使用 国立精神・神経医療研究センター 三島和夫部長
2013年7月11日 インターネットライブ配信
演題「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」
演者:国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所・精神生理研究部部長 三島和夫先生
内容及び補足(含質疑応答)「不眠の症状としては、①入眠困難、②睡眠維持困難(中途覚醒)、③早朝覚醒、④睡眠の質の悪さ(熟睡感の欠如)があるが、それ以外の症状として、①疲労感、不快感、②注意力、集中力、記憶力の低下、③日中の眠気、④社会的、職業的機能低下、または学業低下、⑤気分の障害またはイライラ感、⑥動機づけ(モチベーション)、活動性、積極性の減弱、⑦仕事のミスや運転中の事故のおこしやすさ、⑧睡眠不足による緊張、頭痛、胃消化器症状、⑨睡眠についての心配、悩み、が挙げられる。
実際に診断の際に主な4つの症状を訴えず、それ以外の症状を主訴に来院される方が少なからずいる。症状の原因疾患がみあたらず、これらの症状を訴え続ける場合や、原因疾患に付随して、不眠がある場合もあるので、このことを念頭に置いて、問診を行う必要がある。その上、睡眠障害のステージにより効果的な問診内容が異なることも念頭に置いておくとより良い問診ができる。
薬物療法は現在使用されているものとして、ベンゾジアベピン系薬剤(抗不安作用+、筋弛緩作用+)、非ベンゾジアゼピン系薬剤(ω1選択性=筋弛緩作用-)、メラトニン受容体作動薬に分けられる。
眠剤の使用に対しての不安としては、以下のものが挙げられている。
患者さんの不眠の症状に合わせて薬剤を選び、眠剤に対する不安を解消してあげる必要がある。治療のアルゴリズムとしては以下のようになる。
眠剤を投与しても効果が出ないことが少なくない。その原因として、条件付による不眠がある。以前は入眠障害の患者さんに「寝られなくても、横になって休むだけで疲労がとれます」と説明をしていたが、このことが不眠の条件付けをしている可能性がある。「ベッドや布団の中で寝られない状況下で長時間過ごす行為=ベッドや布団の中にいると寝られない」という条件付けをしているという考えである。
このことを踏まえると、不眠に対する認知行動療法としては、①朝起きる時間を一定にする(日の光を浴びて14時間後に体は寝る準備を始めるといわれている)、②寝られないでいる時間を少なくするために、普段寝入る時間を目安にベッドや布団に入るようにする、③午眠(昼寝)をできるだけ短めに抑える、といった順番で環境整備を行う。そのためには、睡眠日記をつけてもらうのが、患者さんの睡眠障害の病態把握が容易になるばかりでなくよりよい睡眠指導を行うために必要なことである。